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第53話 USHC探索部隊の挑戦

「グガアアアア!!」

 全身がビリビリと震えるような咆哮が響いた。ダンジョンの上空から、茶色いドラゴンが砂嵐を身にまとってこちらに飛んで来る。


「──出たぞ!アースドラゴンだ!」

 砂嵐が体の周囲を守るように回転し、アースドラゴンの周囲だけ毒霧が避けるように、一定の感覚を保っている。


 この砂嵐は攻防一体となっており、他者の攻撃を防ぎつつ、攻撃してくるものにダメージを与える仕様だ。まずは砂嵐を解除させなくては、ダメージが通りにくい。


 だが同時にアースドラゴンの体を毒霧の視界の悪さから隠せなくなり、探索部隊としてはやりやすい状況になっている。


 それに違和感を持ったのは、メイソン・オーシャンただ1人だった。魔物は本来、自分の生息しやすい、また戦いやすい環境に存在している。この毒霧はアースドラゴンにとってまったく戦い易い環境とは言えなかった。


 もしもこれがイレギュラーということであれば、通常のアースドラゴンよりも強いということになるが、かつでメイソン・オーシャンが遭遇したことのある、イレギュラータイプのアースドラゴンは、体躯が目の前の魔物の1.5倍程はあり、また全身に血走ったかのような赤い線が入っていた。


 それを踏まえると、これはイレギュラーなどではなく、本来のフロアボスということになるが、だとすれば毒霧の存在がおかしい。

 毒霧のあるエリアに、本来アースドラゴンが生息している筈がないのだ。


 だがあれなら倒せそうだ。メイソン・オーシャンはその違和感に目をつぶった。

 そしてアースドラゴンを迎え撃つ為、探索部隊の陣形を整えるよう指示を出した。


 砂嵐の弱点は、一番上は台風の目のようにポッカリとあいていることで、そこに弓や魔法で攻撃を加えると、ダメージが通り易い。


 また一定のダメージを与えると、興奮してアースドラゴン自ら砂嵐を解除し、攻撃に移ることから、まずは背中を攻撃することが、アースドラゴン討伐のセオリーだ。


「アースドラゴンを発見、このまま討伐に切り替えます!まずは私が攻撃してみます。皆さんは、私の攻撃に合わせてください!」

「はい!」


「わかりました!伝えます!」

 風魔法使いの男性がそう言い、通訳を兼ねた探索者が、アメリカチームにそれを伝えると、アメリカチームがそれにうなずく。


「ビッグウインドアロー!」

 アースドラゴンの背中に狙いをすまして、風魔法使いが魔法を放つ。無数のスピアのような巨大な矢が、背中をめがけ飛んでいく。


 しかし、それらはアースドラゴンの羽ばたきに弾かれるようにして散り散りになった。

「ちっ、やっぱりか!弓部隊!頼んだ!」

「了解です!」


 弓使い部隊が弓を構え、背中の羽の付け根を狙う。アースドラゴンは羽で飛んでいるが、この部分はあまり動くことはない。


 そのため矢が当たりやすいのだ。弓使いが矢をつがえると、弦を引き絞り狙いを定める。そして……放つ!


「グガアアアア!?」

 風魔法を跳ね返す為に1度羽ばたいたことで、重たい羽をすぐに動かすことが出来ず、矢が背中と羽の付け根に刺さり、アースドラゴンは驚いたように叫び声を上げた。


 もだえるアースドラゴンの周囲から、一瞬砂嵐が途切れた。するとアースドラゴンは途切れてしまった砂嵐を再度発動させる。


 水魔法使いがそのタイミングで、ウォーターフォールを発動する。ウォーターフォールは上空から降り注ぐ巨大な滝のような水魔法で、アースドラゴンの全体をも包み込む。


 砂嵐が素早く回転している時には弾かれてしまうが、発動するタイミングに合わせると、砂嵐の回転を鈍らせることが出来る。


 水によるダメージは入らないが、攻撃を通りやすくすることができるのだ。そしてアースドラゴンの背にダメージを与えることによって、徐々に高度を下げていくことができる。


 空からの攻撃を得意とするアースドラゴンに対し、空での戦いを避けつつ、砂嵐を解除させ、地上に叩き落とす作戦だ。


「──これは決まりましたね。」

「よし、外部配信を開始しよう。世界に日本初のドラゴン討伐の様子を配信するんだ。」


 USHCは、探索部隊の勝利を確信し、社内専用回線で流していた討伐の様子を、全世界配信へと切り替えた。


 日本初!深淵でのドラゴン討伐!と第されたUSHCの公式チャンネルでの配信は、国内外からたくさんのリスナーに注目を浴び、一瞬で一気に30万人もの同時接続を達成した。その様子にUSHCの幹部の面々も、自社の偉業を知らしめる目的が達成されたとして、大きく頷きながら配信を見守っていた。


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遅くなりました!本日分になります。


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