「タカヒロ、何してるの?」
声に目を覚ますと、頬を赤く染めたレイの顔があった。
そうそう、昨日はレイを抱きしめたまま寝たのだった。
「昨日、あの巨大な獣にやられたレイを回復させるために添い寝をしていたんだよ」
「回復させるために添い寝って……なんで?」
「また神の奇跡が使えるようになったんだけど、身体を密着させて全身から回復力を注ぎ込むのが一番だったんだよ」
「……ふーん」
私の説明に納得したのか納得していないのかわからないが、レイは『身体を密着』というワードにますます顔を赤らめて手で隠してしまう。
「他のみんなは……」
レイのことはとりあえずそっとしておき、部屋の様子を窺う。
疲れているのかダイもまだ眠っている。
大きなダメージを受けていたリカードとフランツのことが心配だったが、額に汗をかいて苦しそうな表情を見せながらも、ひとまず命に別状はないらしい。
私はレイの寝ていたベッドから抜け出すと、今度はリカードの寝ているベッドへと移動する。
「うっ……ううっ……」
苦しげなうめき声をあげながら眠るリカードを抱きしめると、全身びっしょりと汗をかいていた。
「ごめんね、リカード。待たせちゃったね」
声をかけながら優しく頭をなでてやる。
レイのときと同じく、全身から回復エネルギーが溢れてリカードの身体を包み込む。
「す……すごい」
レイがその状況を見て、思わず驚きの声を上げる。
とはいえ、私としてはこのままひたすらリカードを抱きしめ続けることしかできないので、早く回復することを願いながら抱きしめ続ける。
しばらくするとダイも目が覚め、レイと一緒にご飯を食べに行った。
レイは私にもパンにお肉を挟んだバーガーのようなものを持ってきてくれたので、抱きしめるのを一時中断して食事を取らせてもらう。
二人は念のために村の見回りを続け、私はリカードの目が覚めるまで抱きしめて回復を続けた。
「あれ? にーちゃん、どうしたの?」
やがて、とうとうリカードの目が覚めた。
リカードも目が覚めたら私に抱きしめられているという状況に驚いたようで顔を赤らめている。
「良かった。目が覚めたんだね」
しかし、長く眠っていたリカードが目覚めたことが嬉しくて、私は思わず抱きしめる力を強くしてしまった。
「にーちゃん、痛いよ〜」
堪らず悲鳴を上げるリカードであったが、さらに頬を赤く染めて手で隠してしまう。
「ごめん。さあ、お腹空いたでしょ。食べれそうなら、なにか食べてもっと元気になろうね」
そんなリカードの頭をついつい撫で回してしまう。
(欲のない男だな)
頭の片隅で呆れたような邪神の声が聞こえるが、レイとリカードが無事に元気になったことが嬉しくて私はスルーするのだった。