「今日はこども達にチョコレートを配ってくれるかな?」
「チョコ……ですか?」
「なんでチョコなの?」
「おいらもチョコ食べたーい」
「なんでお前が食うんだよっ」
私の提案に思い思いの返事が返ってくる。
まあ、当然の反応かもしれない。
「私の住んでいた世界では、今日はチョコレートを渡す日なんだよ。まあ、女の子が男の子に渡す日なんだけど」
「それなら、僕らは貰う側じゃ……」
「まあ、貰ってあげてもいいよ」
「うん、君達にももちろんあげるけれど、まずはこども達に配ってきてね」
「おいらにもくれるんだ。じゃあ、先に配ってくる~」
「チョコレートくらいでこき使うなよな」
「いつもすまないねえ……。でも、君達のおかげでこども達はいつも喜んでるからさ」
なんだかんだ言いながら、いつも孤児院のこども達のために頑張ってくれている四人。
これが終わったらきちんとおいしいチョコレートを用意してあげないと。
「疲れました……」
「なんで女の子ってあんなに元気なのさ……」
「男の子も元気だったよ……」
「毎回、人の上に登りやがって……」
チョコレートを配り終えた四人がぐったりとして帰ってくる。
もみくちゃにされたんだろうなと想像がつく。
さあ、今度は私が彼らにチョコレートをプレゼントする番だ。
「お疲れさま、みんな。おいしいかわからないけれど、がんばって手作りチョコを作ってみたから食べてくれるかな?」
「タカヒロさんの手作り!?」
「あんた……そんなの作れるんだ……」
「わーい、にーちゃんの手作り~」
「まあ、見た目は微妙だけど味は変わんねえだろ」
各々反応は違うものの、渡したチョコレートを食べてくれる。
「美味しいです!」
「悪くないね」
「おいしー」
「まあまあだな」
これまた反応は様々なれど、ちゃんと感想を言ってくれる四人。
『我から貴様にもくれてやろう』
邪神改め英雄神が私の口を借りてそう言う。
次の瞬間、少年達の身体が宙に浮くとベッドへと飛ばされる。
そして、来ていた服がチョコレートへと変わった。
「なっ! どういうことだ!?」
「ふざけないでよね!」
「うーん、甘いけどベタベタ~」
「神だからってなんでもありかよ!」
『さあ、貴様もチョコレートを食すがいい』
「いやいや、いくら何でもフランツ達の身体についたチョコを食べるとか無理だから!」
バレンタインにチョコまみれの少年達の身体を舐めるとか、いくら異世界だからってアウトすぎる。
『なんだ、つまらぬ。貴様はもう少し欲望に忠実にならないと人生楽しめんぞ?』
「この子達に嫌われたら人生真っ暗なんで!」
「いえ、嫌ったりしません!」
「それはそうだね」
「にーちゃん、大丈夫だよ~」
「……まあ、命の恩人だしな」
私の言葉に、少年達は妙な反応を返してくる。
いや、君達が良くてもダメだからね?
現代日本だったら、おじさん捕まるからね?
異世界とはいえ、そう簡単に倫理観が崩れることはなく、結局私が彼らの身体を舐めるなんてことはないのだった。