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第30話 深淵探索者にも出来ないこと

 ニョロリと出て来たアースモライは、地面の上に落ちて、ビクンビクンとのたうち回っている。その様子はまるで虫のようで、見る人が見れば気味が悪い光景だった。


「アースモライって、目が退化していて、音だけで対象を感じて動くんですけど、このダンジョンはさっき叩いた場所が1番、ダンジョンの壁や床の中に音を響かせるんですよね。壁を叩いたあとで床を叩くと、それが全体に広まって、このあたりに潜んでいるアースモライが、一気に出て来るわけです!」


:目が見えないのは知ってるけど、ダンジョンの壁の中に音を反響させるってなんだよ!

:やりたくても普通出来ねえわ!

:てか、ニョルッと出てきたのがキショイ

:毛穴から角質出る動画徘徊してる俺的にはリピートで見たい光景


 アースモライの出し方が、コメント欄でかなりの賛否両論を巻き起こしている。

 確かに美織も、ちょっと絵面が気持ち悪いかな?と思っていたので、先に説明していなかったことを思わず反省した。


「先に説明してなくてごめんなさい。気持ち悪いと感じられる方もいらっしゃいましたね。失礼しました。次から気を付けます。」

 と深々とお辞儀をする。


:ええんやで

:刺さってる奴には刺さってるみたいだしな

:それで、一気に出してどうするん?


「はい、今のうちに、ジェリーバルーン狩りの邪魔をされないように、一気に倒したいと思います!ちょこさん、壁の端っこに寄っていただけますか?」


「え?あ、うん、うん。いいけどさ。」

 獄寺ちょこが壁の端に寄ったのを見て、美織がニッコリすると、

「床をぶち抜きますね!」

 と宣言した。


:は?

:ダンジョンの床をぶち抜く?

:待って

:ちょっと何言ってるかわからないですね

:ダンジョンの壁は、ジェリーバルーンの爆発でも傷がつかないくらい硬いんだぞ!?


「問題ないです!いきます!」

 そう言って、床の中央に立ち、剣先を床に斜めに突き立てて、ぐるりと一周した。


 そして地面を蹴って壁側に飛び退くと、たったそれだけの衝撃で、アースモライごと床が下に落ちていく。カメラはぶち抜かれた先に下層があることを映していた。


「は!?ちょ、あんた何してんの!?え?床がない!?マジで!?」

 壁に手をついて怯える獄寺ちょこ。


「これで下層の魔物にアースモライが食べられちゃいますから、一気に討伐完了です!アースモライはこの下の階層にいる、ストロングスパイダーの大好物なんですよね!」


:マジでやりやがった!

:アースモライRTAはこうするのか……

:いや、やりたくても出来ねえわ!

:うわあ……床に穴が開いてるよ

:深淵に潜れる探索者でも、床や壁に傷つけられる奴なんて見たことないぞ!?

:爆岩石以外で、ダンジョンの壁に傷つけられる奴なんているのか……?


 目の前の状況が信じられず、コメントが騒然としている。海外勢も集まってきて、何が起きたのかとの質問に、リスナーが英語で回答し、ますます混乱させる場面があった。


「ちなみにダンジョンは1日経てばもとに戻りますので、こうして穴を開けても問題ないです!念の為人が歩ける幅を壁際に残しましたので、下層に行きたい人も安全ですね!」


 確かに人が歩けるだけの幅が壁際には残っていたが、高所恐怖症の人間であれば、下層が見下ろせるこの場所を歩いて通りたいとは思わないだろう。


:下からストロングスパイダーが登ってきたりしないのか?

:うわああ……めっちゃストロングスパイダーが見えるよ……

:なお、アースモライさん、美味しくいただかれている模様


「何度も試してますけど、登ってきたことはないですね?下層の天井がツルツルしてて、さすがのストロングスパイダーでも、足や糸が引っ掛けられないからだと思います。」


:つまりストロングスパイダーに襲われても天井に逃げればええんやな(白目)

:つまり何度も床をぶち抜いたと……?

:それでもドロップしなかったんやな

:ドンマイやで、主……


「でもこれでジェリーバルーンの被膜がドロップすれば、確定レアなのが確認出来ますから!頑張って全部倒しますね!」

 と美織はニコニコした。


:問題は、爆発させちまうとドロップがないってことだよな

:近接職には不向きな敵だろ

:アースモライを近接職が倒しつつ、弓使いが爆発しない一点を狙うのがセオリー

:どうするんだ?


「アースモライを追い出した時と同じやり方ですよ。ジェリーバルーンは、攻撃しても爆発しない1点がありますから、そこを狙います。──いきます。」


 美織は某漫画の牙突のようなポーズで、ビリヤードのキューでも構えるかのように、手で剣の軌道を定めて、刃先を上に向けた。

「……──ふっ!」


 美織が剣を突き出した瞬間、それがジェリーバルーンの核に刺さり、爆発せずに体がシュルシュルとしぼんでいく。


 すると配信の画面には、美織がまだ内容を打ち込んでいないにも関わらず、


【確定ドロップアンケート。

 1.ジェリーバルーンの皮膜(ドロップ率0.08%)

 2.エクストラポーション(ドロップ率0.4%)】


 と書かれたアンケートが、配信画面に表示されていたのだった。


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