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戦火は金色の追憶と白銀の剣のうちに。
戦火は金色の追憶と白銀の剣のうちに。
井熊蒼斗
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年12月26日
公開日
46.4万字
連載中
毎日更新しています!! 重厚で正統派の王道ファンタジー。 辺境の村に産まれたアルウィンは、幼馴染のオトゥリアと剣を学びながらも平穏な日々を送っていた。 剣でオトゥリアに負け続ける彼は、いつの日か勝てるようにと努力だけは重ねていった。 そんな最中。 オトゥリアが王国騎士団にスカウトされたことで、彼女と離れ離れになってしまったアルウィン。 彼女と再会を果たし、再び一緒になるために、彼はもっと強くなろうと決意する。 そんな彼が、オトゥリアの背中を追い求めながら、ひたむきな努力で培った技術と思考を駆使して覇者となる物語。 【序章】成長編 【一章】王女救出編 【二章】王都内乱編 【三章】継承戦争編 【四章】魔王国編 【五章】聖戦編 【六章】大陸戦争編 【七章】最終決戦編 ※面白いと感じましたら、ブックマークや応援チケット、ハートマークをくださると作者の励みになります! ※異世界冒険と戦記の融合作品です。第二章から本格的に戦シーンが始まります。徐々に公開致しますのでよろしくお願い致します。 ※よくコメントにも書かれますが、誤字がよくありますので見つけ次第どしどしコメントなどでご指摘ください!

プロローグ:戦争は遠い昔の叢となって

 龍がいた。

 龍は全てを創り出した。

 産まれ落ちた全ての生物を我が子とし。

 その胸に秘めたる誓約を。

 遥かなる高みから守っていた。


 神がいた。

 その神は二柱だった。

 異界から顕れ、神座から偉大なる龍を追い落として。

 世界に相反する力と共に。

 天と地と冥府に、新たな風を吹き込んだ。


 男がいた。

 彼は剣を奮った。

 迫り来る数多の敵を、その手で屠り。

 屍の上に屍を累ね。

 新たな芽吹きの糧となった。


 彼は龍と友となり、世界を繋いだ。

 言葉、文化、思想、技術の全てをその手の内にし。

 新たな発展と交流を産み。

 永く続く戦なき世を齎した。


 生きる者たちよ。

 全ての者は友である。

 友を愛せ。

 互いに啀み合うなかれ。

 憎しみを負うなかれ。







 ………………

 …………

 ……





 歴史の教科書の序文。

 民衆は偉大な祖王の詞を、伝統的に幼い頃から暗記するものとして課されていた。

 祖王の時代から遥かなる月日が経って、今や学習というものは情報を脳にインストールする形式になる程に技術は大幅に進歩している。

 けれども、この暗記だけは口を動かして覚えることが伝統となっていた。


「か、つ、て……」


 読み書きを覚えたての少女は、その手を握る母親と一緒に、拙い舌っ足らずの声でゆっくりと文字を追う。

 麦畑に差し込む金色の光が、その親子にも慈愛の眼差しを向けていた。












 その金色の陽光に、その村の外れにある歪な形の大木は忘れていた過去を思い出していた。



 兵士の荒い息遣いと、時折どこからか聞こえる叫び声。

 最前線に掲げられた深紅の旗の下で、男───アルウィン・ユスティニアは叫んでいた。


「我がユスティニアの兵士よ!!聴け!!

 この戦は、龍神様に捧げる最後の戦だ!!

 勝機は我々にある!敵の総大将はこの先だ!!

 怖いのならば───オレの背を見ながら走るんだ!!」


 その言葉に、咆哮が沸き立った。










 そんな光景を思い出しながら、大木は眠りにつく。



 時が反転した。

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