「お帰り、美織。」
「ただいま、お母さん。今日は早かったんだね?」
家で出迎えてくれた母に、美織が尋ねる。
「今日は早番だったからね。珍しく時間通りに終わったし。……本当にありがとうね、美織。おかげで昼間だけの仕事に転職する勇気が持てたわ。」
そう言って母が微笑む。
「そっか。良かった。」
美織はドロップアイテムを売り上げたお金が振り込まれたことで、それをすべて母に見せ、前の仕事を辞めるよう頼んだ。
貯金はじゅうぶんにあるから、進学も2人分問題ない。夜勤ありきの仕事は、小学生の妹と過ごせる時間が格段に少ない。もっと家族と過ごす時間を取って欲しい、と。
その為に探索者を始めた美織としては、母が夜勤のある仕事をやめて、遅くとも夕方までに帰れる仕事に転職してくれたことが嬉しかった。
これで妹は毎日母親と夕飯を食べることが出来る。嬉しそうな妹の姿に、美織もとても嬉しかった。
「今日はお友だちが来るのよね?」
「うん、その予定。」
そこに、ただいまー、と、妹の依音がランドセルを揺らしながら帰って来る。
「あ、おねえちゃん!」
嬉しそうに美織に抱きつく依音。
「学校はどうだった?」
「楽しかったよ?」
「嫌なことをする人がいたら、必ず私かお母さんに教えてね?とっちめてやるから。」
「わかったー。」
依音を抱きしめて背中を撫でてやりながら、子どもをいじめる人は、私が絶対許しませんから。と美織は思った。
今日は土曜日で、美織の学校はお休みだが、依音の学校は午前中だけ授業がある。
母はいない予定だったので、お昼ごはんは美織の担当だった。
通常であれば、休日診療に駆け込んでくる患者の対応で、お昼ごはんの時間には間に合わないだろうと思っていた母が、珍しく早く帰って来たので、急いで母の分も用意し、家族で一緒にご飯を食べた。
ご飯を食べ終えて、くつろぎながら依音と遊んでいると、チャイムが鳴った。
「いらっしゃい。」
「えへへ……お邪魔します。」
頭をかきながら玄関に立ってた沙保里が、照れくさそうに笑っていた。
あれからギルドハードラックは警察のメスが入り、違法な契約をしていたことがばれ、ハードラックに学生を斡旋していた中学校サイドも問題となり、ニュースになっていた。
兄は大学を退学したことにし、父親は別の事業所に移動してもらい、やはり退職したことにしてもらい、蓼科家は引っ越した。
ギルドと何らかの形でつながっている企業や大学には、なんとか口裏合わせの手を回せたが、沙保里の母親の役所は無理だった為、そこは申し訳ないが本当に辞めてもらった。
身の危険を感じて引きこもりたがっていた沙保里の母親に異論はなかった。
沙保里も実際に転校した。
新しい学校にも慣れ、晴れてギルド女神の息吹に仮所属することになった沙保里の指導役の1人として、美織が選ばれた。
ニュースを見て心配してくれていたリスナーたちに、今日は沙保里自身の口から、無事であることを伝える為の配信だ。
「こんいお〜!久々の雑談配信です!今日は久しぶりなゲストさんですよ!
なんと沙保里ちゃんです!」
「蓼科沙保里です、お久しぶりです……。」
:おおお、元気だったか
:えらい目にあったな
:あいつら捕まって何よりだよ
:マジでハードラックとダンスっちまったな
:新しいギルドは決めたのか?
「はい、女神の息吹に入れていただきました!いおり先輩の後輩です!」
「私も指導担当になったんですよ?」
:いおりんが指導担当?
:特殊な狩り方を教える担当か
:は〜い、今日はここの壁を削りま〜す
:あら不思議!魔物が倒せちゃうんですね!
「効率のよい狩りの仕方はもちろん教えるつもりでいますけど……。私そんなに変なこと教えてますか?」
ちゃかすようなリスナーのコメントに、ちょっぴり心配になってくる美織。
:効率はいいんだけど、普通の人間には不可能なことが多いのよw
:たいていが真似出来ないw
:ダンジョンの床なんて、普通の人間には壊せんのよw
「そうでしょうか……?」
と不思議そうに首を傾げる美織だった。
「今日は久しぶりの沙保里ちゃんと、2人だけで配信ということで、何か企画をやっていきたいなと思うんですね。」
「マカ◯ンでも開けるんですか?」
「そうですね、2人にやって欲しい企画を募集するのも面白いかなって思うんですけど。」
美織がそう言った時だった。
配信画面に、
【配信アンケート。
1.獄寺ちょこにドッキリ配信。
2.安価で出た配信者とコラボ配信。】
美織が何も打ち込んでいないにも関わらずそんなアンケートが突然表示された。
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