最後はフランツだ。
ダイが回復魔法をかけてくれていたので、状態的にはレイとリカードよりは軽い。
とはいえ、昨日から目を覚ましていないという状況に変わりはなく、しっかりと回復させてやる必要があるだろう。
(そうだ。自分の欲望に素直になるがいい)
頭の中で邪神のいらぬ言葉が響くが、やはりスルーしてフランツのベッドに入り込む。
「はぁ……はぁ……」
回復魔法をかけられていたとはいえ、まだ呼吸が粗くて苦しそうである。
私はしっかりと抱きしめながら、優しく頭を撫でる。
「ん……」
そうすると、少し表情が柔らかくなるような気がする。
回復エネルギーもしっかりとフランツに流れ込んでいるようなので、しばらくすれば目を覚ますだろう。
「タ……タカヒロさん……?」
日が暮れる頃にはフランツが目を覚まし、私に抱きしめられている状況に顔を赤らめる。
最近は添い寝をするようになったとはいえ、目を覚ましていきなり抱きしめられている状況というのは刺激的だったらしい。
「良かった、目を覚ましたんだね。お腹空いてない? なにか食べられそう?」
私がそう声をかけると、ぐぅ〜とフランツのお腹が鳴る。
「あっ……」
そのことで、フランツの頬がさらに赤くなる。
「私もお腹が減ったよ。一緒に食べに行こうか」
私が先にベッドから降りてフランツに手を伸ばすと、恥ずかしそうにしながらもフランツがその手を取ってくれる。
こうして、二人で食堂へと入っていった。
「フランツ! 元気になったんだね〜」
「タカヒロもお疲れ様」
「なんつーか、あれだけの大やけど、よく治せたよな」
三人が各々の言葉で声をかけてくれる。
リカードとレイは私達の分の食事を運んできてくれた。
フランツは丸一日眠っていたということもあり、スープなど消化の良いものが用意されていた。
私はフランツ達を抱きしめながらも軽食は食べていたので、リカード達と同じ肉料理を食べる。
横でスープを飲みながら、チラッと私のほうを見てくるフランツ。
「良かったら、フランツも少し食べるかい?」
「えっ? あ……ありがとうございます」
私の声掛けにフランツは驚いたような声を上げるが、少し照れながらお礼を言う。
そこで、私はフォークに肉を刺してフランツに差し出す。
「はい、あ〜ん」
「へ? 自分で食べられますよ?」
その動作にフランツは驚きの声を上げる。
「いいじゃん、食べさせてもらいなよ」
「フランツ、いいな〜」
それに対し、レイとフランツがはやし立てる。
フランツは頬を赤らめながらも、私の差し出した肉片を口の中に入れるのだった。