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憧れの美人生徒会長にお喋りインコが勝手に告白したけど、会長の気持ちもインコが暴露しやがった
憧れの美人生徒会長にお喋りインコが勝手に告白したけど、会長の気持ちもインコが暴露しやがった
間咲正樹
現実世界ラブコメ
2024年12月20日
公開日
3,732字
連載中
俺が憧れている生徒会長の茸村(たけむら)先輩は、容姿端麗、成績優秀、そのうえカリスマ性もあり男女問わず熱烈な支持を受けているという、まさに高嶺の花。 茸村先輩と付き合いたいという思いが日に日に強くなっていく俺だが、俺みたいな凡人では先輩とは釣り合わないと、半ば諦めかけていた。 そんなある日、愛鳥であるインコのピーちゃんを誤って外に逃がしてしまった俺だが、ピーちゃんを保護してくれたのは、なんと茸村先輩で……!? ※コラボ作品です。 【原案】しいたけ 【文】間咲正樹 本作がオーバーラップ文庫様より書籍化しております。 本一冊分になるくらい加筆修正いたしましたので、実質書き下ろしでございます。 この物語がどう広がったか気になる方は、是非書籍版もお手に取っていただけますと幸いです。

憧れの美人生徒会長にお喋りインコが勝手に告白したけど、会長の気持ちもインコが暴露しやがった

「なぁ、どうしたらいいのかな……?」


 窓辺に両肘をつき、黄昏れるように問い掛けた。

 決して独りごちているわけではないことは、そばにある鳥籠の主が証明してくれるだろう。


「シラヌ! ゾンゼヌ! ウカガイシレヌ!」


 愛鳥のインコ、ピーちゃんが俺の問い掛けに、翼をパタパタさせながら声色をあげた。


「母さんッ! またピーちゃんに変なこと教えただろッ!?」

「知らないし存じませんし伺い知れません」

「それをピーちゃんが真似してんだよッ!!」

「あっ、そう?」

「もう……!」


 とぼけた母に嘆息を漏らし、いってきますと家を飛び出した。




茸村たけむら先輩! お鞄お持ちします!」

「フフ、いつもすまないな」

「茸村先輩! これ、お弁当作ってきたんで、よかったら食べてください!」

「ああ、ありがとう。あとで大事にいただくよ」

「茸村先輩ッ! 今日もお美しいですッ!」

「なにを言う。君たちのほうが何倍も綺麗だよ」

「「「きゃあ~~~~~」」」


 おおう……。

 今日も凄いことになってんな。

 我が校の生徒会長である茸村先輩は、容姿端麗、成績優秀、そのうえカリスマ性もあり男女問わず熱烈な支持を受けているという、まさに高嶺の花。

 むしろどちらかというと女子生徒からの人気のほうが高いまである。

 先輩は高身長のモデル体型で、いかにも女性が憧れる女性って感じだもんなあ。

 それこそ取り巻きの女子の何人かはかもしれない。

 その証拠に、彼女たちは付箋がビッチリと貼られたゼクスィとひよっこクラブを、大事そうに握り締めている。

 多様性の時代……!


「あ! 咲間さくま! 咲間じゃないか! おはよう! 聞いてくれ、昨日やっと、『飛行機』ができるようになったんだぞ、私!」

「「「――!!」」」


 その時だった。

 茸村先輩が無邪気に目を爛々とさせながら、俺のほうに駆け寄ってきた。

 おおっと!?

 先輩の取り巻きたち――主に女子――からの殺気がパない――!

 ま、まあ、あの茸村先輩からこんなに親し気な態度を取られたら、そりゃそうなるよね……。


 ――あれは今から一ヶ月ほど前のこと。




「ほっ、よっ、はっ」


 その日の昼休み、俺はいつものように、唯一の趣味であるけん玉の練習を裏庭でしていた。

 ……もちろん一人で。


「す、凄いな君!」

「え?」


 不意に、よく通る美声が俺の耳に入ってきた。

 声のしたほうに目線を向けると、そこにはなんと我が校一の有名人、茸村先輩が目をキラキラさせながら立っていた。

 なんでこんなところに茸村先輩が!?


