4. もう一度。あの時と。
あれから時間は立ち、空はすっかり紺碧色になっている。遅くまで働いている人もいるのかローゼンシャリオのギルドの灯りは点いたままだ。
「ふぅ……今日の仕事も終わりね。早く帰らないと。エルンちゃんとブレイドさん上手くやっているかしら」
仕事が終わってホッとしたのかそんな独り言をギルド受付嬢のルナレットは呟きながら、帰り支度をする。
するとギルドの入り口の扉が開かれる。ルナレットはこんな時間に来るなんて珍しいなと思いつつそちらに目を向けるとそこには一人の男性が立っていた。
「あら?ブレイドさん?」
「おう」
「どうしたんですかこんな時間に?」
「今帰りか?一杯付き合え」
そう言ってブレイドはカウンター席に着くとルナレットに向かって酒を注文する。ルナレットも慣れた手つきでお酒を用意するとグラス2つと共に差し出した。
そして2人して軽く乾杯をして飲み始める。しばらく無言の時間が続きお互いに飲んでいる音だけが響く。その沈黙を破ったのはブレイドだった。
「……お前に聞きたいことがある」
「聞きたい事?私に?珍しいこともあるんですね?」
そうルナレットは言ったが、ブレイドの聞きたいことが何なのかは想像がついた。きっとエルンのことだろう。
「エルンのことだ。お前……あいつが神格スキル持ちだと気づいていただろう?それであいつとパーティーを組ませようとしたんだな?あいつを助けるために」
「神格スキル持ちなんですかエルンちゃん!へぇ!まさかまさかですね。ブレイドさん残念ですけど、それは考えすぎですよ?私がブレイドさんみたいに相手のスキルが分かるわけありませんし。でもエルンちゃんを助けてあげたいと思ったのは本当ですけど」
「なんでただのギルド受付嬢のお前がただの冒険者の肩を持つんだよ?」
ルナレットは少し黙ったあと、ブレイドにエルンを助けたかった真意を話し始めることにした。
「……どことなく似ているからですかね。
その言葉を聞いてブレイドは少し口角が上がる。それはルナレットがそう言うと思っていたから……
「ルナレット……余計なことしやがって」
「ふふふっその様子ならブレイドさんもエルンちゃんのこと、気に入ったみたいですね?」
「……もう一杯おごれルナレット」
「え?これ私の奢りなんですか?ブレイドさんから誘ったのに、だからモテないんですよ。まぁブレイドさんに期待しても仕方ないですけど」
そう言ってルナレットは微笑む。そして2人はまた乾杯をし直す。それは可能性を秘めた1人の少女を助けたいと言う願いが込められたものであった。