屋根板を半分ほど張り終えたので、そろそろ良かろうと作業場に戻ると作った扉の部品はしっかり冷えていた。それらを持って倉庫の開口部へ向かう。
まずは開口部の枠に外開きになるように蝶番の片方を取り付けていく。これ自体はただ留めるだけではあるので何ということもない。
扉を持ってきて、蝶番のもう片方の取り付けを行う。城門や土蔵の扉に使うのなら釘なんかも、もう少し凝ったデザインにするところだが今回は細長い板状のままだ。
枠と扉の両方に蝶番の部品を付け終えたので、組み合わせてピン(と言うには若干太いが)で接続する。ゆらゆらと動かしてみると若干軋む音はするものの、スムーズに開閉出来た。
後はこれをもう3箇所行うだけである。テキパキと設置を進めて、倉庫には扉がついた。閂は材木を四角く切ったもので、その残りでくさび形のドアストッパーも作っておいた。
屋根の方を見てみると屋根板はほとんど張り終わっていたので、クルルを呼んでミニ荷車をくくりつける。
「クルルル」
クルルは遊んでもらえる!とばかりに喜んでいる。実際は仕事なのだが、楽しんでやってもらえるならいいか。
作業場の入り口にクルルを待たせて、作業場の中に積まれた木炭を運び出しミニ荷車に載せる。ある程度積み終わったら、今度は倉庫まで持っていってもらう。クルルの足の運びが機嫌良さそうで何よりである。
倉庫の床とミニ荷車の荷台の高さはほとんど同じだ。閂を外し、扉を開いてドアストッパーで閉じないように固定して、ミニ荷車の荷台から直接倉庫内へ運び込んでいく。
これを2~3回ほど繰り返して、倉庫の中に作業場の半分ほどの木炭が積み上がった。今後、木炭と鉄石はまずこっちに運び込めばいいか。今日鉄石の方は運び込まない。明日から作業で使うからだ。
続いて、木炭を入れなかった方の倉庫に同じようにして干した肉を運び込む。女性が4人とは言え、5人家族+走竜だとそれなりに消費もするが結構な備蓄量にはなっているから、倉庫に分離して保管できるのは助かるな。
肉を運び込んでも、倉庫にはかなり余裕がある。これなら瓶を増やして長期保存の塩漬けを増やすことが可能そうだ。
家の中に置くにはどうしても限界があるし、梅雨の時期が来れば生肉が痛みやすく、乾かしにくくなることは容易に想像できる。そうなる前に干す以外の貯蔵量を増やすのは大事なように思えるので、計画しておこう。
それらを置いてもまだスペースはかなりありそうだが、そちらは買ってきた小麦や畑で収穫した作物を貯蔵すればいい。
つまり、こっちの肉を置いた方は食料庫、向こうの木炭を置いた方は資材庫ということだ。ちらっと屋根を見上げると、屋根はほとんど張り終わっている。あと1段か2段か張れば完成だろう。
であれば手伝うまでもないか、と俺は材木から板を切り出した後の
資材庫のほうに、乾いてもう使える材木をクルルに手伝ってもらって追加で運び込む。材木をいくつか運び込んだ頃、
「こっち終わりました!」
「こっちもよ!」
リケとディアナが屋根の完成を知らせてきた。
「わかった!気をつけて降りてこいよ!」
俺が声を掛けると、4人から返事が返ってきた。
クルルの小屋、食料庫、資材庫。3つの施設がこの家に加わっている。
「こうして見るとなかなか立派な家になってきたわね」
ディアナが感慨深げに言う。
「そうだなぁ。これでかなりの貯蔵ができるし、カミロには調達を頑張ってもらわないといけないなぁ」
「親方、あんまり無茶な量を言っちゃダメですよ」
「時々容赦ないからな、エイゾウは」
「いやまぁ、気をつけるよ……」
俺の言葉にリケとサーミャがツッコミを入れ、全員が笑うのだった。