目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第45話 生徒会への誘い

結局あの後俺達は先輩に引きずり回されて現状発見されている『デュエニュクス』関連の場所を虱潰しに叩き潰すことになった


本当なら1日に1箇所ずつ回るって話だったはずなんだがな……桜木先輩の表情は今も笑みを浮かべて鼻歌を歌ってこそいるがその額には軽く青筋が浮かんでおり、若干キレているのがよくわかる


俺は使用人である枢木に目を向けるが思いっきり顔をそらされる


どうやら彼も割と振り回される側らしい


久慈川さんは……


「なんでこうなったんでしょうか……」


と涙を浮かべながら引き摺られており、半分諦めた様子だ


その後最終的に残りの3箇所を今日中に叩き潰すことになり、俺達が寮に帰る頃には既に午後8時を回っていた


だがそれ以上に問題は……


「結局浅麦君の予想通り何も収穫ありませんでしたね……」

「そりゃそうだろ……」


この島に住む違法滞在者がまともな情報を持ってたらそれこそおかしな話だ。

生活するにも食料支援等の支援に加えてこの徹底管理された島で住める場所を探す必要がある時点でまずそこまで重要な情報を持つやつが違法滞在の形で潜伏しているとは思えない


確実に情報を持っているのは正規の手段で滞在している人間だろう


「いやぁごめんね二人とも。

こんな時間まで付き合わせちゃって本当に申し訳ない」

「その……ハルト様は一度やると決められると何をしてでも徹底しようとされる御方なので巻き込まれたら基本逃げられないと思ってください」

「「それもっと早く教えて欲しかった(です)……」」


しかも面倒な事に違法滞在している『デュエニュクス』繋がりの者達はまだ他にもいるらしく、しばらくは俺達も手伝いとして駆り出される可能性があるそうだ


どうしてこうなったのやら……


ひとまず今日の所は俺達は寮へと戻ることになり、俺は自室に戻ってすぐにベッドに倒れ込みそのまま寝落ちしていった




翌日の放課後、俺達はまた生徒会に呼び出されて生徒会室に来たのだが……


「その……お疲れ様です」

「大変だったッスよね……」


なんか夢見先輩と田畑先輩の2人にやたらと同情した目を向けられていた


予想出来ていたことではあるが2人も桜木先輩に結構振り回されているようだ


「昨日は突然連絡が来て副会長の分の仕事よろしくって押しつけられたッス……」

「私は外出申請の許可の後は貴方方の暴れた場所の後処理関係の書類仕事が……」

「「お疲れ様です……」」


俺達としては疲れている様子の2人にそう答える他無かった


その後しばらく先輩達と話していると桜木先輩と戦葉会長が生徒会室に入ってくる


「いやぁ、遅れてごめん。

ちょっと関係各所への連絡に手間取っちゃって」

「はぁ……貴方はその突然頼みに行く癖は何とかならないのですか?

事前説明も無しにあんな頼み事されたら困惑するに決まっているで……ふぎゃ!?」


あ、また扉の所で躓いた……この生徒会室にちょくちょく訪れるようになってからよく見かけるが戦葉会長って本気でドジなんだよな……しかも筋金入りの


そして二人は生徒会室の自分の席に着席して真面目な表情になる


「さて、今日君達2人に来てもらったのは他でもない。

君達二人には我々生徒会に入ってもらいたいんだ」


っと……そう来たか


「……理由を聞いても良いですか?」

「あぁ、構わない。

まずこの生徒会という組織は基本的に戦績の最も高い者達が入っているというのは知っているね?」

「ええ、それに加えて基本的には生徒会側及び教師側両方の推薦がない限り入れないんでしたよね?」

「そう、この生徒会の人数がかなりの少人数である理由の一つがこれにある

実力があるだけでなく推薦されるだけの成績に人柄、コネなんかも必要だからね、それを達成できる人物というのがそもそも根本的に少ないんだ」


まぁそうだろうな、恐らくだがこの教師と生徒会両方からの推薦というシステム自体が腐敗を防ぐ為のストッパーとして機能している


どちらかがダメだと判断すれば却下されるしどちらダメだと言われれば例え戦績が良くても意味がない


「君達を僕らが推薦する理由としてはまず実力だ。

浅麦君は多数の変幻自在なデッキと何枚もあるユニークレアのカードによって1年ではあるがその実力は上級職にまでなった2年生に勝るとも劣らない。

久慈川さんはその圧倒的な耐久を生かした特殊勝利で相手を傷付ける事なく勝利し、勝負であっても自分の芯を貫き通している」


と言うより久慈川さんの場合その戦い方しか出来ないというのが正しいからな……僧侶で相手を攻撃しないとなると耐久しきってのデッキアウトか特殊勝利以外に勝つ手段が存在していない


