蝦夷紫の街の外港に船が錨を下ろしてもディオガンは落ち着かない。
「返事はどうすりゃいい? どうすりゃあいいんだ? 投稿したらコメントが来たんだよ。返事をしようと思うんだけど、やり方が判らねえときてる! 俺はどうしたらいい? 困ってんだ、悩んでんだよ!」
「分からないのなら、ほっときな」
そう言って禿げ頭の親父はマッチで煙草に火を点けた。舷側の柵越しにマッチの燃えカスを海へ捨てる。燃えるような大空の下に、かすかに蜃気楼が揺れ動く大地があった。真夏の太陽が蝦夷紫の街からすべての色彩を奪っているかのように、光る屋根と屋根の間の黒い街路だけが目立つ。その何処かに、彼の探している男がいる。身を潜めている。そう思い込んでいる。
ディオガンの横に突っ立っている男へ禿げ頭の親父は尋ねた。
「ここが、あいつの故郷なんだろ?」
問われた男は首を振った。
「いんや、もっと奥の方だな」
話が違うだろ、と禿げ頭の親父は思ったのか、やや剣呑な目つきになった。
「違うんかい」