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17. お肉が食べたい

17. お肉が食べたい





 今日はギルドで仕事を請け負うことにしている。あれから『黒い魔力』の情報は特にない。それよりも北にある魔法都市への資金稼ぎが今やるべき最重要項目だから。


 ギル坊とルナも簡単な依頼なら2人でこなせるようになってきた。着々と成長しているわね。というか最近のギル坊はルナと一緒に依頼をやりたそうにしている。はぁ。思春期の男の子は困るわ。別にそれで頑張ってるからいいけど。別に嫉妬とかじゃないわよ?それより問題は別にあるから……


「……この依頼にしましょう」


 クエストボードから勝手に依頼の紙を取るディアナの腕を私は掴む。


「ちょっと。勝手に決めないでよ」


「これが一番資金管理の効率がいいので」


「魔物を倒すのは私でしょ!」


「守るのは私です。そこに優劣があるのですか?ロゼッタさんは魔物を倒す方が偉いと思っていると?」


「そんなこと言ってないでしょ!」


 ただの屁理屈じゃない。なら私の意見も聞きなさいよ!本当にムカつくわねコイツ。


 そう。分かる通り私はディアナと一緒に依頼を受けることになる。正直1人のほうが楽なんだけどさ、なぜかディアナがついてくる。


「あのさ。あんたはギル坊とルナと依頼をやりなさいよ!守るのはどうしたのよ!」


「簡単な依頼なら守る必要はありません。それにギルフォードさんの恋路を邪魔するわけにはいきませんし。聞かないでください野暮ですよ。空気読めない人ですね?」


 いやそれ私のせいじゃないよね!?私何も悪くないよね!?なんで私が悪者扱いされてんの?おかしいよね?私はおかしくないよね?


「ということで、この依頼でいいですよね?じゃあ行きますよ」


「ちょっ!?まっ……」


 ディアナはそのまま受付をして強引に私を連れてギルドを出る。そして街から出て街道に出て目的の森に向かって歩いていく。


「ねえ。まだ着かないの?」


「あともう少しです」


 かれこれ30分くらい歩いている気がする。もう疲れてきたんだけど……てかなんでこんなに歩く必要があるんだろ。もっと近場とかで良かったわよ。


 しばらく歩くと目的の森に着く。そこはいつも見る森より広くて奥が深く鬱蒼と木々が生えており不気味な感じだ。こんな不気味な場所の依頼とか、面倒なことに決まってるんだけど……私は一応ディアナに依頼内容を確認してみることにする。


「そう言えば何の依頼を受けたのよ?」


「ワイバーン討伐です」


「は?ワイバーン!?」


 ワイバーン。ドラゴンの一種で空を飛び火を吐く魔物だ。手練れの冒険者でも苦戦するってのに……


「ロゼッタさん」


「なによ?」


「ワイバーンのお肉は絶品らしいですよ。食べたいですね。今日は無性にお肉が食べたいですね?」


 まさかそれが目的かこいつ?そんな理由で私を巻き込んだのか?どうせ倒すのは私なのに。まあいいわ。倒せばいいだけだもの。早く終わらせようっと。


 森の中に入ってしばらくすると突然大きな音が鳴り響く。その音の方を見るとそこには巨大な何かがいた。そいつは大きな翼を広げこちらに迫ってくる。


「あれがワイバーンですか。予想していたものより大きいですね?」


 は?デカすぎ!あれ変異してない!?普通の個体より遥かにデカイわ!ワイバーンは私たちに気づいたのか強力な火炎ブレスを吐いてくる。それを間一髪避ける。


 そのブレスが通ったあとは地面が焦げている。威力高過ぎでしょ!あんなのまともに喰らったら死ぬし……


「ちょっと!あれ変異体よ!絶対ヤバイって!」


「ヤバくてもお肉は食べたいですから。ロゼッタさんお願いします」


「あんたねぇ……」


「ギルフォードさんやルナさんに格好悪いところ見せられないですよね?ロゼッタさん?」


 うぅ……分かったわよ。やるしかないわね!私は魔法を詠唱し、挨拶代わりの爆炎魔法を放つ。


「食らいなさい!爆炎魔法・バーストブリッド!」


 私の右手から描かれた赤い魔法陣から放たれた爆炎の弾丸がワイバーンに直撃する。だけどワイバーンはその攻撃を物ともせず木々を薙ぎ倒しながら突進してくる。


「嘘でしょ!?」


 私は慌てて横に飛んで回避する。危なかったぁ……今のは確実に死んだと思ったし……


「やっぱり手強いですね。さすが絶品のお肉というところでしょうか……ロゼッタさん、気をつけてください」


 ディアナの言葉と同時にワイバーンの尻尾が迫ってくる。それも避けたが、今度は爪による攻撃が襲ってくる。それをディアナは防御魔法で防ぐ。


「防御魔法・ファランクス。これは中々厳しい戦いになりそうですね」


「なんであんた余裕そうなのよ!?」


「そんなことありませんよ?」


 と、いつも通り無表情なディアナ。しかしどことなく口角が少し上がっているような気もする。いや……絶対楽しんでるでしょ?さすがの私でも分かるわよ。

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