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第43話 不審な気配

「失礼しました」


俺達二人は生徒会室での事情聴取を終え、少し話し合いながら寮へと向かっていった


ただやはりというべきか久慈川さんは終始不安そうな表情となっており、一度実力至上主義者連中にイジメの対象とされカードを奪われかけた事が今になって不安を加速させているようだ


「浅麦君……」

「まぁ不安になる気持ちも分かる。

現状俺達はあいつらに一番目をつけられている以上どう考えてもリスクしかない上に関わらないという選択肢は実質無いに等しいからな」


特に俺はプレイスタイルと複数のユニークレアを所持していること、更には既に何回も実力至上主義者達を撃退している上にブランクカードまで得ている


どう考えても俺が狙われない理由等何処にもなく、邪魔な存在として認識されている可能性がかなり高い


更に久慈川さんはユニークレアを2枚も所持している上に今までの評価が評価の為に狙いやすい奴と認識されている可能性も否定出来ない


俺達二人は確実に目をつけられているだろう


「とりあえず俺達に今出来るのは実力を付けて負けないようにするくらいしか無いと思う」


正直な所奴らの仲間がどれだけいるのかが見当つかないのがかなり面倒だ


割と洗脳地味た行為が可能なのはさっきので分かりきっている


恐らくデュエルで勝った相手にしか使えないと俺は予想している


「私なんかがそこまで強くなれるでしょうか……」

「なれるなれないじゃなくてなるしか無いだろうな」


正直な所久慈川さんはデッキとしては相性の良し悪しがかなり明確なデッキであり、極端に相性の悪いデッキが出てこられた場合はデッキを上手く回すことが出来なくなるのは目に見えている


俺はその後も久慈川さんと他愛のない話をしながら寮の自室へと戻り、さっそく備え付けのPCを起動して過去のカード犯罪の事を調べていく


「っ!どう考えてもこれしか無いな」


そんな中俺は国際指名手配中のカード犯罪組織『デュエニュクス』というのを発見した


何処か見覚えがあると思ったらこの組織のパーソナルマークが対価の楔と同じマークだった


それに口封じの手口も命を奪うのではなく魂を奪うというやり口も似ている 


「今は壊滅して残党がいるとは聞いていたがまさか復活してるとはな……」


この組織の目的は、世界の再構築。

一度この世界を崩壊させて自分達だけは生き残りら崩壊した施工を自分達の都合の良い世界へと書き換える


確かにそんな感じの目的だったはずだ


そんな奴らが実力至上主義者と手を組んでいると考えるとなると碌でもない予感しかしないな……恐らくだがカードの《侵食》の大元はこっちの『デュエニュクス』であり、そのスポンサー兼協力者兼駒として実力至上主義者が組んでいる形だろう


