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第43話 やっぱり私は信じてついていくよ……





 ―――うなぎ登りの功績と実力。


 破竹の勢いの救助活動。既にタブレットの依頼を数百とこなしていた。


 この日は当初のアジト地図攻略。それもいよいよラスト。そこは言わば残党の巣窟だった。寝返った人間の軍、現代兵器部隊……百人ほど。


「酷いなあ、こんな裏切り……全員吊るし首でしょ、こんなの……」


 静かな怒りとともに堂々と踏み込むルナ。


「魔の瘴気に取り込まれて仕方ないんだよ。私達が正気に戻してあげないと……」



『ヤベェ、例のが来たぞっ!』


 そこでは既に有名人となり、極度に恐れられていた。




 ドドドドドガガガガガドドババババババババゴゴゴゴゴゴドドドドドドドドドドドドドガガガガガガガドシュンドシュンドシュン、ガガガガガブフォアアアアアアアアア――――――――ッ




 ジャミングマシンと機関銃、更にランチャー砲、火炎放射器等を百人程で一斉大乱射


 だが万倍物理フィジカル耐性で備えるルナ、そしてサイキックバリアのルカ。二人は全く避けようともせず敢えて攻撃を受けるもダメージゼロ。



「ヒイィ……バケモンだ……」



 力の使い方に習熟して来た余裕の二人に為す術もなく全隊逃げ出す始末。

 結果はルカのサイの覇気一喝だけで全員昏倒しアッサリ楽勝。だが。




 ピシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ……




 突如、亜空間から転移を一斉に繰り返して数百体もの小型邪妖精の強襲が。

 超音速での一斉魔槍攻撃にメッタ切りされる。

 あまりの数と速さ――――ルカの予知力と千倍速合気術でさえ間に合わない。


 あわやの所、慌てて万倍速で盾となるルナ。


《数が多過ぎて転移が捉えきれない! しかも魔力も合わせて威力も超増幅してる、ヤバイ! でも二度とルカをあんな目に合わせない!》


 秒で数万の突き蹴りで叩き落とすも、後方組による全方位からの魔弓の雨からルカを守ろうと身を挺してガード、無数に射られ針のむしろに。



「はぐうっっ!」



 それでも決死のヌンチャクで弾いて劣勢を凌ぐルナ。


「ぬおああああ! 負けるかぁ――――――っ!!」


 リーサル鉤爪クロウを無茶振りして薙ぎ払う。

 遂にルカを守り切って、安堵と共にバッタリ倒れ込む。


 昏倒のルナから無数の矢を抜き、治癒カプセルで介抱し終わると愛おしく抱きしめるルカ。


 ―――ルナ、ありがとう……私、守れなくてゴメン。キミを守る為にこの世界まで追って来たと言うのに……



 悔し涙をルナの頬に落として溜め息をついた。



 はぁ……。キミの事、時々分からなくなるけど、結局は大切にしてくれるんだね……色々あるけど、やっぱり私は信じてついていくよ……




  * 




 そうして女子30数名を救出。


「遠方だと連れて帰るの大変、運転手雇わないと」


「うん……それにしてもこんな女の子ばっかり誘拐って……地下世界の目的って何?……」



 数日後。



 評判が過ぎるのも困りもので、遂に[取り返し隊]のニセ者事件まで発生、本物の周知を、との事で行政の防災課主催の安全対策教室にメインゲストで呼ばれた。

 本物の顔見せ、そしてタブレット連絡網の推進、オマケにサイン会など、芸能人の様な待遇で大盛況となった。


 特にルカの誘拐対策、合気の技による『護身術ワンポイントレッスン』は親御達も身を乗りだし人集ひとだかりに。


 当日はルナもサイン会を意識してひと房だけ三ッ編みにして、リップもグロスに。装いもお出かけコーデで可愛くキメてアピール。

 もうノリノリのヒロイン気取りだった。



「あの~、女の子なのにどうしてそんなに強くてカッコ良いんですか?……」


 ん! カワユイ子! そして憧れの眼差し!……しかも女子として! なら男子になれなくてもカッコ良ければモテる ?! よし、だったら!

 ……ムフフ…… これは利用しない手は無い、 今度こそ! とデへ顔を隠しつつ急いで髪を解き、幾らかハーフアップ気味に後ろで束ね、サイドはウルフっぽく落とす。



 更に一枚脱いで襟を立ててワイルド路線に変更。そしてイケボを装いながら、



「うん、鍛え方が有るんだよ。良かったら今度一緒にやって見ようか、手とり足取り教えてあげるね……じゅる……ゴクッ」



 またか! 一体どうして? いつも私の着換えとかヨダレたらしてノゾくクセに!

 今朝だってヘアメイク中に『今度こそ押し倒す』とか思ってたクセに!  なんで他の子をっ!



「それでね、突きとかはこう、蹴りはこんなカンジで~……」



 睨みながらそのルナの様子の変化に気付くルカ。顔が妙に凛々しく胸も平ら。


 そう、ルナは男のジェンダーになると僅かだがハンサム系、そしてより筋肉質に変化するのだ。ウットリと目に星を湛える女の子。ルナに釘付けだった。


 ……ル、ルナちゃん、カ、カッコ良い!


「スゴ~イ、ね、ルナちゃん、ちょっと触ってもいい? うわぁ、筋肉スッゴイ固いね。まるで男の子みた~い。あれ、最初見たときよりムネとか無くない?」


 何気にルナの襟元を引っ張り中を覗く女子。中身に驚き飛び退く。


「なっ!……このコ女装?!」

「えっ、ウソっ、そんなハズ……」


 今度は女子として好かれたことで男子になってしまうルナ。


「あの~、助けてくれたのは感謝するけど……キモい……サヨナラッ!」


「あ、待って~!……って行っちゃった。でも何でムネが無くな……って、あれ?  ボクの足の付け根に何かが存在して……何か主張までしてる……ってまさか……」


「ル~ナ君っ! 今日もカッコイイね、だし!


 クスッ。良かったね~、今日は! 」


 人前のため、しゃがみ込んで動けなくなるルナ。

 真っ赤になって頭を抱え込み、


「ヒ~ッ、ルカ助けて~! これなに~、ど~したらいいの―――っ?!」


 立ち上がれぬルナへ『知らん! ほっとけば落ち着く!』

 とおざなりに切り捨る。



「あ~ん、でもやっぱ逆ジェンダーになっちゃうんだぁ~!


 神官のバカ~! ど―してくれるんだぁ――――っ!」









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