美織の祈りの指輪を手に入れようとした鎌ヶ谷議員が、そのせいでどんな目にあったのかも知らなかった、ハードラックのギルマス中尾は、祈りの指輪をどこに売りつけるかの皮算用で忙しかった。
奈落のドロップアイテムは、ただそれと言うだけでも数百億以上で売れる。そこにきて聖女と同じ力を使える、しかもリザレクトが使えるレベルとなると、数千億はいくと思われた。アンデッドのいるダンジョンの攻略が止まっている国ほど欲しがるだろう。
それを子どもから奪えばいいだけなのだから、こんなにも簡単な仕事はないと思っていた。まだ剣呑寺いおりがダンVtuberなどをしているばかりに、身元が割れずに奪われていないようだが、自身の下部組織であるギルドに、つてのある子どもが在籍しているのは行幸だった。
親しくしている人間相手であれば油断するだろう。もう祈りの指環は自分の手に入ったも同然だ。中尾はさっそく海外オークションに、祈りの指環を出品したのだった。
「──いおり!遊びに来たわ!」
またしても、リスナーから美織のいるダンジョンを聞き出したシャーロットが、配信中の美織に突撃してきた。
配信に忙しかった美織が、トークアプリで誘っても遊んでくれなかったので、強引におしかけた格好だ。
今日は四ツ谷ダンジョンの深淵に潜っていた美織と獄寺ちょこは、突然現れたシャーロットに驚いて駆け寄った。
「シャーロットちゃん!」
「ちょっと!あんたまた来たの!?今日は深淵なのよ?前回とは違うのよ!?あんた友だちいないわけ?」
と呆れたように言う獄寺ちょこ。
「なによ!深淵くらい、パパと何度も潜ったことあるわよ!」
と言い返すシャーロット。
「そういえば、ここには1人で来たんですか?お父さんやお母さんは?」
「1人よ。アメリカは私の年齢でもダンジョンに潜れるからね。」
「アメリカで深淵に何度か潜ったことがあって、ここでじゅうぶん戦えるのはわかりましたけど、それでもやっぱり、あなたくらいの年齢の子が、こんな時間まで1人で出歩くのはよくないですよ?特に可愛いんですから、変な人に狙われちゃうかも知れませんよ?」
メッ、とシャーロットを叱る美織。
「たいていの相手なら返り討ちに出来るからだいじょうぶよ。私強いもの。」
「そういう過信が駄目なんです。特にダンジョンはひと目につきにくいですし、どんな特殊なスキルを持った相手に合うかもわからないんですから。私みたく配信してて、見てくれてる人がいれば、まだ抑止力になるかも知れませんけど。」
「あんた……心配なのはそこなの?」
深淵に子どもがいることよりも、ダンジョンにいる探索者のほうが、シャーロットにとって危険だと説得している美織に、半ば呆れる獄寺ちょこ。
:いおりんに何かする奴がいれば、俺らが黙ってないからな!
:20万人の抑止力やな
:配信してないところで、探索者の被害にあう人間は、昔ほどじゃないにしてもやっぱりいるからな
:美少女が1人で他人の目の届かないところにいるのは確かに危ない
リスナーも概ね美織と同じ意見のようだった。
「ならちゃんと遊んでよ!連絡してるのに、ちっとも遊んでくれないんだもの!」
「私には配信がありますから……。シャーロットちゃんとばかり遊んではいられないです。他のお友だちも作ってみてはいかがですか?」
「嫌よ!弱いもの!いおりと遊びたいの!」
シャーロットは駄々をこねるように、美織の腕を掴んで引っ張った。
「わかりました。じゃあ、今日と、次の配信で一緒に遊びましょう。だから無理やり押しかけてきたら駄目ですよ?お友だちとは、ちゃんと約束をして遊ぶものです。」
と美織はシャーロットに約束させた。
「うん!わかった!」
シャーロットは嬉しそうに微笑んだ。
テンションの上がったシャーロットは、深淵のヒュプノシスバット相手に無双しだした。小さいながら催眠術をかけてくるヒュプノシスバットは、近距離職のシャーロットには、当て辛く、かつやりにくい相手の筈だったが、何度も潜ったことがあるというだけあって、器用に超音波をさけ、ヒュプノシスバットを鉄パイプで撃ち落とす。
そのおかげで、ヒュプノシスバットに守られていたフロアボス、スフィンクスがその姿を現した。
「MMCMM(ピー)M。間に入る文字は?」
スフィンクスがなぞなぞを仕掛けてくる。これに答えられないとレーザーが横薙ぎに薙ぎ払ってくるという魔物だ。
なぜかその国の人間がわかる問題を出してくることから、別名トランスレーションモンスターの名で知られている魔物だ。
「──答えはKです!」
美織が答えると、レーザーを放とうとしてた口から、プスン……と音がしてレーザーの発射が止まる。
:MM、CM、M、KMでKか
:距離の単位問題だったか
:結構簡単めな問題だったな
美織が大上段の構えから剣を振り下ろし、スフィンクスが真っ二つに切り裂かれた。
配信画面には、誰も内容を打ち込んでいないにも関わらず、
【確定ドロップアンケート。
1.知恵の実(0.26%)
2.復活の水(0.1%)】
と書かれたアンケートが、配信画面に表示されていたのだった。
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