ダイは立ち上がると、レイの前に立つ。
レイはそんなダイの頬を、思いっきりグーで殴りつけた。
身長は同じくらいの二人だったが、エルフでメイジのレイのパンチではそれほどのダメージにはならなかったようだ。
「フランツ、リカード。お前らも殴ってくれ」
「おいらは良いよ〜。レイが思いっきり殴ってくれたし」
「ダイが逃げた理由がジュルジュさん達を呼びに行くためだったなら、それは裏切りではないからね」
ダイの言葉に二人はそう返す。
「いや、でも……。おれはお前達の命を危険に晒したんだぞ?」
「みんなが許してくれるってんなら、もういいじゃねーか。あの後、俺がみっちりしごいてやったしな」
今まで静観を決め込んでいたジュルジュさんがニヤリと笑う。
「しごいたって何したの〜?」
「コイツ自身の要望でもあったんだけどな、もっと戦う力が欲しいってんでモンクに転職させて徹底的に鍛えた」
「装備が変わっていると思ったら、そういうことか」
言われてダイの格好を見てみると、腕にナックルガードが付けられている。
ただのアコライトは付けない装備なので、そこからモンクであることがわかる。
「不意打ちされたリカードの代わりに、おれが攻撃にも参加できれば勝てたかもしれないと思って」
「なるほど。私が今回、ホーリーライトを覚えたのと同じような理由だね」
「あんたも?」
「うん。アコライトの役割は回復だけど、攻撃もできればって思うこともあるよね」
実際に会うのは初めてだが、同じような悔しさを味わっていることでお互いに共感することができた。
ダイも、少し笑みを浮かべているように見える。
ちょっとヤンチャな顔立ちをしているが、笑うとなかなかかわいい。
「それじゃあ、僕達はそろそろ神殿に戻りましょうか」
「おう。こっちのことは俺達に任せて、しっかり報告してこい。向こうでも色々聞かれると思うから、忙しくなると思うがな」
フランツがまとめに入ると、ジョルジュさんが挨拶してくれる。
リカード達からするとお父さんや知り合いとの再会、一緒にパーティーを組んでいた仲間との再会など、再会づくしの時間だった。
私としてもリカードのお父さんに挨拶できたことは嬉しいし、アニメの主要キャラだったはずのダイがどうなっているのかわかったのは良かった。
以上、これが村を出る前に起こった出来事である。
これで御神体を巡る騒動は一段落したと思ったのだが、神殿に戻ってから色々と確認されることになった。
数日間は街に残るように言われて待機した後に、神殿付きのセージが文献を調べて判明した結果を村にいるアコライトに伝えるよう神殿から直接依頼が下るのだった。