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安全装置は大事

 まだ夕飯までには時間があるので、逆転防止ラッチと、直線状のパーツ、ラックの飛び出し防止の仕組みを作る。


 逆転防止ラッチは一定の方向には動くが、逆方向には動かないようになっていて、歯車の歯に噛み合い文字通り歯車が逆回転するのを防ぐ役割を果たしている。

 確か、前の世界の電動エアソフトガンにも入っているのだったかな。俺が勤めていた会社にサバイバルゲームをしている人がいて、電動ガンの仕組みについて興味が湧いて聞いたときに、確かそんなことを言っていた記憶がある。


 歯車の逆回転をさせないが、当然ながら正回転はさせなければいけないので、そちら方向には少しだけ動くように設置場所を調整する。今回は仕組みの検討なので耐久性や実際の配置は度外視である。

 もちろん、動いたあとで元の位置に復帰しないと、歯車の逆回転は防止できなくなってしまうので、鉄板を薄くしてから曲げて板バネのようにし(鍛冶のチートですぐにできた)、元の位置に復帰するようにした。


 一通りの仕組みが出来たので、試しに少し回してみる。ごく僅かなので大きな歯車が逆回転したとしても、小さい歯車もそんなに回転しないはずだ。

 小さい歯車が回り、それにつれて大きな歯車も回っていく。歯車の歯に噛み合っているラッチが大きな歯車の動きを阻害しないよう、ほんの僅か動く。

 俺が小さい歯車を回し続けると、大きな歯車の歯を乗り越えたラッチは小さくコトリと音を立てて元の位置に戻った。


 そのままグルグルと回し続け、わずかばかり抵抗が生まれたところで、俺は少しずつ力を抜いていく。ラッチの仕組みがうまくいっていれば、大きな歯車も小さな歯車もほとんど動かないはずだ。


 弦の張力でラックが前に押し出され、それにつれてラックに噛み合っている大きな歯車も、今まで回転していたのとは逆の方向に回ろうとする。

 だが、それはラッチによって阻まれた。逆に回ろうとする歯を支えるようにラッチが噛んでいて、大きな歯車は動きを止めている。


「よし」


 チートの手助けもあるけど、とりあえずはうまくいったようだ。発射するときはラッチを動かして歯車を解放すれば、動きが自由になって発射されるはずである。

 今の状態だと、そのときにラックも一緒に発射されてしまう。当たり前ながらそれでは何かと困るので、飛び出し防止用にラックを抑える部品をつける。


 部品と言っても、今回は飛び出さないことと、跳ね上がって外れたりしないようにすることだけを考えるので、ただのストッパーと蓋のようなものを簡易に取り付けただけだ。

 試さずとも有効な事はわかる。ただ、ラックへの影響や全体の耐久性については考えてないので、実際の製作にうつったらバネか何かで衝撃を吸収してやったり、工夫する必要があるだろうな。


「1発くらいは撃てるかな?」


 出来上がったのは不格好な代物だが、それでも最低限の用はなしてくれるだろう。俺は新しく生まれたそいつを手に、的を置いてある庭に向かうのだった。



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