三人とも無事に回復し、ダイもあわせて私達五人は見回りを再開する。
私が三人を回復している間もダイは見回りを続けてくれ、先に回復したレイやリカードも見回りに合流してくれていたのだが。
「結局、あの化け物は何だったんだろ〜。炎を吐いた後、あいつも死んじゃったのかな?」
「倒せば消えるからその可能性は高いけど、特になにかアイテムを入手しているわけでもないよね」
「前脚に相当なダメージを与えたし、逃げるのも難しそうだけど」
「でも、炎を吐いた後にはもういなくなってたぜ?」
みんなで巨大な獣がどうなったのかを考える。
あの強力な炎の攻撃は死ぬ前の最後の攻撃だったと考えるのが一番合理的な気がするけど、この世界では魔物を倒すと素材が手に入るから、それがないのも確かにおかしい。
「私が逃がしたのだよ」
思案している私達の頭上から、突如声が響く。
見上げると、赤い服をまとった銀髪のエルフが宙に浮いていた。
「お前! 生きていたのか!」
「相変わらず口が悪いな、レイ」
銀髪のエルフに対して、怒りをぶつけるレイ。
フランツとリカードも驚いているようだ。
「お前はとーちゃんが倒したはずじゃ……」
「ジョルジュ如きに殺されてたまるか」
リカードの言葉に残酷な笑みを浮かべる銀髪のエルフ。
「ジョルジュさんの事も知っているのか。こいつ、何者なんだ?」
「レイの……僕の仇だ」
私と同様、状況がわからないダイが質問すると、フランツが憎々しげに答える。
「おいおい、フランツ。お前の仇ではあるが……ちゃんとレイの父親だと紹介してくれ」
「エアリアルスラッシュ!」
銀髪のエルフが放った衝撃の発言に、レイが怒りに任せて風の魔法を放つ。
だが、魔法は銀髪のエルフの前で止まり、逆に増幅されてレイに打ち返される。
(奴にホーリーライトを放て!)
「ホーリーライト!」
頭に邪神の声が響くのが先か、私が魔法を放ったのが先か……どちらにせよ、放たれた聖なる光は邪神の力で増幅し、打ち返された風魔法をかき消して銀髪のエルフへと迫る。
「小賢しい!」
だが、それもまた銀髪のエルフによってかき消されてしまった。
ジョルジュさんが倒したというくらいだから、相当の手練れなのだろう。
「小賢しいのはお前だぜ?」
「とーちゃん!」
「みんなも!」
正直全滅の危機だったのだが、そこにジョルジュさん一行が現れる。
「先に使い魔を送り込んだのが間違いだったな。村からすぐに助けを求める電信がきたぜ?」
「……忌々しい」
ジョルジュさん一行の到着に銀髪のエルフは転移の術を使ったのか、姿を消す。
一難去ってまた一難。
あの巨大な獣を使い魔にするような恐るべき敵が、次の相手のようだ。