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第七十六話「裏切り者」

<美琴視点>


「いいか、オメーら。敵の狙いは日本本土だ。爆弾積んだドローンをこの島から日本へ飛ばし、爆破テロを起こそうとしている」


 狂歌がボロボロになった身体を揺らしながら、私達の目の前に立った。

 顔面が腫れて美しく、可愛らしい顔が崩れている。

 口からは血が垂れ、服の肌が露出している部分の全てに出血が伴う傷跡が刻み込まれている。


「だ……大丈夫なの?」

「あ? 狂歌の心配はすんな」

「でも……それに、狂歌がこんな状態になるって、それほど敵は強いってこと?」

「ふざけんな。狂歌はあんな雑魚共には負けねーよ。さっきのお嬢ちゃん達を助けるために一肌脱いだだけだ」


 私の胸がきゅうと締め付けられる感触がした。


「一肌脱いだだけって……私達が間に合わなかったら死んでたじゃん」

「目の前に守りたい奴が居たら全力で守る。これができなきゃ、わたしは『狂歌』じゃない」


 ちくしょう。

 すごいカッコイイ。


「それに狂歌は一人じゃない。だろ?」


 ニヤリとした笑顔。

 始めは憎たらしくて仕方が無かったけど、今ではこれ以上に頼もしい笑顔はない。


「……うん! 任せて! ね。進士」

「狂歌さん。その期待に応えて見せます!」


 私や進士、それにヒナ姉も熱くなった目頭を拭った。


「きゃははは。良い返事だ。これならスサノオと戦うことになっても大丈夫だな」



 ――え?


 私は心臓が止まる思いがした。

 そしてバルクネシアでの激闘を思い出した。


「スサノオが……ここに居るの?」

「ああ。前に進士に言ったころがあるが、もう一度言っておくぞ。オメーらがバルクネシアで戦ったスサノオはオリゾナルのスサノオでは無い。スサノオの遺伝子で作ったクローン兵士だ」

「クローン兵士……?」

「要するに、ただの雑魚だ」

「……」


 そう言い切る狂歌。

 そりゃああなたみたいな化け物からしたら雑魚かもしれないよ。

 あいつは私と進士の二人がかりで戦っても勝てなかった。少なくとも、私達からしたら命を賭ける覚悟が必要な強敵であることは間違いない。


 というか……本人じゃなかったの!?

 それに進士だけ知っていたんだ。


「心配するな。この狂歌が鍛えてやったんだ。オメーら二人なら大丈夫だ」

「……うん!」


 正直、とても心配だ。

 だけど、師匠にそう言われたら頑張るしかない。

 というか、私達がここで頑張らないと日本が火の海になってしまう。

 これ以上、テロリストの好きにさせるわけにはいかない!


「狂歌さん。奴は必ず俺が仕留めます。なので、作戦をお願いします」

「きゃははは。良い目だ」


 狂歌はヒナ姉にサポートしてもらいながら説明を始めた。


 ◆◆◆


「もう一度言うが、敵の目的はドローンによる日本本土に対する爆破テロだ。美琴と進士が会社から盗んできてもらった情報から、ドローンに使用する部品がこの島に運ばれているのがわかった」


 ついに私達がやらされていたことの意味が明らかとなった。 


「私達がやってきたことが今回のテロ計画と繋がるのか……。でも、なんで日本の企業が?」

「いいか? 日本という国の中には色々な人間が居る。その中には、日本を裏切る存在……いや、外国人が日本人の顔して生活している人間だって大勢いる」

「……そんなに?」

「そうだ。大量にな。政治の中にも入り込んでいるし、議員だって国籍誤魔化して日本人のフリしている奴だっている。議員秘書している奴が外国人で、日本にとって不利に働くようなことをしでかす馬鹿だっている」

「もしかしてその外国人の多くって……」

「ああ」


 狂歌は、私が思い浮かべた国名を言った。


「バルクネシアだ」

「……」


「バルクネシアは世界支配を企む馬鹿共が好き勝手やるために建国された国だ。国境を越えて支配を広めようとする貴族や国際金融資本家の協力で作られた。それで、日本に恨みを持ったスサノオ達はバルクネシアに協力している。スサノオはバルクネシアの軍最高司令官だ」

「犯罪行為をするために作られた国ということ……?」

「そうだ。闇バイトや闇オンラインサロンを運用して狙った国の治安を脅かす。狙った国の子供を誘拐して臓器売買や性的搾取を行う。震災で亡くなった人間の戸籍を乗っ取る『背乗り(はいのり)』を行う。政治家をハニートラップにかけて言うことを聞かせる。きゃはは。挙げたらキリが無いな」


 狂歌の言っていることが恐ろしくて仕方が無い。


「それじゃあ……私達がNPO法人から情報盗んできたのって、もしかして」

「ああ、そうだ。オメーらが盗んできた情報のお蔭で、売られそうになってた子供達を助けることができた。なあ、知ってるか? 子供の相場は一人130万円くらいだとよ。本当にふざけているよな」


 私達の行動で救われた命があったのは良かったけれど……でも、そんなことがこの国で行われていたという事実に恐怖を禁じ得ない。


「というわけでだ。そういうクソ共が爆破テロを行おうとしている。それを止めるためには、ドローンの制御権を奪い無力化すること。そして今回の首謀者や工作員をこの島から逃げる前に捕まえること」


 狂歌の言葉に皆頷いた。

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