古の時代から、密かに好きなものの好きなとこを数え上げるのはよくされていたことだと思うんだ。

　別に瓜に子どもの顔描いたりはしないけど、密かに数え上げるのはおれもする。

　慣れない手つきで包丁を使っている真剣な横顔。

　美味しいものを食べたときに真顔になっちゃうところ。

　資料とパソコン画面を見比べている時の難しい顔。

　寝起きのどうなっているんだろうっていうくらいの寝ぐせ頭。

　洗濯を干しきった時のどや顔。

　テレビを見ながら別のことを考えているぼんやり顔。

　こっちを見て愛おしくて仕方ないって思ってくれている顔。

　思わぬことが起きた時に固まっちゃうところ。

　休日の昼下がりにゆらゆらしながら眠気をこらえているところ。

　こっちの気も知らないで無防備にさらされた背中。

　休日の終わりに仕事用のカバンを見下ろしてため息をつくところ。

　それから、ホントにたまらないところ。

　熱に浮かされた吐息。

　額に浮かぶ汗。

　おれを見下ろす、ああ雄だなって思う表情。

「いっくん、この間から何してるの？」

「内緒」

　絶対に教えない。

　おれが思うシュンの好きなとこ。