「それに浅麦君はともかくとして気付いてないかもしれないが久慈川さん、貴女のここ最近の戦績は実は浅麦君よりも高いんだ」 「え!?」


そう、実はここ最近授業での俺の勝率が少しずつ下がってきており、80程になっている。

普通に考えればそれだけ勝てれば十分過ぎる方なのだが久慈川さんのデッキはあの耐久力を貫き通せる程の火力やピンポイントでの即死でも入れない限り正面から破る方法はない


俺も何度か試してはみたが結局あのデッキに対抗出来たのは『デッキ破壊』、『特殊勝利』、『盗み軸』の3種のみだった


中でも『盗み軸』は勝てるとは言っても勝率はそこそこ低く、鍵となるユニークレアを盗めなければ基本的に負けている


『デッキ破壊』や『特殊勝利』に関しては勝率は五分五分、どちらが先に条件を達成出来るかの勝負の為にかなり厳しい

フィクスシャッフルありでも負ける時は負けている為彼女がフィクスシャッフルを使えるようになってしまえば俺は少なくとも勝つ事は出来ないだろう


これは俺が上級職への転職を若干焦っている理由の一つでもある


「まぁそれでもジャイアントキリングの回数は浅麦君が圧倒しているのもあってバウンティポイントはもう既にかなりの量貯まっているからそれで推薦が入ったというのもあるんだけどね」


現在の俺のバウンティポイントは16万8700、稀に2年生の実力至上主義者にも絡まれる事がある為にそのポイントを奪えたのがかなり大きく、ここまで伸びていた


「とはいえ我々と教師陣の推薦があるだけで生徒会参入出来るほど甘くはない、バウンティポイントのノルマもあってね、最低でも50万は必要になるんだ」

「ごっ!?」


久慈川さんがあまりの必要ポイントの多さに固まるがまぁ学園の理念とかそういうの考えてもそのくらいは無いと話にならないんだろうな


「君達なら上級生相手でも問題なく勝つ事が出来るだろう

でもそうだね……久慈川さんのポイントを考えるとこのイベントに出てみるのはどうかな?」


桜木先輩はそういうと懐から1枚のチラシを取り出した


「「『学年対抗ユニークレア争奪戦?』」」

「そっ、この学園はある事情から比較的ユニークレアがかなり現れやすい傾向があってね。

年に何回かこの手のイベントで優勝した人や健闘した人なんかを対象にあげているんだ。

それにこのイベントでも相手のバウンティポイントを稼ぐ事が出来る」


チラシの内容を見てみると確かに勝利時に相手の生徒のポイントの30%を受け取り、敗北時に自身のポイントの10%を失う……リスクはそこまで大きくない上に勝ち続ければユニークレアか……確かにこのイベントは相当大きいな


ルールとしては1日でどれだけのバウンティポイントを稼げるかが重要……そうなると3年生は比較的狙われやすいだろうがその分安定してポイントを得られるだろうな


そして同じ学年同士でのデュエルは問題なし、勝負を挑まれた際は原則断ってはいけないと。

基本的に全員が平等に戦う事になるわけだが下手したら誰かしら鴨にされる可能性が出てくるなこれ


だが5連敗した時点で失格とするとあるからバウンティポイントを根こそぎ全部奪われる心配は無し


「どうする?参加するならこちらで登録の処理をしておくけど」

「……浅麦君はどうしますか?」

「俺は受けるつもり、むしろ受けないメリットが無いし上級生、特に3年生相手にも通用するか少し試したい」

「そう……ですか。

うん、決めました!私も参加します!」


意外だな、久慈川さんの事だからあまり気は進まないと思っていたんだが……


「今まではバトルするのもあまり好きではありませんでした……でも今のままじゃダメなんです。

『デュエニュクス』の件で浅麦君が戦っている間私は何もすることが出来ませんでした。

今までもずっと浅麦君に助けてもらってばかりで何も返せていません!

無力なままじゃ嫌なんです!」

「久慈川さん……」


最初の頃からずっと彼女は気にしていたのか……


「なるほどね……なら頑張ってみてくれ」



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?