「皆さまこんいお~!剣呑寺いおりです!
今日は深層で仙桃をもぎに来た!です。
一緒に探索してくれる、素敵なゲストさんがいます!」
「ちょこっとイタズラしちゃうゾ☆?
獄寺ちょこよ。自分のチャンネルがないから、今日は遊びに来てあげたわ。」
:もはや定番のパートナーになってて草
:ちょこのチャンネルもう無理だろ
:もうバディでいんじゃね
:素直じゃないのワロス
コメント欄は獄寺ちょこが参加することに概ね好意的のようだ。同年代の女の子同士で仲良くしているところ。元々迷惑をかけに来た相手を受け入れている、美織の天然さ。またいつまで経っても素直じゃない、獄寺ちょこのツンデレぶりが受けているようである。
「これから定期的に獄寺さんとコラボ?になるんですかね?一緒に探索していけたらなって思うんですけど、今日は探索の前に、ユニット名決めませんか?って思ってます。」
「ユニット名?あたしたちに名前をつけようってこと?ちなみに何よ?」
獄寺ちょこがソワソワしだす。
「はい!うちのお母さんのアイデアなんですけど、2人とも名前に寺が入っているので、“寺院ズ”ってどうかなって。響きがジーンズみたいで語呂がいいなって思ってます。」
:寺院ズ、了解
:悪くないんじゃね
:確かに語呂はいい
:ママン発案www
「ま、まあ?あんたがそれでいいなら、別にあたしは構わないけど?ユニット名つけるなんて、この先ずっと一緒みたいな?あたしと一緒にいたいのはわかるけどね?」
獄寺ちょこが、ぷい、と腕組みしながら頬を染めて、そっぽを向いた。
「喜んでくれて良かったです。」
「べ、別に喜んでないわよ!」
:喜んでる喜んでるwww
:素直じゃないwww
:イチャこいておる
:栄養mgmg
「それでは!寺院ズで深層で仙桃をもぎに来た!始まりますよ~。」
美織は画面に向けて笑顔で手を振った。
画面の背景がデフォルトから切り替わる。
:うお、ガチで針の山だ
:スカイフィッシュがうようよ空を泳いどる
:山頂にあるのが仙桃のなってる木か?
:あんなとこどうやって行くんだよ?
「はい!御覧いただいた通り、見渡す限り針の山ですね!スカイフィッシュが攻撃してくるので、それを撃ち落としながら、足の裏を硬化させて針の上を渡っていきます。」
:うえ!?
:人間気軽に身体強化とか出来んのよ
:針の上を歩くんか?
:いおりんはともかく、獄寺ちょこはそれ出来るんか?
「失礼ね!深層なんて何度も配信で潜ってるわよ!針の山を登るくらい、大したことじゃないわ。」
迷惑配信で何度かこの場所にも来たことのあるちょこがプンスカ頬をふくらませる。
スカイフィッシュを倒すことこそ得意ではいが、身体強化ならちょこも自身も可能だ。
そうでなければ上澄みの探索者相手に、迷惑配信なんて出来ないのである。あまり褒められたことではないが。
「はい、獄寺さんも針の山は問題ないということで、お誘いさせていただきました。
獄寺さんは姿を隠して山頂まで近付けますし、そのまま仙桃がもげるそうです。」
「仙桃はスカイフィッシュの好物なのよね!口にくわえているところを叩き落として、それを拾って何個か食べたら、身体強化が出来るようになったの!」
と、獄寺ちょこがドヤる。
「ちょこさんはそうやって身体強化を覚えたんですね。私はローリングアルマジロの攻撃を受けているうちに覚えました。そんなやり方もあったんですね……。」
「は!?マジで言ってる!?ローリングアルマジロ!?それの攻撃を受けたの!?」
獄寺ちょこが驚愕している。
:ローリングアルマジロって何?
:ローリングアルマジロ、帯状の甲羅を持つ回転して移動する、別名ジェット戦車。戦車の装甲がジェット機のスピードで突撃してくる。おまけに火をはく。たいていのものは一撃で潰される。スピードが乗るとミノタウロスですら潰される。
:マ!?
:下層の魔物を倒す魔物ってさあ……
:横浜ダンジョンの深層にいるやつじゃん
:やっぱり定期的に深層にもぐってたな主
コメント欄も大混乱である。
「……待って。それどころじゃないわ。」
獄寺ちょこが驚愕した表情を浮かべる。
:なんだ、どうした
:それ以上に大変なことが起きたか?
:画面上は何もかわらないが?
「あんた今、あたしのこと、ちょこって呼んだわよね……?」
「え?あ、はい。駄目でしたか……?」
しょんぼりして眉を下げる美織。
「べ、別に駄目とか言ってないじゃない!ま、まあ?あんたがそのつもりなら?あたしもいおりって呼んであげてもいいけど?」
「ほんとですか!?嬉しいです!」
美織は両手のひらを合わせて微笑んだ。
獄寺ちょこが照れたようにそっぽを向く。
:草
:草
:ローリングアルマジロのことより、名前呼びのほうが重大なの草
:既にデレてるのに、認めないの草
:ほっこり
コメント欄は寺院ズのイチャイチャっぷりに、ここが深層であるということを、すっかり忘れた空気になっていた。
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