手加減はしたんだが……。
クーマは俺の一撃を受けて吹き飛び、大きな大きな樹の幹をへし折って止まった。
やはり身長が低いから体重も軽く、吹き飛びやすかったのかねぇ?
ちなみに剣で斬りつけてもクーマの胴体は両断されていないが、これは俺が手加減した結果となる。こう、刀身を当てた瞬間に『ぐいっ』っとすると斬れないのだ。師匠直伝の裏技だな。
「おーい、クーマ。大丈夫かー?」
『……お、おう……平気だぜ……』
ふるふると震えながらクーマは立ち上がり――力尽きたように地面に倒れた。
「ん。平気そう。自動修復で治る範疇」
創造者としてなにか繋がりでもあるのか、そう断言するミラだった。というか自動修復なんて便利機能が搭載されているのかよ。すごいなゴーレム。
おっと、まずは謝らないとな。
「すまん、クーマ。手加減したつもりだったんだが……」
『き、気にするな……誰にでも失敗はあるさ……』
おお、あんな景気よく吹き飛ばされたというのに許してくれるとは。なんて心の広い
「ただ単にアーク君が怖くて文句言えないだけでは?」
シャルロットが何か呟いていたが、声が小さすぎて聞こえなかった。不思議なこともあるものだ。
◇
「クーマ君強化計画、発動!」
またなにやらシャルロットが思いついたらしく。
「わー」
「わー」
『わー』
ノリがいいメイスとミラ、そしてシルシュが拍手をしていた。ちなみに常識人枠のエリザベス嬢は「またやってますわ……」と呆れ顔だ。
そんな親友からの視線に気づくことなくシャルロットはノリノリだ。またいつものように演劇っぽいポーズで大演説をぶちかます。
「強くありたいと願うクーマ君の覚悟に感動したよボクは! しかし相手がバケモノでは分が悪いというもの! ここはボクたちが協力してクーマ君を超☆強化してあげようじゃないか!」
「わー」
「わー」
『わー』
拍手喝采を受けるシャルロットだった。もしかしなくても『バケモノ』って俺のことか? ちょっと手加減を間違えただけだというのに。
「やはり問題はあの斬撃だね」
「手加減してアレですものね」
「ん。結界でも防ぐのは難しい」
『というか本気でやればドラゴンも斬れるのではないか?』
面白い冗談を言うシルシュだった。そんな師匠じゃあるまいし。
「結界で防げないとなると、俊敏さで上回るしかないかな?」
なんで俺が結界を斬れるという前提で話が進んでいるんだ?
「……いえ、ここは多少の斬撃を受けてもびくともしない巨体を手に入れるという手も」
メイスって意外と『力こそパワー』タイプなのか?
「ん。理論的には可能」
ミラはもうちょっと常識とか考慮した方がいいのでは?
『うむ、デカいなら我とも遊べそうじゃな』
それってドラゴン形態って意味だよな? 逃げてクーマ。超逃げて。
「よし、じゃあさっそく試してみようか」
「既存のゴーレムをどこまで強化できるか……興味深いですね」
「ん。上手く行けば他のゴーレムにも応用可能」
『面白そうじゃから我の知識も使ってみるかのぉ』
ふふふ、と。美少女四人から迫られるクーマだった。わー、羨ましいなー。
「止めてあげませんの?」
「ははは、エリザベス嬢。俺が止められるとでも?」
「……ですわよねぇ……」
黙祷しクーマの幸せを願う俺とエリザベス嬢だった。