目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第81話 黄金魚釣りのコツ

 今日は女神の息吹と閃光の剣のギルドコラボの為、珍しく獄寺ちょこがおらず、美織は少し落ち着かない気持ちでコラボに参加していた。


 始めて会った美上翼は、成人男性とは思えないほど、女の子っぽい可愛らしい人で、ほんわかした雰囲気だった為、そこまで警戒せずに済んだのはよかったと思った。


 配信は瀬戸内ミリーのチャンネルで行っている。立川ダンジョンの中層で、ダンジョンの端の草むらに隠れるように、小さな泉があり、そこに黄金魚が潜んでいると言われている。だがその姿は見えない。


 黄金魚は基本簡単に姿を見せないと言われている。配信にリアルタイムで映ったことは数回しかないというレアさだ。


 全員で簡易な折りたたみの椅子を泉の前に置き、竿を準備した。

「私ミリーさん、今あなたの後ろにいるの。……そんなわけで今日はコラボですわ。」


:あらあら、豪華ですわね〜

:素敵なお嬢さまばかりですわ!

:楽しみですわ〜


 と一気に流れるエセお嬢さま語。以前瀬戸内ミリーがお菓子作り配信をおこなった際、某掲示板のお菓子作りスレのノリを披露したところ、それ以来リスナーのコメントがエセお嬢さま語で定着してしまったのだ。


 このノリを美上翼のリスナーが見逃す筈がなく、さっそく瀬戸内ミリーのリスナーに紛れて、エセお嬢さま語でコメントを開始していた。


「黄金魚を釣りつつ雑談配信なのですわ。無事映像に映せるといいですわね。それではさっそく今日のゲストさんを紹介いたしますわ。」


 瀬戸内ミリーも自枠ということで、エセお嬢さま語で話している。別に瀬戸内ミリーのガワはお嬢さまキャラというわけではないので、これをするのは自枠の時のみで、外部コラボの時はしない。その為当然普通にしゃべることもある。


「ルカルカフィーバー!ルカルカです!今日は黄金魚釣りコラボということで楽しみにしてました!」


「みなさま、こんいお〜!剣呑寺いおりです!今日はよろしくお願いしますね!」


「み、美上翼です!呼んでいただけて嬉しいです!よろしくお願いします!」

 ちなみに美上翼に入りの挨拶はない。


:あらあら、緊張してますわね〜

:よそいきの顔してますわ〜

:普段のノリはどうなさったのかしら

:真面目な顔しちゃって、ちゃんちゃらおかしいですわね

:へそで茶がわかせますわ〜


 内容的に美上翼のリスナーと思わしき面々が、悪乗りでエセお嬢さま語でコメントを打っている。ルカルカか美織の枠であれば普通のコメントを打っていた筈が、瀬戸内ミリーとのマリアージュにより、普段よりもコメント欄がカオスなことになっていた。


「それじゃ、さっそく釣り糸をたらしながら雑談していきますか!」

 とルカルカが泉に竿を入れようとすると、

「あ、ちょっと待って下さい。」


 と美織がそれを制した。

「どしたの?いおりん。」

「このままなにもせずに、10分から20分待ってみてください。」


「え?い、いいけど、間が持つかなあ……。」

 と配信が心配になる美上翼。

「その為の雑談コラボですから。おしゃべりしながら待ってましょう。」


「りょーかい……。なら聞きたいことがある。スキンケア何使ってるの?」

「お、俺ですか?」


 美上翼に配信前から興味津々だった瀬戸内ミリーが、グイグイと迫る勢いで尋ねている。ちなみに並び順は、美織、美上翼、瀬戸内ミリー、ルカルカの順だ。


「肌が弱くて、男性用の化粧品が強すぎてあわなくて……。女性用で、オススメされたものを使ってますね。」


「翼くんめっちゃ肌きれいだよねえ!何使ってるのか私も知りたい!」

 とルカルカも迫ってくる。


 美少女2人に距離を詰められて、見た目は美少女であっても、普通に男性の美上翼はタジタジであった。スキンケア商品名を教えると、2人はスマホにメモを取り出した。


「美上さんは、普段どういう配信をされているんですか?」

 美織も美上翼に話をふった。


「安価配信で次の内容を決めることが多いですね……。リスナーの希望する狩り場に行ったり、企画動画を撮ったりすることが多いです。」


「私のアンケートのようなものですね。」

「アンケートで決められてるんですか?」

「というか、私のスキルがアンケートというものでして……。配信内容アンケートが、勝手に出されることがあるんですよね。」


「勝手にだと、安価と変わらないですね。」

「そうかも知れませんね。」

 そう言って美織は笑った。


「──待って!?これって、ひょっとして黄金魚……!?」

 突然ルカルカが大声を上げる。泉にたゆたう大きな金色の魚が3匹。それを見たコメント欄も、マジだ!黄金魚だ!と大騒ぎだ。


「黄金魚は、釣り糸をたらさずに、出て来るのを待ってから釣り糸をたらすと、釣れるものなんですよ。」

 と美織がニコニコと言う。


「マジで!?」

「はい。釣り糸をたらしながら待つと、絶対に出て来てくれないんですよね、なぜか。だから待って下さいとお願いしました。」


「も、もう釣り糸をたらしてもいいの!?」

「はい、姿が見えたらもうだいじょうぶですね。さっそく釣りましょうか。」


 美織がそう言い早速釣り糸をたらす4人。するとさっそく、

「──かかった!」

 とルカルカが大声をあげる。


「たああああ!」

 一気に釣り上げるルカルカ。そして、

「釣れた……。」


「釣れました!」

 と、瀬戸内ミリーと美織も続けて黄金魚を釣り上げる。


:マジですの!?こんな簡単に釣れるものなんですの!?黄金魚って!

:釣り方にコツがあるとは知りませんでしたわ!

:いおりお嬢さまは博識ですのね!


 配信に映るだけでもレアな黄金魚が、立て続けに釣り上げられ、一気に切り抜きが拡散され、コメント欄には初見です!黄金魚が釣れたと聞いて!の文字が踊ったのだった。


────────────────────


この作品は読者参加型です。

アンケートが出たらコメントお願いします!

見てみたい配信内容も募集しています。


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?