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6. 竜の寝床

6. 竜の寝床





 竜の寝床近くで私たちと同じギルド冒険者のミーユと出会った。16歳と言っていたから私より年下だ。髪は鮮やかなピンク色で瞳の色もピンク。とても可愛らしい印象。スタイルは……うん。私よりは発育が良さそうだ。ほんの少しだけね。


「私はエルン。こっちのおじさんはブレイドさん」


「おい。おじさんじゃねぇ」


「エルンにブレイドね。よろしく!あっ私敬語とか苦手だから。別にいいよね?」


 とても明るい子だなぁ。羨ましい。私にはこんな風になれそうもないよ……。


「う、うん。いいよ……」


「別に敬語は使わなくてもいいが、お前はなぜキラービーの大群に襲われていたんだ?」


「ああ、それはキラービーの巣からこのエーテルドロップを手に入れたからだよ。手に入れるまでは良かったんだけど……最後にしくじっちゃってさ?見つかって逃げたというわけ」


「ミーユ1人でそんな危険なことを?危ないよ。ちゃんと依頼を受ける時はパーティー組まないと!パーティーに在籍するまでは、初めは掲示板とかで募集するんだよ。新人はソロで依頼をしないほうが絶対いいよ」


「掲示板?そうなんだぁ。パーティーってどうやって組むのか知らなかった。それならこんなに苦労することなかったよね。教えてくれてありがとねエルン!」


 ギルド冒険者になって冒険証をもらった時にちゃんと説明を聞いてなかったのかな?それにパーティー募集なんて依頼掲示板の横に書いてあるものなんだけどね……とりあえず、新人のギルド冒険者のミーユが無事で良かったとは思う。


「とりあえずミーユ。今度からはちゃんと掲示板を見ないとダメだよ?あとは受付嬢の人の話しは聞かないと」


「ごめんごめん。次からはちゃんと聞くって。それより2人はなんでこんなところに?」


「私たちはこの先にある竜の寝床でグリムドラゴンを討伐するんだよ。っで今日はもう暗くなってきたからここで野営をする予定なの。」


 本当は野営なんてしたくないけど。仕方ないし。ミーユは私とブレイドさんを交互に見ながら何かを思いついたかのように提案してくる。


「う~ん……あのさ。私も一緒にドラゴンを討伐してもいい?」


「えっ!?」


「何が目的だ?お前の依頼ではないだろう。一緒に討伐をしても、パーティーを組んでないお前に何の得にもならんぞ?」


 ブレイドさんの言うことはもっともだ。正式にパーティーを組んでいないミーユは私たちを手伝っても何も意味はないんだよね。それにギルド冒険者の先輩として、そんな無理はさせたくないし。


「そんなことないよ。得はあるんじゃない?だって私、魔物とか討伐したことないし。ここは魔物討伐の経験をしたいって話だよ。それに今気づいたんだけど2人ってギルドで噂の底辺パーティーでしょ?『便利屋』と『死神』の」


 底辺パーティーか……。そんな風に噂されてるのは初めて聞いたけど、まぁ想像がついちゃうのも事実だよね。でもよかった変な噂とかになってなくて。


「ちなみに2人は恋人同士?そんな噂もあるんだけど?」


「はぁ!?違うよ!なんでこんなおじさんと!」


「オレはガキに興味はない。」


 最悪。変な噂になっていた。ははっ。


「まぁとりあえず私も一緒について行ってもいいよねエルン、ブレイド。お願い!」


「私は別に構わないけど……ブレイドさんどうしますか?」


「ああ?パーティーのリーダーはお前だろう?お前がいいならいいんじゃないのか?」


 はい?私がリーダーって初耳ですけどね。登録をしたのはブレイドさんとルナレットさんだし。もちろんミーユには経験を積ませてあげたいし、2人より3人のほうが心強いのもある。でも……何もないのについてきてもらうのは気が引けるなぁ……


 でも私はそんなことを言っている場合ではないことにすぐに気づく。ミーユがいてくれたほうが依頼の成功率は上がるに決まっている。私はそんなこと言ってる状況じゃない。


「ミーユがそれでいいなら、よろしくね」


「うん!よろしく!」


 その日はブレイドさんが見張りをしてくれるということで、私は今までのいろんなことで疲労もあったのかすぐに寝てしまった。明日はグリムドラゴンの討伐。失敗は許されないし頑張ろう。



 ◇◇◇



 そして翌日。今日も天気は快晴だ。


「ふわぁぁぁぁ……」


「おはようエルン!」


「ああ。おはようミーユ」


「いつまで寝てるんだ。お前には危機感ってものがないのか?崖っぷちの割に意外と余裕だな?」


 朝からブレイドさんに嫌味を言われる。せっかく気持ちのいい朝だったのに……。すべてが台無しになる。前から思ってたけどこの人、絶対私の事嫌いだよね?


 私はまた不貞腐れながら準備を進めて竜の寝床へ向かうことにする。しばらく歩いていくと高い崖に囲まれた場所にたどり着く。ここが竜の寝床だ。外観は岩肌そのもので、植物などは一切生えていない。


 目的のグリムドラゴンは全身茶褐色の身体を持つ中型のドラゴンだ。そのドラゴンを探して奥へ奥へ歩いていく。ミーユは率先して前を歩き、その後ろを私とブレイドさんが続く形になっている。そのミーユの後姿はすごく楽しそうに見える。そんな時ブレイドさんが私に話しかけてくる。


「エルン。あのミーユって少女には気をつけておけ。素性が分からない以上信用はするな。これから同じようなことが起きてもな。」


「えっどうしてですか?」


「お前な……本当に危機感を持てよ。これだからガキは。将来、変な男に騙されるのがオチだな」


 うるさい。私の将来を勝手に決めるな。本当にこのおじさんは口を開けば私に文句しか言わない。


 「……あいつはキラービーの巣からエーテルドロップを採取してきている。エルン。お前はキラービーに見つからず巣の中からエーテルドロップを探すこと出来るか?」


 確かにブレイドさんの言う通りだ。エーテルドロップは巣の外から目視できるわけじゃない、巣の中からそのまま見つけ出すしかない。ミーユは最後にしくじったと言っていることから採取時は問題なかったと予想ができる。


「あいつは間違いなく何かのスキルを持っている。だから気をつけろよエルン」


「……わかりましたブレイドさん」


「お~い!2人とも何してんの?置いていっちゃうよ?」


 確かにブレイドさんの言っていることは気になるけど、とにかく今は余計な事を考えずに依頼のグリムドラゴンを討伐することを考えることにしよう。


 さらに奥へ歩いていくと崖はさらに高くなっていく。あたりに光が差し込む範囲が少なくなってきて暗くなって、なんとなく空気が重くなっているような気がする。すると前を進んでいたミーユが突然立ち止まる。


「どうかしたミーユ?」


「う~ん……グリムドラゴンってどんな感じの見た目なの?」


「えっと……全身茶褐色で中型のドラゴンだね」


「ああ……じゃあ見つけたよ。この奥にいるね」


「なんで分かるんだ、気配でも読んでいるのか?」


 周りはただの崖に囲まれているだけだ。目視できるものは何もない。ブレイドさんの言う通り気配を読んでいるのか。ミーユは振り向き私とブレイドさんに言う。


「気配なんて読めるわけないじゃん。私は魔物と戦ったことないんだし。言ってるじゃんって」


「見つけたって……!?」


 私はミーユの異変に気付く。そうピンクの目の色が金色に変化していることに……。

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