「よっしゃ! 後は頭を集中的に攻撃するだけだぜっ」
ダイの言う通りこれで勝利……となれば良かったのだが、巨大な獣だけあってそう簡単ではなかった。
地面に頭を叩きつけた獣は苦しそうにはしていたものの、血走った目は先程以上の殺意に満ちている。
これはなにか危険な攻撃の兆候な気がする。
「みんな! 気をつけて!」
私がみんなにそう叫んだ直後、獣が今まで以上の火力を持った炎を私達に浴びせかけた。
『うわあああぁぁぁ!』
誰のものともわからぬ悲鳴が闇夜に響き渡る。
どうなったのかを確認するために炎に包まれた周囲を確認すると、直ぐ目の前にフランツの姿が写った。
「良かった……タカヒロさんは……無事……ですね」
そう言いながら、フランツは身体から力が抜けたように私のほうに倒れ込んでくる。
「フランツっ、大丈夫かい!?」
「うっ……あっ……」
きっと誰かをカバーリングするかばうだろうフランツにプロテクションをかけたものの、かばうことで二人分のダメージを受けたフランツのダメージは深刻だった。
それに、プロテクションはフランツにしかかけられていない。
「他のみんなは……」
「おれはなんとか無事だぜ」
周囲を見渡すと、ふらふらしながらもダイが姿を現す。
ダイもプロテクションが使えるので、咄嗟に自分を守ったのだろう。
ということは……。
「レイ! リカード!」
声を掛けるが、二人からの返事はない。
「こっちだ!」
ダイが二人の姿を見つけて一緒に駆けつけると、大やけどして倒れている二人の姿があった。
「まじかよ……死んじまったんじゃ……」
ダイが縁起でもないことを言うが、私はすぐに二人に駆け寄って回復魔法をかけた。
ダイも、すぐに私に習って回復魔法をかける。
(ただの人間なら死んでいるかもしれないが、我が眷属が死ぬことはない)
頭に邪神の声が響く。
次の瞬間、身体から力が溢れ出し、回復魔法の効果が数倍に跳ね上がった感覚がした。
「うっ……」
「くっ……」
その直後、二人の口から苦しそうな小さな声が漏れる。
「二人共、生きてるぞ!」
ダイが喜びの声を上げる。
「ダイ、急いで二人をベッドに寝かせるんだ。その後、フランツもすぐに連れてきてくれ!」
私はそう言うと、レイをおぶる。
ダイもすぐにレイをおぶって、村の中へと戻った。
ボロボロになった二人をベッドに横たえ、さらに回復魔法をかけ続ける。
ダイはすぐにフランツも連れてきてベッドに横たえてくれ、フランツの傷を回復させていた。
このまま峠を越えられれば良いのだが……。