「セレン──お前は甘い……!」
右眼を
ガウェインの右眼を
ガウェインから完全に
直後──ガウェインが頭上から振り下ろしたカウンターの
結果──セレンの左腕は砕ける──。
足元で
ガウェインの額にいくつもの太い血管が浮かぶ──。
「──立て! セレン──! お前には怒りが足りん──! もっと本気で! 俺を殺す気で来い──!!」
しばらく
だが──左腕はもう使い物にならない──。
初撃の体当たり、反撃の右拳、そして追撃の蹴り──セレンはもう
──そろそろか……?
ガウェインはいまだ、本気を出してはいない──。
体当たりも、右拳も、蹴りも、上手くダメージを加減していた。
全ては──セレンの
ガウェインが戦いを望むのは──あの日──戦場で見た悪夢──それだけなのだ──。
「──お前が本気にならないのなら仕方ない……。俺も……流石にこれは……心苦しくて言えなかった事だが……。ひとつ──お前に教えてやろう……」
ガウェインはゆっくりとした
セレンはフラフラになりながらも、何か、重要なその言葉に、ピクピクと耳を
「──最近……例の
セレンは
セレンの呼吸は速く──荒い──。
「──アクロは、顔も、身体も、傷だらけで──元の面影なく──寒く……暗い……
ガウェインが話す中、
「──そう信じて……待っているそうだ……」
辺りは静かになり──ガウェインの声だけが響き渡った──。
セレンは
──そうだ……怒れ──! セレン──!
「──
ガウェインが呆れるように言い放った時──セレンの動きが止まり──
ガウェインは口元に
その巨大化した肉体はガウェインに匹敵する──。
いや……それ以上か──?
──そうだ……それで良い……。
本人の意思は……まだ残っているのだろうか──?
「──アクロは死ぬまで
──待ってたぜ……! ずっと……この日を──!
ガウェインは必殺の
──やはり、変人学者の仮説どおりだった……。クロノは、死、絶望、怒り。
ガウェインの視界が揺れた直後──!
その姿が消えた──!
「──俺は
ガウェインが
その頭上の
──そこだっ──!
ガウェインが勝利を確信した瞬間──!
霧を切り裂いて現れたセレンの瞳が──!
強烈な閃光を放つ──!
黒毛が
全身は
「──おいおい……。なんだ……それは──!?」
顔面に向けて放ったガウェインの
強烈な
大地が焼け──空気が
「……まいった……。俺の負けだ……」
周囲を包んでいた
ガウェインが
「──今度は……俺は……恐れず立ち向かった……」
ガウェインが、手をついて起き上がろうとする──。
「──おいおい……。凄いな──腕が一本……消えちまった……」
ガウェインの右腕が──何処にも見当たらない──。
「──セレン……。ありがとう……満足だ……」
背を向けて隣に立つセレンは、全身から光が消え、身体が
「──セレン……戦いの最中に俺が言った事だが……すまない……全て嘘だ……。心配するな……アクロに暴力は加えられていない……。アクロの
ズルズルと鼻をすする音に気づき、ガウェインは顔を起こす。
「……なんだ……? お前……泣いているのか……? セレン……お前は優しすぎる……」
セレンは初めて、自分が誰かを傷つけたことを自覚し、その大きすぎる力──
「……アクロは……
セレンは振り返り、ガウェインの
「──そんな事ではこの先──世界中を旅する事なんて出来ないぞ……! ただでさえお前は……何もせずとも敵が寄ってきてしまう
最後にそう言って──ガウェインは
その夜──街には数十年前の戦時以来の
第十九/二十話
瞬間の死闘/雨、逃げ出した後