「やれやれ、ほんとだとは思いたくないけど、ホントとしか思えない」
石田刑事は頭をかいた。
「防犯カメラを調べたら、その超小型巡航ミサイルを発射したらしき男が判明した。ただし姓名は不明」
「不明? なんですそれ」
佐々木が聞く。
「このところ、とあるならず者国家がこのところ西側各国の国内に勝手に拠点を作り、気に入らない反体制派をよその国の中で追い立てて捕まえたり暗殺したりしていることは各国で察知され、本邦でもそれとおぼしき施設が公安と公安外事の監視を受けている。その男の足取りは本邦のその施設まで続いて消えている」
「その組織が本邦の現職大臣を襲ったんですか!?」
「ああ。宣戦布告と同等の重大な主権侵害だ」
「そうですよね」
「ところが、そこで捜査にストップが『上』からかかった」
「えええっ」
「相手は主権国家、それも国際社会にいくつかの国と勢力を持つ国だ。本気で告発したら戦争になりかねない」
「そんな。こんなの戦争じゃないですかすでに」
「全くそうなんだが、上はそうは思ってはいないらしい」
「信じられない……それじゃ負傷した警護官、たまんないですよ」
「ホントそうだ。だが主権国家を罰する国際機関はまだない。こっちは追い詰めても最後に外務省が非難声明を出すのがやっとだし、それすらも向こうから否定されてしまう。所詮言葉だからな。それでも罰するとしたら、経済制裁と武力行使、戦争しかないが、経済制裁はすでにやってるけど抜け穴だらけで彼の国には痛くもかゆくもない。それどころか彼の国は元首直属の組織がハッキングで暗号資産を盗みとったりしてる。スウェーデンの捜査機関がそれを告発したが、だからってどうということはない。そのハッキング組織は今もやりたい放題だし、さらにはならず者国家同士で連携すらしている。そんな国でも国際社会だと一人前の主権国家でいろんな国際組織の理事国までやってるからな」
石田は溜息をついて、続けた。
「それどころか、本邦は戦争をしない平和国家ってことになってる。彼らにとっては絶対報復されない美味しい国なんだろう。自衛すら出来てないけどそれが本邦の現実だ。だから邦人が拉致されても奪還もロクに出来ない。せめてその国からの不審な人物の入国を制限したくても、入管法を形骸化させようとしてるバカどもがどっさりいる。入管の連中もこの前ひどく雑なことしたが、それにつけこまれて『多民族共生』なんて旗印作って不法滞在を合法化しちまおうとする奴まででてくる始末」
「まあ、そうなりますよね」
橘がそういう。警察署の中で普通にシレッとしてさらに刑事たちの話に加わってきたりと、そのメンタリティは理解不能だ、と佐々木は思った。
「だから俺、自衛隊辞めたんです。自衛隊時代、演習のたびに不審な外国人が演習場の端ギリギリで、傍受装置みたいなもの山盛りにしてた。偵察してておかしいって思ったけど周りはいつも『黙ってろ』だった。それだけでも嫌なだったのに、セクハラパワハラいじめが流行りだした。我慢してたけど、女性隊員を組み伏せた馬鹿がいたんで、何やってんだってぶん殴ったらその馬鹿と俺が両成敗の処分。フザケンナと思って自衛隊辞めました。いろんな尊敬する人もいっぱいいた自衛隊だけど、そういう屑もいる。人数いるから仕方ないのかと思ったけどそれだけじゃない。時間が過ぎると先輩たちの築いてきた信頼を食い潰すバカがどうやってもでてくる。組織ってそういうもの。くだらねえ、と思って辞めました」
「でも橘さん、だからといって我々の捜査を混乱させるのは」
「同じことでしょ?」
それを聞いて、刑事たちのあごがかっくんと落ちた。
「捜査、結局停められちゃったでしょ。俺が出てこようが来まいが同じことです」
「だからって」
「他に理由はあるんですけどね」
「え」
「それはまだ言えないけど」
橘はそう言うと、ペロッと舌を出した。
「なんですかそれ」
だが、石田刑事はなにかを考えているようだ。
「石田さん?」
佐々木が聞く。
「橘さん、おまえさんのやりたいことはなんとなくわかった」
「本当ですか?」
佐々木は驚く。
「まあな」
石田はコーヒーを取った。
「今回、相手がやたらデカイ。なにしろ主権国家だ。普通の話だったら国家を相手に捜査するなんて手に余るし忖度した方が利口だから、それを背景にだけとどめて、事件本体は個人的な恨み辛みの話にして逃げるのがセオリーだ。だが今回はその『逃げ』はなさそうだ」
みんな、彼の口元に注目した。
「だから余計燃えるんだよね。俺の残りの刑事人生賭けてもいいと思うぐらいに」
★★★
ここで追記。
ええと、ここで著者から一言。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
なかなか続きがタイムリーに書けそうになくてすまないことです。これから仕事そのほかで多忙になります。場合によってはここから3ヶ月ほど休載することになるかも知れません。すまない…。
でも、ここまでお読みの皆さんにコッソリお話ししますが、書き手ってのは基本、褒めたり応援したり★入れたりブクマしたりといったリアクションしていただけると、なんだって出来るものなんです。極端な話、空だって飛べると思ってます。だから時間が足りなくても、一日を24時間ではなく30時間にすることだって、応援が頂ければ出来るんです。
と言うかしますよ今回私は。応援してくれれば血反吐吐いてでも、これの楽しい続きを書きますよ。ここまで全然応援とかなくても書いてきたんです。それがほぼはじめてまともにpv伸びたりランク入りしてるんですから。ここでやらなきゃいつやるんだ、です。マジで。
だから応援のリアクションください…ほんと。私に魔法を使わせてください…!お願いします!皆さんのリアクションがワタクシのマジックポイントになるんです!ホントに。
よろしくお願いします!