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第52話 異質な魔物

「準備はいいか?」

「もう一度装備の確認お願いします!」

「ドローンOKです!」


 大勢のスタッフたちが、声を張り上げて最終確認を行っている。メイソン・オーシャンも最終調整を受けていた。


 今回の調査及び、討伐の可能性を秘めた探索に集まった探索者は、メイソン・オーシャンを始めとする50名の精鋭部隊だ。


 全員が深淵もしくは深層に潜ることが可能な実力者揃い。メイソン・オーシャン以外にも、Urban Strategy Hulex Corporationがアメリカから直々に連れて来た、上位探索者が8名参加することになっている。


Japan is a dungeon日本はダンジョン後進国だ-backward country.Surely there hasn'tこんなに人数が必要なダンジョンは been a dungeon今までなかったんじゃないか that requires this many people?」


 USHCに連れて来られたアメリカの探索者は、奈落すらも多数発見されている諸外国と違い、未だ深淵までしか確認されていない日本のダンジョン事情を軽く見ていた。


It may be the firstこれがそうかも知れないということさ time that.」

No wayまさか!」

 メイソン・オーシャンの杞憂を、アメリカから連れて来られた探索者は軽く笑った。


 ダンジョンにはいつどんな変化が起こるかわからない。それはどんな国であれ同じことだ。今まで特殊なダンジョンが発見されなかっただけで、今回もこれまでと同じとは限らない、とメイソン・オーシャンは思う。


 彼はいつだって慎重な男だった。だからこそ、今回の探索もこの大規模な人数での調査をUSHCに要求したのだ。


 だが人選までには口出しをしていない。彼らはあまり信頼のおける人材ではないかも知れない、と思っていた。


 またいつもなら自分の右腕として参加しているジャック・ジョーンズが、奥さんのお産で今回の探索に参加出来ないことも、懸念材料のひとつでもあった。


 それでも大金を積まれて専属契約をし、USHCの顔として探索を指示された身としては、会社の指示する探索には参加する他なかった。


 今回の探索は、日本初のドラゴン討伐の可能性があるものとして、USHCがおおいに期待を寄せているダンジョンだ。


 ドラゴンは深淵の中でもかなりの難関にあたる。討伐経験はもちろん何度もあるが、単独で倒せるような相手ではない。


 本当にドラゴンだった場合の可能性を考えると、最悪脱出のこともふまえた場合、最低でも30人は必要だ。そこを50人用意してくれたことにだけは感謝していた。


Let's goさあ行くぞ!」

 準備が整い、メイソン・オーシャンは精鋭たちとともに、深淵へと潜っていった。


 USHCの東京支社では、ダンジョン対策室室長アスター・ヒックスを始めとする幹部の面々が、ドローンの配信を見守っていた。


 これは社内でだけ見ることの出来る専用回線で、一般に公開されるものではない。

 もちろんいつでも外部配信に切り替えることは可能であり、ドラゴン討伐が現実のものとなった場合は、それを外部配信に切り替え、討伐隊の勇姿を公開予定でもあった。


 深淵は環境自体が特殊であることが多く、今回の銀座ダンジョンでは、毒霧が常に撒き散らされている環境で、耐性のないものであれば、それだけで死に至る空間だった。


「視界がかなり悪いですね。」

 ドローンの映し出す光景は、かなり色の悪い白黒のフィルムを見ているかのようだ。


 まるで靄がかかっているような、ぼやけた映像であった。雲の中にいるかのように視界が悪い。


As you can see光量不足か。, the light is not good.Be careful曲がり角には注意しろ around the corners.There is no road距離のない道はない without a distance.」

 探索部隊は慎重に足をすすめた。


「この環境での探索はかなり難易度が高くなりますが、これが深淵というものですからね。仕方がありません。」


「このカメラではドラゴンを捉えきれないかも知れないな。」

 USHCでは、ドラゴン討伐に対してなんの懸念材料も抱いてはいなかった。


 その為心配なのは、ドラゴンが実際に現れた際に、それを世界に向けた配信に乗せる際の見栄えだけであった。


「なにか現れたぞ!」

 探索部隊が慎重に歩んでいると、前方に魔物が現れた。それは大きさとしてはエイプと呼ばれる小さな猿のような魔物だった。


What is that!?なんだあれは

 それはドロリと全身が崩れ、こぼれおちた目玉がブラブラとぶら下がっていた。


 いわゆるアンデッド、ゾンビ、と称される類の魔物だが、アンデッドが出るダンジョンというのは、基本的にすべての階層にそれがいることが多い。


 深淵に来てはじめて、アンデッドタイプの魔物が出ることは非常にまれなことだった。

 魔物たちは探索隊をからかうように、ピョンピョンと飛び跳ねては手を叩いたりする。


It's a mockingおちょくってるのか?」

 メイソン・オーシャンはその光景を見て、違和感を感じた。


 エイプと称される猿タイプの魔物は、人間をおちょくってくることがある。だがアンデッドになってまでそれをすることはない。


 なぜならそれらは死んでいるからだ。生前のような動きをするアンデッドはいない。そもそも基本は引きずるように歩く。


 何かのリミッターが外れたかのように、生前よりも強い力で攻撃をし、噛みついて仲間にする能力を使って、どんどんアンデッドを増やしていくのだ。


 ここは何かがおかしい。メイソン・オーシャンは背中に嫌な汗が伝うのを感じていた。


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遅くなりました、本日分です!


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