「これ、こんな簡単に釣れることがわかっちゃったら、金の価値大暴落しない?」
と心配するルカルカ。
「錬金術師がそもそもそんなに数がいませんし……。他にも材料が必要ですから、手間を考えたらそこまで変わらないんじゃないでしょうか。それに探索者なら、金塊に変えられる素材として売るよりも、食べたいでしょうからね。」
「──食べたい?なんで?美味しいの?」
とルカルカが美織の言葉に首を傾げる。
「ひと口食べるごとに、ランダムでステータスが上がるらしいです、ギルマスいわく。」
「マジですか!?確かに、お金払っても上げにくいステータスは簡単に上がらないけど、食べて上がるなら、確かにお金よりも食べたほうが価値がありますね!」
と美上翼が言う。
「運がいいと幻覚耐性とかの、取りにくい耐性がつくこともあるらしいですよ?ギルマスは雪耐性とったらしいです。」
「雪耐性!イエティとか雪女と対峙する時に有効だね!最悪雪でかためられるもん。」
ルカルカが驚きつつそう言った。
「幻覚耐性……、難しい……。なんどもかけられないといけないし、幻覚をかける魔物がそもそも少ない……。おまけに強いから耐性取る前に下手したら死ぬ……。」
瀬戸内ミリーがそう呟いた。
「じゃあ、せっかくだからこのまま焼いて食べようか!串焼きで簡単に焼けるっしょ!」
「いいですね。」
黄金魚はこのまま売らずに食べよう、という話になった時、美上翼は何やら考え込むように遠くを見つけていた。
あれから美上翼も1匹釣り上げ、ダンジョン内で焚き火をおこし、焚き火を取り囲むように串にさした黄金魚を焼き始める。常備していた塩を軽く振って、いざ、実食!ということになった。
1人一尾、女の子の肘から手首くらいの大きさのある黄金魚にかぶりつく。
「……!美味しい!カマスって食べたことある?それに似てる。けど、皮が全然違う!皮は確実にこっちのが美味しい!」
とルカルカが目を丸くする。
「皮は鮭みたい……。白い米が欲しい。」
と瀬戸内ミリーが呟いた。
美上翼は焼いた黄金魚を前に、じっとそれを見つめていた。
:美味しそうですわ〜
:皮が鮭の美味さだなんてどんだけですの
:脂がのってるってことですわね?
:よこせくださいですわよ!
:ちょっと鮭取ってきますわ
コメント欄も黄金魚を食べてみたいリスナーのコメントであふれ、飯テロにやられてしまっているようである。
「──美上さん、食べないんですか?」
ジッと黄金魚を見つめたままの美上翼に、美織が不思議に思って尋ねる。
「あ、うん……。いとこにあげたら、ちょっとでも体調がよくならないかなって思って……。食べるか悩んじゃった。」
「いとこさん?具合が悪いんですか?」
「うん、ちょっと病気でね……。ほら、ポーション類って病気は治せないでしょ?」
「そだね?」
美上翼の言葉にルカルカが答える。
「でも、ステータスが上がったり、耐性が増えたら、病気に耐える力が上がらないかなあって……。あはは。」
「ああ、確かにスタミナつくっていうか、レベル上がってステータス増えてからのほうが、風邪とかも治りやすくなったかも!」
心当たりがあるルカルカがそう言う。
「タッパーとか、持ち帰る為の物はお持ちですか?」
「ううん、持ってなくて……。マジックバッグに入れれば保存は出来るけど、取り出す時に直接掴むことになるから、それはどうなんだろって考えてました。」
「でしたら、焼く前の物を持ち帰ってはいかがですか?焼く前でしたら洗えますし。」
「え?でも、もう全部焼いちゃったし……。」
「しばらく待てば、また出てきますよ?昔はマジックバッグがなかったので持ち帰れませんでしたけど、よくその場で焼いて食べてました。ステータスを上げる為に。」
「そ、そうなの!?」
「ダンジョンですから。わき待ちが出来るんですよ。釣り糸をたらさずに、出て来るのを見守ればいいんです。ただ、マジックバッグに入れずにダンジョンから持ち出すと、すぐに腐るので要注意です。」
「マジックバッグから出したら、すぐに調理しないとってことかな。」
「そうだと思いますね。」
「よし!釣る!」
美上翼はそう言って、自分の分の黄金魚を食べた。
「うわあああ!?ひと口ごとに、めっちゃなんかつくう!?」
と驚いているルカルカ。
:何がついたんですの?
:おしえろくださいまし
:ほんとにレアな魚ですのね
:初心者にもベテランにも優しい魚ですわ〜
「ひと口ごとに、ランダムに1〜3、ステータスが上がる……。あと、混乱耐性、爆破耐性、睡眠耐性、魅了耐性、スタミナダメージ耐性がついた……。これヤバい……。」
フフ……と言ってニヤリとする瀬戸内ミリー。そこにルカルカが、うわあああ!?幻覚耐性取れちゃったよ!?と叫ぶ。
:幻覚耐性はヤバいですわ〜
:探索者お嬢さまであるわたくし、明日から黄金魚食べまくる宣言
:簡単に釣れることがわかってしまったから、きっと取り合いですわね
黄金魚の知られざる効果が、まさかの中層で手に入るとわかり、にわかに探索者業界がざわつき出したのだった。
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