「それ、けん玉だよね!?」

「そ、そうですけど……」

「今のはなんていう技だい!?」

「ひ、『飛行機』です……」


 飛行機はけん玉の基本技の一つで、けんではなく玉のほうを持って、けんをその玉に刺すという、なかなかに難度の高い技だ。


「飛行機……! 滅茶苦茶カッコイイじゃないか! 是非私もやってみたい! 君さえよかったら、やり方を教えてくれないか!?」

「――!?」


 お、俺が!?

 あの茸村先輩に!?


 ――こうして俺と茸村先輩の、謎の師弟関係が出来上がったのである。


 苦手なことなどなにもないように見える茸村先輩だが、実は手先だけは絶望的に不器用なことが発覚した。

 その証拠に、けん玉の初歩の初歩である、大皿ジャンプでさえ十回に一回成功するかどうかという有様だった。


「うぐあああ、やっぱり私には無理だあああ!!! 私はけん玉をやる資格などない、ゴミ虫なんだあああ!!!」

「そんなことないですよ先輩! 誰だって最初は初心者です。先輩ができるようになるまでいくらでも付き合いますから、一緒に頑張りましょう!」

「――! さ、咲間は本当に優しいな……」

「……え?」


 頬をほんのりと染めながら、はにかんだ笑顔を向けてくる先輩。

 ――はぐふぅ!!

 そんな顔で見られたら、勘違いしそうになるからやめてください……!


「べ、別に俺は普通ですよ。先輩が一生懸命だから、応援したくなるだけです。さあ、もう一度やってみましょう!」

「ああ!」


 こうして先輩の必死の努力の甲斐もあり、徐々に――本当に徐々にだが――先輩のけん玉の腕は上がっていった。

 表向きは完全無欠な生徒会長である先輩が、裏では必死に苦手なけん玉の練習を頑張っているというギャップに、俺は萌えずにはいられなかった。

 ――そんな日々を送っているうちに、俺が先輩に無謀な恋心を抱くようになってしまったのは、ある意味必然だったともいえる。




「『飛行機』ができたのは咲間のお陰だ! 本当にありがとな!」

「そ、そんな、俺は大したことはしてませんよ」


 そして今日、遂に先輩は念願だった飛行機に成功したという。

 あ、ヤバい。

 ちょっと泣きそう。


「不甲斐ない弟子だが、これからもよろしくな、咲間」


 先輩は満面の笑みで、俺の肩に手をポンと置いてくる。

 ――先輩!


