いやいやいや、ここであきらめちゃ試合は終了です!
きっとだいじょうぶ、攻略キャラと仲良くならなくても、他になんかまるっと精霊師になれる道があるはず!
きっとあるはず!
あるよね?
不安で胸が押しつぶされそうになりながらも、授業はしっかり受ける。
ゲームでは、精霊についてこんなに詳しく説明とかなかったと思うから、純粋に面白いし楽しい。
要点をノートにまとめているうちに、不安も薄れてきて充実感すらおぼえてしまう。
精霊のことを知れば知るほど、どの精霊と契約しようか、と迷うくらいに面白く感じるわたしなのでした。
「んん~、おいしいぃぃ♡」
「アシュリーちゃんって、おいしそうに食べるのね」
食堂でCランチを堪能していると、向かいのピアリーちゃんが微笑みながら話しかけてくる。かわいい。
だって、一番お安いCランチでさえ、孤児院のごちそう以上の量とおいしさなのよ。ほっぺだって押さえるでしょう。
ああ、早く稼いでもっとおいしいランチを食べたい。
ピアリーちゃんの食べているBランチは、がんばったら食べれるようになるかも。
Aランチは、うう~ん、厳しい。
ニコラス殿下と側近が食べているSランチは、うん、何食分か抜かないと無理そう(涙)
学園は身分は重要視しない方針みたいだけど、仲良しグループはやっぱり近い身分で固まってるみたい。
平民のわたしはピアリーちゃんと2人でいるけど、Aクラスの残りの1人は男子生徒だからか、他のクラスの男子と食べているようだ。
ランチのランクに格差があると、気まずいだろうなぁ。
「アシュリーちゃんは、どの属性の精霊にするとかもう決めた?」
「ううん、まだかな。ちゃんと調べて慎重に決めるつもり。一生つきあっていくわけだから、簡単に決められないと思う」
そう、下手すると攻略キャラがもれなくついてきそうだから、検討に検討を重ねないと。
精霊との関係は、それこそ一生もののお付き合いになるんだから、回避するために気合入れなくちゃ。
攻略キャラのルートをつぶして、立派な精霊師にわたしはなる!
「アシュリーちゃんは堅実なのね」
「そういうピアリーちゃんは、どの精霊にするか決めたの?」
「うん、あたしは光の精霊にしようかな、と思ってるの」
「え? 光の?」
わわわ、ヒロインきたー!
王道の光の精霊を選ぶなんて、やっぱりピアリーちゃんがヒロインなの?
って『ときめき♡ファンタジア』もそういう設定だったし、これはピアリーちゃんがヒロイン間違いなし、なのでは?
光の精霊とともに癒やしの聖女になる展開、ヒロインあるあるじゃない?!
王道とか展開とかってなんだろう?って思うけど、きっと灯里の記憶に違いない。
もう、この時点でわたしはピアリーちゃん推しに決めた───決めました!
彼女がどの攻略キャラを選んでも、全力で推すことにします。
とりあえず光の精霊を選ぶみたいだから、狙いはニコラス殿下で、ゆくゆくは王太子妃かな?
身分差があるけど、ゲームでもハッピーエンドではどうにかなったんじゃないかな。
どうにかなるように、友だちとして手助けしよう、そうしよう。
となると、わたしの精霊選びは、光の精霊でもいいのかも?
いや、もしかするとピアリーちゃんと対立するかもしれない可能性があるから、光の精霊はやっぱり選ばないほうが無難かな。
う~ん、これを考え始めると堂々巡りになってしまって、頭が痛いなぁ。
まだ時間はあるし、勉強しながら考えるとしよう。
わたしはそう思いながら、おいしいランチを堪能するのだった。
それからは、毎日授業と自習を繰り返しながら、精霊についての理解を深める日々。
精霊によってなにができるのか、なにを好み、どう付き合うのかを学んでいく。
精霊の力は契約者の魔力量によって増減し、結びつきが深くなるほどさまざまな力が振るえるようだ。
それを知るための1週間という時間。
生徒は狙った属性の精霊について、調べて調べて知り尽くす勢いで勉強する。
この辺は、ゲームでは狙う攻略キャラの契約精霊と同じ属性の精霊のことを学んで、ゲージを満タンにしていたな~と思い出していた。
満タンにして契約の儀式に臨まないと、狙いとは違う精霊と契約する羽目になるので、必死に上げていた気がする。
光の精霊との契約を望むピアリーちゃんは、光属性の勉強に集中しているから、ゲームで言うところのゲージはけっこう伸びているんじゃないかな。
地頭よさそうだし、熱心に勉強しているピアリーちゃん、かわいい。
それを隣でながめながら、どの精霊と契約するか迷っているわたしといえば、まんべんなく知識を拾っている感じだ。
どの属性かを選べないから、時の運まかせで思考を放棄したとも言える。
勉強しながら考え続けて、疲れてしまいました。
もうね、精霊はどの属性もかわいいから、どの精霊でもウエルカム。
攻略キャラルートが開いたら、そのときにまた考えよう。
そういうあやふやなスタンスで臨もうと決めました。
そんな感じで勉強は進んでいるんだけど、今度は作るスイーツに悩んでいる。
精霊との契約の儀式では、精霊に捧げるスイーツが必要になる。
スイーツってところが乙女ゲームだなって思うけど、この世界の精霊は甘い物好きが多いみたい。
このスイーツは契約者本人の手作りで、属性の好む素材や色が大切なんだけど、う~ん、どうしよう?