「ステージの方で集まってるヤツらと話して来なくてイイのか?」
という
亜矢たちや柚寿の友人の香奈、映文研のメンバーと合流すると、その想いは、彼の中でより強くなった。
見知らぬ生徒や学生の多さに、明らかに緊張して表情が固い我が映文研の後輩たちと同じく、この場に知り合いが多いハズの亜矢たち三人の表情もまた、イベントの開始を待ちわび、期待しているという楽しげなようすとは、ほど遠いモノだ。
前日には、下級生の
「遅くなって申し訳ない……撮影の準備は、進んでるか?」
すでに集まっているメンバーから感じられる重苦しい雰囲気に気づいていないようにふるまいながら、
「あっ、部長! お疲れ様です。これだけ知らない人が集まると、やっぱり、緊張しますね……」
「そうだな……浜脇たちは、オレと柚寿のために付き合ってくれてるんだもんな。必要な撮影が終わったら、サッサと帰らせてもらおうぜ」
下級生の言葉にそう返答すると、
「部長、ナニ言ってるんですか? 部長は、ここで、実行委員会の人たちにアピールしなきゃいけないんでしょ!? 出番が終わったら帰れるとか、あり得ないですから!」
彼は、それまで硬かった表情を崩して、ツッコミを入れてきた。
「ゲッ! マジかよ〜! しゃ〜ねぇ〜な〜……なら、ちょっと、今日のイベント主催者の
「ちょい待ち! ウチも一緒に行く!」
と、彼のクラスメートの
「深津、アンタひとりだと不安でしょ?」
そう言いながら、ニシシと笑う彼女に、「あぁ、ありがとうな……」と、ほほえみながら返事をする。
「イイって、イイって! アンタなりに気をつかってくれてるんでしょ? 亜矢が、あの場所に行くのは、ちょっと避けたいとこだしね……」
最後は、少し真顔になる彼女の表情を横目で眺めつつ、彼は感心しながらステージに向かう。
(たしか、亜矢は、『あまり空気を読めない』と言ってだけど……名塩は、友だち想いなんだな)
舞台に近づくと、隣を歩く奈美の方が率先して、実行委員会のメンバーに声をかけてくれた。
「どうも〜! 今日は、参加させてくれてありがとうね〜!
「おっ、ナミちゃん! 彼が、今日の舞台に立ってくれるのか? へぇ〜、高等部にこんな男子がいたんだ? 結構、イケメンじゃん?」
いかにも、大学祭の実行委員会メンバーといった感じの軽い感じの大学生が、奈美の言葉に反応する。
「でしょ〜? まぁ、
大学生の返答に、ケラケラと笑いながら答えるクラスメートの言葉に反応したのは、
「あっ、あのとき、亜矢ちゃんと一緒にいたお友だちの方ですか?
「あぁ、そう……こっちは、いま、
「ふ〜ん……今度は、このヒトがターゲットですか? 頼まれもしないのに、良くがんばりますね? そのアドバイス、ホントに本人が望んだモノなんですか?」
「さぁ、どうだろうね? でも、少なくとも、亜矢には
下級生女子のあおりを余裕の表情で論破した奈美に対して、相手の少女は、
「それが、余計なお世話だって言ってるんですよ!」
と、キレ気味の言葉で応酬する。
「カ、カリンちゃん、落ち着いて……ボクは、気にしてないから。あ、お友達も亜矢ちゃんに伝えておいて。『あんなコトがあったけど、いつでも、気軽に声をかけてくれたら嬉しい』って……」
少女の隣でことの成り行きを見ていた鳴尾ハルカが、ようやく口を開く。
「もう〜、ハルカくん、優しすぎ〜」
などと、カリンちゃんと呼ばれた少女は、彼氏に言葉をかけているが、
(いやいや、ことの発端は、おまえの言動にあるだろ? どの
いっぽう、隣に目を向けると、彼のクラスメートの女子は、
「ハルカ、アンタ救いようのないバカだわ……」
と、あきれ返るようにつぶやいていた。