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第82話 黄金魚を食べた効果

「これ、こんな簡単に釣れることがわかっちゃったら、金の価値大暴落しない?」

 と心配するルカルカ。


「錬金術師がそもそもそんなに数がいませんし……。他にも材料が必要ですから、手間を考えたらそこまで変わらないんじゃないでしょうか。それに探索者なら、金塊に変えられる素材として売るよりも、食べたいでしょうからね。」


「──食べたい?なんで?美味しいの?」

 とルカルカが美織の言葉に首を傾げる。

「ひと口食べるごとに、ランダムでステータスが上がるらしいです、ギルマスいわく。」


「マジですか!?確かに、お金払っても上げにくいステータスは簡単に上がらないけど、食べて上がるなら、確かにお金よりも食べたほうが価値がありますね!」

 と美上翼が言う。


「運がいいと幻覚耐性とかの、取りにくい耐性がつくこともあるらしいですよ?ギルマスは雪耐性とったらしいです。」


「雪耐性!イエティとか雪女と対峙する時に有効だね!最悪雪でかためられるもん。」

 ルカルカが驚きつつそう言った。


「幻覚耐性……、難しい……。なんどもかけられないといけないし、幻覚をかける魔物がそもそも少ない……。おまけに強いから耐性取る前に下手したら死ぬ……。」

 瀬戸内ミリーがそう呟いた。


「じゃあ、せっかくだからこのまま焼いて食べようか!串焼きで簡単に焼けるっしょ!」

「いいですね。」


 黄金魚はこのまま売らずに食べよう、という話になった時、美上翼は何やら考え込むように遠くを見つけていた。


 あれから美上翼も1匹釣り上げ、ダンジョン内で焚き火をおこし、焚き火を取り囲むように串にさした黄金魚を焼き始める。常備していた塩を軽く振って、いざ、実食!ということになった。


 1人一尾、女の子の肘から手首くらいの大きさのある黄金魚にかぶりつく。

「……!美味しい!カマスって食べたことある?それに似てる。けど、皮が全然違う!皮は確実にこっちのが美味しい!」

 とルカルカが目を丸くする。


「皮は鮭みたい……。白い米が欲しい。」

 と瀬戸内ミリーが呟いた。

 美上翼は焼いた黄金魚を前に、じっとそれを見つめていた。


:美味しそうですわ〜

:皮が鮭の美味さだなんてどんだけですの

:脂がのってるってことですわね?

:よこせくださいですわよ!

:ちょっと鮭取ってきますわ


 コメント欄も黄金魚を食べてみたいリスナーのコメントであふれ、飯テロにやられてしまっているようである。


「──美上さん、食べないんですか?」

 ジッと黄金魚を見つめたままの美上翼に、美織が不思議に思って尋ねる。


「あ、うん……。いとこにあげたら、ちょっとでも体調がよくならないかなって思って……。食べるか悩んじゃった。」


「いとこさん?具合が悪いんですか?」

「うん、ちょっと病気でね……。ほら、ポーション類って病気は治せないでしょ?」

「そだね?」


 美上翼の言葉にルカルカが答える。

「でも、ステータスが上がったり、耐性が増えたら、病気に耐える力が上がらないかなあって……。あはは。」


「ああ、確かにスタミナつくっていうか、レベル上がってステータス増えてからのほうが、風邪とかも治りやすくなったかも!」

 心当たりがあるルカルカがそう言う。


「タッパーとか、持ち帰る為の物はお持ちですか?」

「ううん、持ってなくて……。マジックバッグに入れれば保存は出来るけど、取り出す時に直接掴むことになるから、それはどうなんだろって考えてました。」


「でしたら、焼く前の物を持ち帰ってはいかがですか?焼く前でしたら洗えますし。」

「え?でも、もう全部焼いちゃったし……。」


「しばらく待てば、また出てきますよ?昔はマジックバッグがなかったので持ち帰れませんでしたけど、よくその場で焼いて食べてました。ステータスを上げる為に。」

「そ、そうなの!?」


「ダンジョンですから。わき待ちが出来るんですよ。釣り糸をたらさずに、出て来るのを見守ればいいんです。ただ、マジックバッグに入れずにダンジョンから持ち出すと、すぐに腐るので要注意です。」


「マジックバッグから出したら、すぐに調理しないとってことかな。」

「そうだと思いますね。」

「よし!釣る!」


 美上翼はそう言って、自分の分の黄金魚を食べた。

「うわあああ!?ひと口ごとに、めっちゃなんかつくう!?」

 と驚いているルカルカ。


:何がついたんですの?

:おしえろくださいまし

:ほんとにレアな魚ですのね

:初心者にもベテランにも優しい魚ですわ〜


「ひと口ごとに、ランダムに1〜3、ステータスが上がる……。あと、混乱耐性、爆破耐性、睡眠耐性、魅了耐性、スタミナダメージ耐性がついた……。これヤバい……。」


 フフ……と言ってニヤリとする瀬戸内ミリー。そこにルカルカが、うわあああ!?幻覚耐性取れちゃったよ!?と叫ぶ。


:幻覚耐性はヤバいですわ〜

:探索者お嬢さまであるわたくし、明日から黄金魚食べまくる宣言

:簡単に釣れることがわかってしまったから、きっと取り合いですわね


 黄金魚の知られざる効果が、まさかの中層で手に入るとわかり、にわかに探索者業界がざわつき出したのだった。


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