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第14話 アリシア、マナー講師に出会う

「いえ~い☆ あーしが女神・リンレーだぉ。みんな、よろしくネ♡」


 これがリンレー……様?


「思ってた女神様と違うー」


 ミィちゃんもマーちゃんも気品があって神々しいのに……。


「どいひー! あーしだって神々しい女神だぉ?」


 はっ、心を読まれた⁉ やっぱり女神様だ!


「し、失礼しました。リンレー様」


 わたしは跪いたまま、頭を深く下げる。


「よきよきよ~☆ 立派な祭壇サンキューね~! あーし、キラキラしたもの大好き~♡」


 おお、気に入っていただけたみたい。それは良かった!


「ロチェリスマインだっけ? いっつもあーしにお供えサンキューね! 敬虔な信徒はラヴュラヴュだぉ♡」


「あああああああああああああありがたきしあわせでございますぉ」


 ちょっと口調がうつってるし。


「でもロッチェさ~。お供え物は良いけど、生贄は良くないぉ? もっと命は大切にしよ?」


「は、ははー!」


 あっさり解決。

 そりゃそうだよね。女神様が生贄を求めるなんて、そんなはず――。


「生贄は同胞を殺された時だけにするぉ。命には命だぉ」


 さすが正義の女神様。そこはぶれなかった……。


「無駄な殺生はせず、清く正しく生きるぉ。それがあーしが信徒に望む唯一の正義と平等だぉ」


「ありがたきご神託、感謝申し上げますぉ」


 あー、もう、どっちがしゃべってるのかわからなくなるから口調真似るのやめるぉ!


「これで話はおしまいだぉ。マーナヒリンの信徒もそれで良いかぉ?」


「はい! サンキュでーす☆ マジ助かりー。あとはピクシーたちと楽しく宴会でもしていってあげてほしいですぉ」


 わたしたちはお店に帰りたいですからね。


「それも良いけど~。マーナヒリンから聞いてるぉ。あーしにも日乃本酒を飲ませるぉ?」


 あ、はい。

 さてはこの場に顕現なされたのは……そっちが主目的ですね?


「きゃぴっ☆」


 図星つかれてごまかしてきたー!

 はいはい。まあ、せっかくですからパーッとやりますかね!


「じゃあ今日はリンレー様顕現記念&ピクシー族とのお近づき記念&ソフィーさん一行救出成功記念のパーティーをぶち上げちゃいますかー!」


 いえーい☆


「いやっふぉぉぉぉぉぉぉ!」


 ハインライトさん……テンション上がりすぎぃ。



* * *


 誤解も解けたところで、ロチェリスマインの魔力封印の檻を解除して仲間のピクシーたちを呼び寄せてもらう。

 ほどなくして、ロチェリスマインよりも小柄なピクシーたちがわらわらと洞窟に集まってきた。


「ロチェリスマイン様!」「えっ女神様⁉」「リンレー様だ!」「リンレー様!」


 ピクシーたちはロチェリスマインの無事に安堵しつつも、リンレー様の存在に驚く、辺りは騒然となる。50人もいるととんでもなくやかましい!


「リンレー様の御前であるぞ!」


 ロチェリスマインが毅然とした呼びかけると、ピクシーたちは祭壇の前に集まり、一斉に跪いて頭を下げ始めた。


「よきよきよ~☆ 今日は無礼講だぉ。一緒に酒を酌み交わして絆を深めるぉ」


 無礼講だぉ!

 なんか普通に良い女神様っぽいよねー。ミィちゃんが言っていたのとぜんぜんイメージが違う……。生贄を奨励していて、ちょっとでも不遜な態度をとると断罪される、ってそんな感じなくない?


『見た目や口調に騙されてはいけません。リンレーは私たちの中で最も厳しい女神です』


 えー、そうなの?

 むしろ一番話が通じそうな印象だけど……。


 と、リンレー様の声が聞こえてる。


「こら、そこのおまえ~。そっちは上座だぉ。当たり前のマナーも守れない者は排斥するぉ?」


 ま、まさかのテーブルマナーに厳しい女神様⁉


「こら~! 料理を右側からサーブするんじゃないぉ? 次やったら排斥するぉ?」


 厳しい! やっぱりマナー講師だ!


「飲み物は右からに決まっているぉ⁉ ロッチェ! 部下の教育も満足にできていないのかぉ⁉」


 ああっ、部下の責任は上司の責任! このままだとピクシー族が全員排斥されてしまう!


「し、失礼しました! マナー……ごめんなさい。我もよくわかっていなくて……ふええん」


 だから泣くんじゃない!

 知らないものは仕方ないから。だってずっと山の中で暮らしているのにテーブルマナーなんて知るわけないよね。


「失礼ながらわたしたちが交代させていただきます」


 エデン、マッツ、スキッピー、アークマン。『龍神の館』の技を見せる時よ!


「「「「YES、暴君幼女!」」」」


 くっ、ここで怒鳴るのはマナー違反……。

 任せたわよ……。でもあとで殴る。



「こちらが当店一押しの『日乃本酒・龍神』の冷でございます」


「うまいぉ! これはうまいぉ! マーナヒリンの言っていた通り、それ以上だぉ! あーしにも毎日捧げるぉ」


「えっと、それは……」


 ロチェリスマインのほうをちらりと見やる。高速で首を横に振っていた。

 そりゃ無理よね。

 毎日うちの店に買いに来るのは現実的じゃないし……。


「本日は特別にお出ししておりますが、普段はお店に来ていただかないと……」


「それがルールかぉ?」


「はい、ルールでございます」


「わかったぉ。ルールは正義。あーしも通うぉ」


「ありがとうございます。従業員一同心よりお待ち申し上げております」


 お得意女神様ゲットー☆

 テーブルマナーが完璧な天使ちゃんをつけることにしよう……。


「ところでローラーシューズショーはまだかぉ?」


「えっ」


「マーナヒリンが『楽しいぞよ』っておすすめしてたぉ」


 マーちゃんったら!

 興味なさそうな振りして楽しんでたのね!


『うむ。アリシアの体を観察しておるの。最近はジャンプするとちょびっとだけ胸が揺れるようになってきたの』


 めっちゃ観察されてた! はずかしっ!

 まあ、わたしも成長期ですからね。へへ♡


『ロイスの揺れは暴力的じゃの』


 はいはいそうですねー。そうですよねー。わたしももっと暴力振るえるようにがんばりますぅ。


「わかりました。それではわたし……と、エデンで特別なショーを披露させていただきたいと思います。ソフィーさん、BGMお願いします」


「私が⁉」


 何を驚いているんです? この中で『絶対音感』スキルを持っているのはソフィーさんだけなんですよ?


「だいたいで良いので、いつもスピーカーでかけている音楽を鼻歌でお願いします!」


 何もないとわたしたちも踊れないからね……。


「くるみ割り人形だったかしら。あれで良い?」


「もちろん!」


「ローラーシューズショーの時には梅酒なるものが飲めると聞いてるぉ」


 と、リンレー様。

 やはりお酒がメイン!


「はい、そちらもご用意いたします」


「梅酒とは⁉」


 はいはい、ハインライトさんにも出してあげますから、マナーを守って末席で静かにしててもらえますか?


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