目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

12. 師として ~ロゼッタ視点~

12. 師として ~ロゼッタ視点~





 眩しい光が差し込む。もう昼か。うむ……参ったの。全然身体が動かん。魔法を使いすぎたかもしれん。ワシはベッドの中でその身体のだるさから動くことが出来なかったのじゃ。


「うむ。今日はフィオナとソフィアに魔法の稽古をつけてやる約束じゃったのに……」


 昨日、起きたら行くから先に行っとれ。などと言ってしまったからの……2人が気づいて来ることもなさそうじゃし……というか今この宿屋に誰か残っておるのか?アリーゼあたりが残っていると助かるのじゃが……


「すまぬ!アリーゼおるか!ミルディでも良いぞ!」


 ……誰も返事がない。大魔女ロゼッタ=ロズウェルがこんな恥ずかしい思いをするとはの……仕方ない、待てば誰か帰ってくるであろう、それかなかなか来ないワシを心配してフィオナかソフィアが来るかもしれんしな。


「ふぁ~あ……」


 あくびが出るのう。眠くなってきたわい。しかしこのまま寝たらまた夜に眠れなくなるからの。それは避けねばならぬ。とりあえず今は回復に専念するとするかの。


 それからしばらく経っても誰も帰ってこなかった。おかしいのう。そろそろ日が落ちてくる頃合いじゃというのに誰も戻ってこんとは……まさか皆で仲良く出かけているということはあるまいな。ワシだけ……のけ者にしているのではないのか?


 そんなことを考えていたら部屋のドアをノックする音が聞こえた。誰だか知らんがようやく帰ってきたようじゃな。ガチャリと扉が開かれる。


「あれ?ロゼッタ様どうしたのです?」


「おおアリーゼ!やっと戻ってきおったか。身体が動かんのじゃ。助けてくれ」


 なんとも情けない話ではあるが本当に動けないので致し方ない。その後なんとかアリーゼに助けられ、お手洗いと空腹で何も食べてなかったので食事を。そのあとベッドまで運んでもらったのじゃ。


 そして夕方になり夜になる頃にフィオナとソフィアが帰ってきた。2人には心配をかけたことを謝ったのじゃ。


「ところでお主達どこに行っておったんじゃ?ずいぶん遅かったではないか」


「えへへ。ごめんね師匠。ボク夢中になっちゃって……」


「申し訳ございませんロゼッタ様。私も夢中になってしまって。私たちが不甲斐無いばかりにロゼッタ様を置いて出掛けてしまったなんて……待ってれば良かったです……」


 そう言って2人は頭を下げてきたのじゃ。まぁ……師匠としては弟子が自主的に稽古をしているならそれでよしなのじゃが……というか、ソフィアはワシの弟子なのか?いささか疑問ではあるのじゃが……


「それにしてもアリーゼ様がいて良かったよね?」


「アリーゼ様のお手を煩わせてしまいましたね」


「大丈夫なのです!ご年配の介護は得意なのです!」


「誰が介護じゃ!アリーゼお主!」


 こやつ……腹が立つ……しかし今のワシには杖を振ることも出来ん。悔しいのう。とにかく今日は疲れた。明日こそはちゃんと魔法の稽古をつけるのじゃ。


 次の日の朝、ワシは早速、目を覚まして部屋を出た。昨日一日寝ていたせいか身体のだるさが抜けてだいぶマシになった気がするの。


 さて……たまにはお弁当でも作ろうかの。昨日の詫びも兼ねてフィオナとソフィアの分も作ってやるかの。そして扉を開けるとそこにはフィオナとソフィアが仲良く料理をしていた。


「あっおはよう師匠!」


「お身体大丈夫ですかロゼッタ様?」


「うむ。問題はないのじゃ……」


 なんじゃ……先に起きておったのか……まさか早起きしてお弁当を作ってくれておるとは……


 そして準備をして、街の外の魔法修練に適した広い草原地帯まで歩いていく。


「やっぱり魔法剣を使うタイミングが難しい!ボクはまだ咄嗟に剣を振ることは出来ないし」


「私はもっと攻撃魔法を得意としたいですね。新しい魔法とかも試してみたいですし」


 ワシの目の前ではフィオナとソフィアが仲良く話をしている。まるで……あの時のギル坊とルナのように……


 草原地帯について早速2人は魔法修練を始める。ワシは2人の魔法を遠くで見ている。なんか懐かしいの……ギル坊とルナもこうやって面倒を見てやった。しばらく魔法修練をし、少し休憩にする。


「フィオナ。お主はまだ周りを見てない時があるのじゃ。あとソフィア。もう少し早く魔法陣を描くのじゃ」


 ワシは2人が作ったお弁当を食べながらいつものように指導をしていると2人が嬉しそうに話す。まるであの時の2人のように……


「ねぇ師匠」


「なんじゃ?」


「ボク師匠に教えてもらって良かった!凄く強くなってると思うし!」


「私もです。以前より安定して魔法が発動できるようになりました。ありがとうございますロゼッタ師匠!」


 む。まぁ……この2人が喜んでいるならそれで良かろう。一人前になるまで面倒を見てやるのも悪くはないのじゃ。ワシは面倒見の良い優しい魔女じゃからな。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?