「なあ、とりあえず神像を守るという依頼は完了したけど、次はどうするつもりなんだ?」
「うーん、まだ特に決めてないかな」
「だったら、あやかしの国に行ってみないか?」
「あやかしの国?」
その名前に興味が湧く。
ダイは猫又族なわけだけど他に鬼族と天狗族がいて、その三種族をまとめてあやかし族と呼んでいた。
そのあやかし族がたくさん住んでいる、昔ながらの日本っぽい国があやかしの国だったはずだ。
「おれの知り合いが旅館をやってるから、そこに泊まればあいつらともさらに仲良くなれるんじゃねえか?」
「そうだね……湯けむり温泉旅行、ポロリもあるよって感じかな」
「ポロリ?」
思わず私が漏らした言葉を台が反芻する。
そこを反芻しないでほしい。
「まあ、フランツ達にも聞いてみて、みんなが乗り気なら行ってみようか」
「おう、そうしようぜ」
ダイはそう言うと、一足先にベッドから飛び降りる。
裸足のままかけていく姿はヤンキー系だけど、ちびっこ感もあってかわいい。
「あやかしの国……ですか。見聞が広がりそうですね」
「ゆっくり休めるのも嬉しいね」
「おっきいお風呂。泳げるかな?」
あやかしの国に対する三人の反応は様々だったが、概ね賛成ではあるらしい。
私としても、和室の旅館なら全員の裸足をずっと眺められるし、温泉でみんなの裸が見られるのも嬉しい。
正直、自分の裸を見られるのは嫌なんだけど、こちらの世界に来てからはなんとなく引き締まってきたような気もする。
これなら見られても大丈夫……だと思う。
「じゃあ、神殿で色々報告して祝福を受けたらあやかしの国に行ってみようか」
『賛成〜』
四人の声が唱和し、次の目的地が決定する。
改めて四人に顔をしっかりと確認する。
いつも真面目なフランツは、ほんの少しという感じだけど素直な面も見せるようになってきてくれた気がする。
もっともっと甘えてほしいけれど、素直に甘えられないところが魅力的とも言える気がする。
お父さんにもなりたいし、また違う関係にもなりたい。
ツンデレエルフだと思っていたレイは、そこまでツンツンしなくなった。
というかリカードとはむしろ良いコンビで、厳しいツッコミも愛情表現なのだろう。
かなり重い背景を持っている子だけど、しっかりと癒やしてあげたいものだ。
純粋無垢なリカードはそれほど印象は変わっていないけれど、純粋ゆえに実は性的な部分も進んでいるような気もする。
というか、ストレートに愛情を表現してくるという感じか。
私自身が奥手なので、この子の積極的なところは助かるし困るというのが正直なところだ。
ダイは途中からの参加ということもあって、三人とは少し毛色が違う。
でも、ヤンキー特有の人に甘えられないところや、実は素直なところのギャップはかわいい。
あやかしの国に行くことを提案してくれたのも私達の親睦を深めようとしてくれているみたいだし、もしかしたら恋の相談をダイにする日が来るのかもしれない。
こうして、私の少年達との冒険はまだまだ続く。
とはいえ、大きな戦いが終わったことも事実。
あやかしの国でも色々なことが起こるのだろうけれど、彼らと一緒ならきっと乗り越えられるだろう。