「うっ……」
小さなうめき声をあげてダイが目を覚ます。
「良かった。やっと目が覚めたんだね」
「俺は……生きてるのか?」
「もちろん」
私の言葉に、ダイは信じられないという顔をする。
「でも、すげえ熱くて。でも、次の瞬間は何も感じられなくなって……」
ダイの身体が恐怖で震える。
あんな目に遭ったのだ、当然だろう。
私は優しくダイの身体を抱きしめる。
「……なんつーか、こうして抱きしめられるとほんとに安心できるんだな」
ダイは少し顔を赤らめながらそう言う。
同じパーティーメンバーになったとはいえ、どうしてもダイは他の三人と比べると私とは距離があった。
だけど、今回の件で距離感が縮まったのかもしれない。
「そうだ、大事なことだから早めに伝えるけれど……」
「俺も成長しなくなった……だろ?」
私が話を伝える前にダイから先に言われてしまう。
「どうして……」
「あの状況から助かった以上は神の奇跡しかありえないだろうし……」
私の言葉にダイはそう答え、抱きしめていた私を抱きしめ返してくる。
「なんとなくだけど、あんたとのつながりを感じる」
「そうなのか……眷属になったからかな……」
ダイが抱きしめ返してくるとは思わず、思わず私もドキドキしてしまう。
「ちょっと変な感覚だけど、リカード達があんたのことにベタベタしてる気持ちが少しわかったかも。ちょっと恥ずかしいけど、チビに戻った気分だな」
「チビ? こどもに?」
「ああ。ちっちえガキが親に感じる感覚ってやつに近いんだと思うぜ」
なるほど、フランツ達の反応は恋愛感情というよりは親に抱く愛着みたいなものだったのか。
残念な気もするが、年の差を考えると当然かもしれない。
「じゃあ、これからはいっぱい甘えていいよ」
ダイの頭を撫でながらそう伝える。
「ちょっと! 元気になったのは良かったけど、にーちゃんを独り占めしたらダメだぞ!」
相変わらずノックなしに突然現れたリカードがプンプンしながら側にやってくる。
「今はダイのことを一番に考えてあげていいけど、おいら達のことも忘れないでね」
リカードの殊勝な言葉に、思わず手を伸ばして頭を撫でてしまう。
「もちろん、リカード達のことも大切にするよ。親に抱く愛着だってことなら、私は四人のこども達のお父さんだからね」
そのまま、リカードの頭を引き寄せて抱きしめる。
「今はおれが優先じゃねーの?」
横でダイが少し不満げにそう言う。
兄弟が多い家庭のお父さんは大変なんだなあ。
だけど、なんて幸せな苦労なんだと思ってしまうのだった。