「は、はい! 俺なんかでよければ!」


 ――嗚呼、やっぱ俺、先輩のことが好きだ。




 ――その夜。

 昼間先輩から向けられた笑顔が、今でも俺の鼓動を早めている。

 部屋で一人、あと一羽。ため息と足音が部屋の中に渦巻いた。


「茸村先輩と付き合いたいけど、俺なんかじゃ無理だよなぁ……」

「アイショウ ハ ワルクナイゾ! ワルイノハ カオダ!」


 辛辣なピーちゃんに軽く殺意を覚えつつも、それが現実かと諦めてベッドに横になった。




 ――そして迎えた休日。

 今日はいい天気だし、久しぶりにピーちゃんの籠を掃除しようかな。


「ピーちゃん掃除するよー」

「アバヨ! クソッタレナ コノセカイ!」

「ピーちゃんッ!!?」


 が、俺が籠を開けた瞬間、ピーちゃんは謎の捨て台詞を残して籠から飛び出してしまった。


「ピ、ピーちゃああああんッ!!!!」


 しかもうっかり窓を開けていたため、ピーちゃんはそのままシャバの空気を吸いに大空へと消えてしまったのである。

 ――俺は慌ててピーちゃんの後を追った。




「……ピーちゃん」


 血眼になって街中を探し回ったものの、夕方になってもピーちゃんは見つからなかった。

 猫に捕まってたらどうしようかと考えただけで、胸が苦しくなる……。

 大好物のドライフルーツを持ってきたけれど、ピーちゃんの声すら聞こえない。

 どうしようかと途方に暮れていた、その時――。


「――ピ、ピーちゃんッ!!?」


 ふと通りかかった公園のブランコで、ピーちゃんを手に乗せた人を偶然見つけたのだった。


「ピーちゃんッ!!」


 俺は涙で滲む目を必死に擦りながら、その人に駆け寄る。


「あ、咲間じゃないか」

「っ!? 茸村先輩!?!?」


 なんとピーちゃんを保護してくれていたのは茸村先輩だった。

 えーーーー!?!?!?!?


「この可愛いインコは咲間のだったのか」

「すみません、うっかり逃がしてしまいまして……」

「ほら、ご主人のお迎えだぞ」

「シャバノ クウキ カクベツ」


 ピーちゃんをそっと受け取る。


「もう逃げないように、しっかりと見張っておくんだぞ」

「は、はい、気を付けます」


 ふおおお、私服の先輩の破壊力パねえええ!!!

 いつもの学校のパリッとした制服じゃなくて、今日は全体的にフリフリした可愛らしい格好をしている。

 私服はこんな乙女チックな感じなのかあああ!!!!

 萌ええええええ!!!!!


「じゃあ、私は帰るからな」


 先輩は颯爽と俺に背を向けて、この場から去ろうとする。

 な、何か話さないと……!


「あの、茸村先輩……!」

「ん?」


 キョトンとした顔で先輩が振り返る。

 その顔を見た瞬間、緊張のあまり頭が真っ白になってしまった。

 あ、あわわわわわわわわわ。

 ――その時。


「タケムラセンパイト ツキアイタイケド オレナンカジャ ムリダヨナァ」

「「――!?!?」」


 ピ、ピーちゃああああああん!!!!!!

 慌ててピーちゃんを押さえるも、指の間からするりと顔を出して首をかしげている。


「いや、今のは違くてですね先輩!! あの、なにが違うのかって言われたら、上手く説明はできないんですけども、えっとえっと……」


 あまりの恥ずかしさに顔からプロミネンスが噴き出そうになり、自分でもなにを言ってるのかわからないッ!!


「キノウモ サクマハ トテモカッコヨカッタナ……」

「「――!?!?!?」」


 今度は先輩が慌ててバタバタと手を振り始めた。

 全身真っ赤に染まり、人間紅葉の隠し芸のようだ。


「せ、先輩……?」


 あまりの慌てぶりに、こっちは逆に冷静になってしまう。


「サクマハ ワタシノコト ドウオモッテ イルンダロ……ハァ」

「うわわわわ!! やめろ! そのインコそんなに喋るのか!? し、知らずにペラペラ喋ってしまったぞ!!」


 滅茶苦茶慌てる先輩。

 どうやらどうやらのまさかまさかだ。


「ピーちゃん他には?」

「シラヌ ゾンゼヌ ウカガイシレヌ」

「ドライフルーツあげるから」

「コンド サクマヲ デートニ サソオウト オモウンダケド……ダイジョウブカナ?」

「うおぉぉぉぉ!!!!」


 先輩が地面を転がって暴れている。


「先輩……」

「ああもう! こうなったら自棄だッ! ――私は君が好きだ、咲間!! 言っておくが私はしつこいからな!! 私の気持ちを知った以上、私と付き合ってくれるまで、死ぬまで付き纏うからな私は!!」

「ふふ、大丈夫ですよ、先輩。――俺の気持ちは、さっきピーちゃんから聞いたでしょ?」

「そ、そうだな。――ひゃうっ!?」


 ピーちゃんを握ったまま、俺は先輩を抱きしめた。


「アイショウハ ワルクナイゾ ワルイノハ──」


 そっとポケットからドライフルーツを取り出し、ピーちゃんの口にねじ込んだ。

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