「フ~ン……あ、ボタンとかある……どうやって使うのかな?」
「まず一本に合体させて短棒や更に6尺棒、それ以上の長さにだって出来るんだ。更に超金属製で絶対に折れたりしない」
「絶対折れない……」
「ロッドから出てる超ワイヤーは魔力のある者が使えば好きな長さに伸縮出来るから振り出して弾丸の様に撃ったあと引き戻す事も出来る。ヨーヨーで戦う様にね」
「ほ一」
「そんでそのボタンは
「へーどうしてそんなのが?」
「例えば普通のムチ。達人にもなると先端速度が音速を超える程になる。だからあんなにヤワなのに武器になるんだ。
それだけに勇者のムチときたら光速並みに超絶的に速過ぎてもう何でもキレイにスパッと分断しちまう。
けどそれじゃ魔法治癒されやすく都合が悪い。そこで速く振る程に超振動するメカニズムのかぎ爪をつけて相手をバラせるようにしたんだって」
そして一瞬、マスターの眼光が鋭くなり、敢えて声のトーンを下げてまことしやかに呟いた。
「―――今も語り継がれる伝説、このリーサルクロウを使った勇者のわずか一振りで、上クラスの魔獣千匹を瞬時にバラバラにした―――そう伝えられている」
なっ……、と逸話に驚嘆するルナ。
一振りで上モノ千匹……と
「で、他にも投げて闘ったりしたらしくてこんなにあるのさ。それも掻き集めて持ち帰ったホンの一部。これじゃプレミア感すら無い」
それは勿体無い、チョイお試し、等と呟いて軽く回すと、
ビシュシュシュ……ブオヮ―――――ッッッ!
猛烈な乱気流でマスターのヅラと服はハダケ散り、ワンショルダービキニパンツを手で隠し
『ヤメテ~ッ!』
「ちょちょ、ルナちゃんっ! 試すならここはダメ~ッ! その性能全部をキミが引き出せなくても
「エヘヘ~、残念……ってカゲキなパンツ!……ん? こっちのやたら沢山ある玉は?」
「ああ、魔法カプセルね。これに治癒魔法等を詰めて体力回復ポーションとか、傷口直しなど自他共に使える。そうやって各種の魔法の保存、配布など有用この上ないんだ」
「ボク、最大級治癒魔法を貰ったらしいよ! なら体力あればいっぱい放出出来るからカプセルあるだけ詰め込めるね。ここにある分全部に詰めてあげマスよ。
えいっ……」
掌から大量の光を放出、積み上がった全カプセルに瞬時に充填され、その魔威の輝きで満たされた。
直後、マスターの目玉が飛び出てアゴが外れそうな顔で絶叫した。
「ぬおおお――――っ、なんとっ価値激増じゃん! こりゃメッチャ高く売れるよっ! あと4、5軒は家が建てられるぅっ! もうこのヌンチャク全部タダであげるよっ!」
「え―っ! いいんですかぁ~~!、ってか早くその下着を隠して下さいっ」
「ん、ゴメン! あ……そのヌンチャクで思い出した。
その勇者、最強部族の王に再起不能級の深手を負わされてもなお討伐したんだが、残党がまだ徘徊してるらしい。
遭遇して仲間を殺られた連中の噂を聞くから君達も気をつけて! その絶対強者に」
「絶対強者……」
「……それは
レイが反応し、俺もその噂を聞いたこと有る、雑魚は相手にしないらしい……と呟く。
「おっと、お礼。ヌンチャク全部タダでも足りなさ過ぎだ! そう、これから色んな所で戦うならコスチュームを最高級特殊素材のフリーオーダーでぜ~んぶ揃えてあげるよ」
それを聞いた『親切お兄さん』のレイは思わず、
「ならデザインは任せてよ、普段はデザイナーを兼業してて。服専門じゃないけどね」
「レイ兄さん、それはやってあげすぎじゃ……」
と不満げに袖を掴むメイ。だがルナは
「ウレシ~ッ! ぜひお願いしますっ! ボク空手意外めっぽう要領悪くて……」
不器用かつ、ずっと兄の庇護の下にいた頼り癖が発動。そこへ無理して作った元気女子が不自然なキャラを形成している。
「あ、ここにあるヌンチャクを一杯持ち歩けるデザインでオネガイしま~すっ!!」
だがそれ故、お節介親切お兄さんなレイに対してのそれは、むしろ甘え上手とも言える良い関係になっていた。
* *
BROS兄・レイからルナへと連絡が入った。
それは隣国『フィロス』への侵攻の情報だった。
国境戦で共に政府から表彰されたルナを早くも仲間として扱ってくれるレイ。
戦闘経験は実力向上に良いとの勧めで同行する事に。早速気に入った新調コスチュームを
「仮縫いでの追加要望で遂にヌンチャク10個以上も装着……本当それでいいの?」
「ハイ~! 背、腰、もも、下肢、体中に在って最高デス! ありがとうございましたっ!」
「よっぽど好きなんだね。でも結構似合ってるよ。その姿で頑張って行こう! とにかく俺らはどんどん経験値や徳を重ねて強くならないと。いずれ理由は分かるだろうけど……」