「うわっ、脳内でダイレクトに顔見れた! 持つべきはサイキック上級者! 便利過ぎ~」
「ホメるの早いよ。もう下級のヤツら、相討ちと錯乱して逃げ初めてる。どう? 私の実力」
「スゴイよ、ルカ!」
「フフン……行っていいよ、ここからはテレパスで交信ね」
ルカのお陰で思う存分闘いに集中出来る。直ちに突撃するルナ。
ヒュンッ――――ドゴォォォン
魔導師の腹に拳を軽~く一発。
死にそうに歪む顔。腹を抱えてムセ込み
「ゲホッ……きっ、貴様どこから……」
と尻込みして警戒する。
「ほ~、この百倍速攻撃を魔法バリアーでダメージ減らしたかぁ、お前、やるな」
「魔法結界を張ってたはず……どうやって突破を?!」
「物理が10万以上で、このところサイキック9万を相手にスパーリングしてたからそんな結界全っ然ものともしなかった! 実力差あり過ぎると何やってもダメみたいね」
「
〈
ブフォア――――ッ
一瞬にして部屋の端まで全て黒焦げ。そこかしこに火種が燻る。だが余裕で回避のルナ。
「おっそ……火力は凄いけど、ボクにはそれ、止まって見えるんだよ。じゃ、バイバイ」
ズンッ……
気付くと既に腹へひざ蹴りがめり込む。背骨ごと砕かれ呆気なく崩れ落ちる魔導師。
《ルカ……このテレパス、聞こえる? ……終わったよ》
《うん。もうこっちは救出に来てる。場所はココでみんな無事。帰るよ》
***
「皆さ~ん! 無事全員連れて帰りましたぁ!」
胸を張って家族達へと高らかに報告。
パパ、ママ!……欠ける者なくズラリと揃った拐われた子達。
あまりの解決の早さに開いた口も塞がらず、歓喜と驚嘆を混じえた面々は上気し切って涙が浮かぶ。
「是非何かお礼を……」
と手を握りしめられる。聞きつけた町民で次第に人集りとなる集会場。
「もうたくさん使っちゃったじゃないですか……ボクら、全然労力使ってないので必要有りません……ねえルカ、そうでしょ」
うんっ! と燦めく愛くるしい笑みで胸を張るルカ。不思議と無償の方が気分が良いものだ。
でもお二人にはせめて何か……と後ろの全ての父兄達も笑顔で深々と頷く。
「なら美味しいものを皆さんと楽しく、それが最大のご褒美です!……ね、ルナ」
「ハイ! ソレ、お願いしま~す! ボクら、暖かい団欒を知らずに育ったので」
「え、団欒を知らないと?! それなら私らの得意分野さね! なあ、では皆で宴を!」
『オォ――ッ』
鬨の声が響くと一斉に饗宴準備を開始。腕によりをかけ、ありったけの愛情となけなしの金と魔法とサイを込めて作り始める。
*
親子で歌や踊りを披露する中、見事な連携で次々と供される温かい手作りの数々は、贅沢して来なかった二人にとってひと際格別のもてなしに思えた。
あちこちから沸き起こる笑い声。
助けた子の一人の妹がちょこんと隣に来て人懐こく一緒に食べている。
「みんな良いお父さんお母さんを持って良かったね!」
と声をかけるルナ。
「うん! ホントにありがと、お姉ちゃんたち! あのね、子供を連れてかれてアジ卜に乗り込んで殺されちゃう親はたくさんいるの」
「そっか。だからここの人達は皆でお金だして戦える人を探してたんだ。ボクらの親だったらどうだっただろうね……
それにしても自前で募集してたから騙されてヤバかったね……本物の戦士だけ雇えるようなギルドみたいなのって無いのかな?」
『隣国には有りますがこの小国では……』と、ある親が残念そうに漏らす。
「安心して頼める様にしたいですよね」
と返すルカの横で余りにトロけるシチュー肉に目を丸くするルナ。
宴は盛り上がり笑い声が一段と大きくなる。それが嬉しくて仕方ない二人。
「フフッ、みんな楽しそ。ボクこんなの初めて。こんな平和がずっと続いたらいいね」
この中にサイの才能のある子でもいれば緊急時にテレパスで呼んでくれれば……と呟いたルカの一言にピンときたルナ。
頬張る口を手で隠し、指を立て目を大きく見開いて、
「あ、なら
それグッドアイデア! と声を弾ませ、ルカも人差し指を立ててルナに顔を合わせた。
「でも口コミだけじゃな……なんか特典が有ればね……そう、例えば『友達紹介登録』しとくと、拐われて怖い思いしたその子に私達が救助した暁に政府から貰える補助金の半分をお見舞金として渡すとか。そしたら友達の為にみんな登録してあげるんじゃない?」
「それイイ! なら登録された子にも『あなたも大切な友達の為に登録してあげませんか』って送ると更に増えて……ボクならそうしてあげると思う! いい事の連鎖!
ねえ、これからは忙しくなりそうだね! 沢山救って徳を上げてガンガン強くならないと!」
こうして本日の無償の行為により徳の倍率が顕著に上がるルナ達であった。