:そういや、ちょこたんには“ちょこれい党”ってファンネームがあるのに、いおりんにはないよな
:作るか?
:いいな
:なにがいいかな
:いざ考えるとなると難しいな
:一生庵はどうだ?いおりとも読むだろ
:一生いおりんのファンってか、悪くない
:響きはいいな
:仏教用語のやつか?
:それは一燈照隅だろ
:一隅を照らすってやつな
:それを由来にしてるとこがあったから、それ自体が仏教用語かと思ってたわ、違うんだな。それに引っ掛けたつもりだった。
:一生庵でいいんじゃないか?
:いおりんはどう思う?
「つ、つけていただけるのであれば、なんでもありがたいかな、と……。」
美織はおずおずとそう言った。
:じゃあこれからファンネームは一生庵だな
:おk
:他にいいの思いつくやついたらいつでも変えてくれ
「あ、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
美織は嬉しそうにそう言った。
「しばらくコラボや自枠で企画ものが続いたので、次は狩り配信をやりたいかなと思っています。そんなわけで久しぶりにユニコーン狩りをしたいなと思ってますが、どうでしょうか?」
:久しぶりっつった?w
:軽く狩りたいなと思ってますって言うシロモノじゃねえのよw
:確かに下層でも出て来るけどw今更だけど下層ソロ攻略する女子高生はいないのよw
:そもそも乙女にしか狩れないって点では、ある程度強い女性探索者には、配信で狩ること期待される魔物ではあるけどw
:男性探索者には、姿すら見せてくれない魔物だからなw
:アイドル配信してる女性探索者は、踏み絵として狩ることを要求されることもある、ある種恐ろしい魔物でもあるw
:男の噂がたった女性配信者が、禊として行かされることになって、まったく出て来てくれなくて、大泣きすることになったアレなw
:アレかw否定しなきゃ良かったのになw
:結局あのまま引退しちまったな
:子どもが出来たって噂あったし、子育てに専念してるんだろ
「ユニコーンいいわね。ちょうど欲しい素材があったのよ。」
「ちょこさんのスキルのレベル上げに必要な爆弾の素材ですか?」
「そ。ユニコーンの角ね。」
「ちょうどいいですね!それでは一緒に行きましょう!」
美織が嬉しそうに言う。
:ちょこたん1人じゃ出て来てくれないんだな
:バイコーンならむしろ良かったかも知れんw
:まあ近寄っては来てくれんだろうが、若い女性であれば、逃げはせんだろうから……w
「女性にしか近寄ってこないユニコーンはオスですよ?メスなら男性にしか近寄らないです。メスはむしろ女性は嫌いです。時間によってオスしかいないとか、メスしかいないとかもありますからね。」
:え、そうなのか?
:じゃあユニコーンが出てこないっつっても、俺らがそいつをオスかメスか判別出来なきゃ意味ないってことか
:ユニコーンが出て来てくれなかった子も、メスしかいない時間帯だった可能性もあるのか。
:悪いことしちゃったな
:無実なのにユニコーン出てこないからって責められたら、そりゃ泣くわな
「その方がほんとはどうだったかはわかりませんけど……。ユニコーンのオス・メスは、区別がつけにくいですからね。どちらも角がありますし。わき時間把握してる人は少ないと思います。」
:いおりんは把握してるんやなw
:上位探索者の間で秘匿されてそうやな
:把握してれば確実に狩れるってことか
獄寺ちょこも素材が欲しいということで、次の狩りはユニコーンと決まった。
早速週末、2人で秋葉原ダンジョンの下層に行くことになった美織と獄寺ちょこ。
「……んで?この時間にはオスがいるの?」
「はい。ここはオス率の高いダンジョンなので。オスを狩るなら秋葉原ですね。メスなら池袋です。」
:ユニコーンのオスが秋葉原に多くわいて、メスが池袋に多くわくとかwww
:その場にいる人間の率に影響受けてるわけじゃないよな?w
「……ていうか、なんにも姿が見えないんだけど、ほんとにいるの?」
「はい。待ってればよって来ます。」
美織の言葉通り、しばらく待っていると、奥のほうからユニコーンたちがわらわらとわいて出て来たかと思うと、どんどんとこちらに近付いて来て、美織の膝に頭をスリスリとこすり付け始めた。
:ユニコーンは乙女の膝で寝たがると言うが
:おねだりしとるw
:君たちこれから素材にされんだぞw
「ちょこさんの素材のこともありますし、1体ずつ倒しましょう!私がまとめて倒すと、アンケートに1回分ってカウントされちゃうみたいですし!」
美織はそう言って、容赦なくオスのユニコーンの首を落とした。
すると配信画面には、誰も内容を打ち込んでいないにも関わらず、
【確定ドロップアンケート。
1.ユニコーンの角(0.17%)
2.スキル定着スクロール(0.06%)】
と書かれたアンケートが、配信画面に表示されていたのだった。