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第104話 ルカルカ救出大作戦

【確定ドロップアンケート。

 1.スキル定着スクロール(78.3%)

 2.リッチの指環(21.7%)】

 スキル定着スクロールが選択されました。】


「どんどんいきますよ!」

 美織は次々とリッチを狩っていく。メイソン・オーシャンと2人の聖魔法使いは、その移動速度について行くのがやっとだった。


:いけえええええ!

:いおりん、頼む!ルカルカを救ってくれ!

:みんな!押すんだ!

:いいの、出ろー!!!

:今の濃かったんじゃないか!?

:レアか!?レアきたか!?


 拡散により集まった人々の数は既に50万人を突破していた。熱くコメントをしているのは、おそらくルカルカのファンだろう。


 コメントを書いて盛り上げる。アンケートを押す。その2つしか出来なかったが、誰よりルカルカを救いたいという気持ちを、その2つに込めていた。


 リッチを倒すたびにドロップする、スキル定着スクロールの色の濃さに一喜一憂している。美織はドロップしたらすぐにマジックバッグに突っ込んで、続けてリッチに突っ込んでいく、を繰り返していた。


:目がチカチカする

:飛び交う魔法が至近距離で花火見てるみたいや

:なんでいおりんはこれに当たらずにいられるんだ


 リッチの放つ魔法は、それぞれ属性の色を持っている為、四方八方から飛び交う様子がまるで花火の中心にいるかのような見た目になって、リスナーの目を眩しくさせていた。


 ここが長らく放置されていたダンジョンであることから、アメリカのリスナーたちもその行方を見守っていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その中に、ギルドso awesome dayのギルマス、エリジャ・アークライトもいた。


 メイソン・オーシャンと聖魔法使いたった2人を貸し出しただけなのに、まるでアリの群れのように広がるリッチを、次々と討伐していくたった1人の少女の姿。


 貸し出しの条件として、クリアした場合その偉業はso awesome dayへ、としたが、まさかフロアのすべてのリッチを倒してしまえるとは当然思ってはいなかった。


 それなのに、アンケートという奇妙なスキルで、スキル定着スクロールを次々と手に入れながら、まっすぐボス部屋へ進む少女。

 目の前の光景が信じられない。


 メイソン・オーシャンが、NO.1の称号を譲る日が来たよ、と言っていたのは冗談じゃなかったのか、と思った。


 少女はあっという間にボス部屋に到着してしまった。エルダーリッチが少女と、追いついてきたメイソン・オーシャンたちを出迎える。


「マスター!こやつはレア確定のスキル定着スクロールをドロップしますぞ!」

「わかりました!」

 少女が肩の上の派手な鳥と話している。


 エルダーリッチをこの人数で?

 冗談だろう?いや、それどころか、1人で挑もうとしている。


 エルダーリッチソロ討伐だなんて、成し遂げられたとしたら、この配信を見ていた誰が、so awesome dayの功績として認める?


 おそらく笑われてしまうだろう。

 メイソン・オーシャンは何の役にも立っていなかったと囁かれるだろう。


 エルダーリッチの魔法を剣で一刀両断する少女の姿に、エリジャ・アークライトは、剣呑寺いおりの力を借りてダンジョンをクリアしたと公表することを心に決めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「美織!また来てくれたんだ!」

「はい、まだ面会可能時間とのことだったので。少しでも早く見せたくて……。」


 狸穴琉夏は見舞いに来てくれた美織に、嬉しそうに微笑んだ。そこには、スキルが消えた報告と、ダンチューバー引退配信を行った時の面影を微塵も感じさせない琉夏がいた。


「ルカルカさん。私と、リスナーさんたちからのプレゼントです。好きなスキルを選んで下さい。オススメはこれです。」


 そう言って、美織は濃いスキル定着スクロールを狸穴琉夏に差し出した。それをオズオズと受け取り、スクロールを開いてみると、


「レベル7火魔法……!?こんなの、神獣レベルじゃない!!私がもともと持ってた火魔法いくつか知ってる?4だよ!?」


「ルカルカさんの為に、リスナーさんたちと頑張ったんです。それを使って、戻ってきてください、ルカルカさん。……皆さん、ずっと待ってますよ。」


 美織はそう言って、音声のみの配信にしたスマホの画面をルカルカに見せた。

 コメント欄には、ルカルカを心配するリスナーたちのコメントであふれていた。


:ルカルカ!早く元気になれ!

:ダンチューバーが嫌なら、普通の配信者だっていいんだからな!

:俺たちはルカルカだから見てるんだ!

:今まで登録しないで見てたけど、ちゃんとチャンネル登録したからな!


 美織に言われて自分のチャンネルを確認すると、いつの間にかチャンネル登録者数が20万人も伸びていた。


「戻るも戻らないもルカルカさん次第です。私たちは、どちらでもいいように、ルカルカさんがダンチューバーに戻れる道を準備しました。どうかゆっくり考えてみてください。」


「みんな……!いおりん……!

 ありがと……!!」

 狸穴琉夏は顔をクシャクシャにして泣いた。


「いっくよお〜!ルッカルカ、フィーバー!」

 狸穴琉夏はルカルカとして復活することを宣言し、今日はその1回目の配信の日だ。


 選んだスキルは、火魔法レベル7、移動速度強化、知能上昇の3つだ。移動速度強化ありきの戦いに慣れていた為と、以前よりも強い火魔法。そしてその威力を1.5倍上げる知能上昇を手にした。


 いくらでもどうぞと言う美織に、さすがに受け取れないと固辞し、代金も分割で支払う契約とした。タダで受け取るには高すぎる代物で、贈与税もとんでもないことになる。


 購入する分には、チャンネルの経費で落とせる為、払い終えるまでどのくらいかかるかわからないが、当分殆ど税金支払わなくてよくなったな、と狸穴琉夏は思っていた。


 今では余裕で深層の探索に加われるようになり、名実共にトップダンチューバーの仲間入りをした。もうルカルカをアイドル配信者と呼ぶ人間はいなくなった。


 その頃、正式にso awesome dayが、剣呑寺いおりの力を借りて、これまで攻略が止まっていたダンジョンをクリアしたと発表し、ニュースにも取り上げられ、配信を見ない層や、一般企業、政治家、諸外国にまで、広く剣呑寺いおりの名前が広まったのだった。


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身隠しの衣を選んだら、スキルは失わなかったけど、新しいスキルを得てパワーアップすることもなかった話。


アンケート結果は、カクヨム、アルファポリス、ネオページの合計です。


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