「かなり厄介だなこれ……何処までやっても蜥蜴の尻尾切りになりそうだ」


ユニークレア持ちですらあっさりと捨て駒として処分したとなると奴らにとってユニークレアカードはそこまで重要ではないのだろう


恐らく理由としてはスポンサーである実力至上主義者達が金と権力に物を言わせてユニークレアを集めているからだろう


そこに他の職業のカードでもすぐに使えるように出来る《侵食》が混ざれば尚更価値は低くなる


「しばらくは実力至上主義者連中と出くわした時は本気のデッキで挑んだほうがよさそうだな」


俺は生徒会長とのデュエル経験を元に作り出した複数のユニークレアが混在するデッキ


まだ実戦経験は少ないが運用テストは終えており、今までで一番安定した勝ち方が出来ている為、あとは『フィクスシャッフル』用の微調整を残すのみだ






結果として俺は深夜までデッキ調整をしていたせいで若干寝不足の状態で翌日を迎えた


6時頃になるとタブレット端末に通知が来ており、今日の放課後にまた来て生徒会室に来て欲しいとの事だった


正直ここ最近何度も出入りしているせいで俺に関して妙な噂が流れ始めているんだがいい加減それはスルーする形で良いだろう


そろそろ登校する時間の為寮を出ると同じく寝不足そうな久慈川さんを見つけた


「おふぁようございましゅ……」

「眠れなかったのか?」

「ふぁい……昨日の事を考えていると不安で仕方なくて……」


眠そうにしながら目を擦る彼女はやはり小動物っぽい感じがした


「あまり気にしてても仕方ない、とりあえず強くなる事だけ考えておけば良いと思うぞ」

「分かってはいるんですけどね……」


まぁ彼女は元々心配性な上にユニットに攻撃するのも嫌がるレベルで優しいからな……ユニットが《侵食》されて苦しみながら消滅する様子を考えれば不安にもなるのだろう


その後はお互いのデッキについて話し合いながら本校舎の自分達の教室へと到着し、一度自分の席へと移動してホームルームを待つ事にした


—————キーンコーンカーンコーン—————


「ほらほらお前らー、席に……着いてるな。

よしじゃあホームルームを始めるぞー。」


先生は気怠そうにしながら教室に入ってきており、俺を見つけると若干ムスッとしたような表情になった気がした


恐らく昨日の件で先生にも何かしら面倒事が発生したのだろう


「まず連絡事項だが諸事情によりA組が事実上学級閉鎖となった。

理由はこっちにも守秘義務がある為言えないがお前達にも関わってくる可能性があるからプライベートでもある程度警戒しとけよ」


正直A組の学級閉鎖は予想通りと言えば予想通りだった


何故ならその全員が昨日の件で俺達を取り囲んでいた上に賭操を倒したと同時に気絶していったからな


先輩達からの連絡ではまだ意識を取り戻す様子はないらしい


その後ある程度の連絡事項を伝えた先生はホームルームを切り上げる


その後いつも通り授業を終えて放課後になった為、俺は生徒会室へと向かう。

だが久慈川さんも一緒に来ており、どうやら彼女も呼ばれているらしい


生徒会室の前に到着した俺は一度扉をノックする


「どうぞ」

「失礼します」


生徒会室に入るとそこには何やら忙しそうにしている先輩達と目の下に隈を作っていた桜木副会長がいた


「やぁ、来てくたんだね」

「とりあえず俺達を呼んだ用件を聞かせてもらっても?」

「そうだね、先に本題に入ろうか」


桜木副会長は生徒会室に備え付けられたある装置の下へと歩くとそこに入っているカードを俺達に見せる


「それは……《深淵侵食・カオスドミネイト》ですか?」


装置の中に入れられていたのは俺が賭操から回収したカードの1枚だ


「実は昨日このカードを調べていて色々と判明したことがあってね、情報共有の為に呼び出させてもらった」

「それならわざわざ呼び出さなくてもメールで良かったのでは?」

「そっちはそっちで少しリスクがあってね。

それに実際に話したほうが少し分かりやすいと思ってね」


先輩はカードを装置から取り出す


「君から受け取ったこのカードなんだが解析してみた結果、君の予想通り『アクティベーションカード』の一瞬である事が確定した。

効果こそまだ完全には不明だがこのカードから検知されたエネルギーと気絶した彼らから検知されたエネルギーが一致している事からまず間違いなく洗脳系の『違法アクティベーションカード』なのは間違いないだろう」


『違法アクティベーションカード』……本来警察等の一部の者にのみ支給される『アクティベーションカード』を横流しや奪ったりなどの手段で手に入れ、違法改造を施したものだ


中には麻薬に近い効果を与えた『違法アクティベーションカード』も存在しており、大きめの犯罪組織なんかは必ずと言っていいほど存在している


「ただ君の報告にあった《侵食》カードとやらなんだがやはり収穫はない。

証拠隠滅の為なのだろうが1枚も残さず消滅しているみたいでね、解析することすら叶わなかった」


やっぱりかまぁ塵になっている時点で察してはいたんだがな


「ただあの者たちの背後にいる勢力が何かは判明したよ」

「全国指名手配中の犯罪組織『デュエニュクス』の残党でしょう?」

「っ!情報規制があったというのにもうそんな簡単に辿り着いたのかい?」

「情報規制と言っても報道とかでやってないだけで実際の所調べれば情報なんていくらでも出ますよ」

「そうかい……情報部の怠慢だな、後で罰を与えないと……」


桜木先輩は最後に何かボソッと呟いたが声が小さく、聞き取ることは出来なかった


「とりあえず学園中を調査した結果明らかに怪しい所が数ヶ所見つかったからそこを重点的に捜索するつもりだよ。

ただ問題が一つあってね……」


そう言うと桜木先輩はディスプレイからこのギガフロートの地図を取り出す


「『デュエニュクス』が関わっていると思われる生徒達の活動範囲を調べてみた所このギガフロートの複数箇所で何やら妙な活動をしていることが確認されたんだ。

問題はその場所が監視カメラの範囲外でね、自分達の目で確かめる必要があるんだ」

「それってつまり……」

「あぁ、僕達で一度調べてみないかというお誘いさ」


案の定面倒事か……


「リスクは結構高いと思いますが?」

「確かにね、でも学園で戦うよりは比較的君にとっては楽な相手だと思うよ。

実力至上主義者達は基本的に情報共有を行わない事が多いからね」


つまり相手は俺のデッキを把握していない為初見殺しが基本刺さるってことか


「浅麦君……」


久慈川さんが俺の袖をぎゅっと掴む


「大丈夫だ、初見相手なら大抵問題ないのは久慈川さんも知っているだろう?」

「ですけど……」

「心配なら君も一緒にどうだい?

デュエルは基本僕と彼の二人で行うし護衛もつけよう」

「…………」


彼女は少し悩む様子を見せたが何処か吹っ切れた表情をする


「分かりました、でも私にも戦わせてください。」

「っ!驚いたな……良いのかい?」

「本当は少し怖いです……でもこんな事をする人達を放置するほうがもっと怖いです!」


彼女は恐怖を抑え込んでいるのか自分の手を強く握りしめている


「分かった、なら我々と護衛を含めた四人で向かうとしようか」


流石に今回はリスクも高いし本気で叩き潰しに向かうか……



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