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第103話 スキル定着スクロールマラソン

「本当に観光はしなくていいの?」

「ええ、早くスキル定着スクロールを手に入れないといけませんし。」

 美織はこっくりと頷いた。


 目的地の近くに、自然を生かした天然プールがあるらしく、美織と一緒にそのプールに行きたかったらしいシャーリーは、ぶうぶうと口を尖らせながらスネていた。


「ごめんなさい、少しでも数を手に入れて、友だちを慰めてあげたいんです。出来れば彼女が気に入ってくれるスキルを手に入れたいですし。明日には帰りますから、あんまり時間もなくて。また今度ゆっくり遊びましょう?」

 と美織はシャーリーをなだめていた。


「ああ、女神の息吹とは、無事提携契約が出来たから安心していいよ。」

「何から何まですみません。」

 と美織はお礼を言った。


 アメリカでは、ダンジョンで手に入れたアイテムを売ることも、国外に持ち出すことも、厳しく制限されており、ダンジョンに入ることにもアメリカのライセンスが必要だ。


 下手に他国の人間に荒らされてはかなわないので、取り締まる法律が出来た。国内のライセンスでなくてもダンジョンに入れる日本は、その点で法整備が遅れている。


 だたし例外はあり、アメリカのダンジョン関連企業と契約している企業に所属しているか、アメリカのギルドと提携している海外のギルドに所属している場合がそれだ。


 この為に美織の所属する女神の息吹は、メイソン・オーシャンの所属する、ギルドso awesome dayと業務提携をしてくれた。


 ちなみにギルド名のso awesome dayは、メイソン・オーシャンの口癖が由来だ。

 メイソン・オーシャンは、今日はいい日だも、今日はやばい日だも、so awesome dayと表現するからである。


 so awesome dayはUrban Strategy Hulex Corporationと専属契約しており、メイソン・オーシャンはUSHCにも所属している立場だ。USHCのお目当てはメイソン・オーシャン1人の為、他のギルド員を貸し出す場合は、別途その都度契約が必要になる。


「リッチが大量に出現するから、念の為うちのギルドの聖魔法使いを2人手配してあるけれど……。君には必要なかったかな?」


「いえ、万が一ということもありますし、助かります。ありがとうございます。」

「まあ、どちらかと言えば俺の為かも知れない。俺1人ではあの数のリッチはどうにか出来ない。」


「そうでしょうか?」

 美織の言葉にメイソン・オーシャンが苦笑したように笑う。


「君が思っているより、俺たちのレベルには差がある。君なら1人でもだいじょうぶだろうから、今回ギルドのメンバーは、聖魔法使い以外は待機にしたんだ。……むしろ君の邪魔になるだろうからね。」


 so awesome dayの総戦力を持ってしても、リッチが大量にいるセント・ジョゼフ墓地地下ダンジョンの攻略は不可能だった。


 今回の戦果はso awesome dayの名で発表してもよいことになっており、失敗した場合は名前は出さない、ということを条件に、メイソン・オーシャンは美織と聖魔法使い2人の、たった4人だけで攻略に挑むことにした。


 入口でお留守番することになったシャーリーは、すっかりご機嫌斜めだった。

「迎えに行きたいというから許可したんであって、中に入れるとはパパは言ってないよ?ちゃんとお留守番するんだ。」


 メイソン・オーシャンはすげなく言った。ギルドからは、聖魔法使い2人の他に、シャーリーの子守という名の見張り担当の男性がダンジョン入口で待っていた。


 若いイケメンで、シャーリーも懐いている為、彼がいるなら言うことをきくだろう、との思惑からである。


「さあ、行こうか。」

 メイソン・オーシャンが先頭に立ち、美織たちはダンジョンの奥深くへと進んでいった。

 美織は日本にいる間にとあるポストをしてあった。今日の予約枠に関するものだ。


 それを知り合いという知り合いに頼んで拡散してもらっている。あとは人が集まるのを待つだけだ。


 リッチのいる階層を前に、美織は配信を開始した。日本のアカウントでも、設定を変えれば海外で配信をすることが可能だ。


「みなさま、こんいお〜!剣呑寺いおりです!今日はなんとグアムから配信しています!狩りを始める前に大切なお話があります。」

 美織は震える手を握りながら話した。


「先日ルカルカさんの配信で報告がありました通り、ルカルカさんのスキルが突然消えました。……私は何か出来ることがないかと考えました。そこで今、ここにいます。」


 美織は入口の中をカメラに映し出した。

「私はここでスキル定着スクロール大量確保マラソンをするつもりです。」

 そこかしこに蠢くリッチの姿が映る。


「そこで皆さんにお願いです。アンケートの参加者率を上げたいです。数が多いほど、レアなスキル定着スクロールが手に入る可能性が高くなるそうです。どうか1人でもいい。拡散して下さい。ルカルカさんの為に……!!」


 コメント欄に、拡散する!任せとけ!と次々にコメントが書き込まれる。美織はそれを見て、

「行きます!」

 と中に飛び込んだ。


「俺たちは援護だ!後ろからくるリッチを潰すぞ!」

「はい!」

 メイソン・オーシャンと2人の聖魔法使いたちも中に飛び込んだ。


 リッチは元は魔法使いだった人間が、更に研鑽を極める為に自身をアンデッド化した存在と言われ、そもそも魔法を使う。


 能力は多岐にわたり、すべての属性魔法ごとにリッチが存在するとされる。その為基本近づくことはせず、四方八方からさまざまな属性魔法が美織に降り注いだ。


 美織はその軌跡を切り裂いて、魔法を蹴散らしつつ進む。

「やっぱり規格外だな……。」

 メイソン・オーシャンがそう呟いた。


 一足飛びで、あまりに数がいすぎるせいで集まっているリッチたちに距離を詰めると、ぐるりと回転しつつ切り裂いた。配信画面に、


【確定ドロップアンケート。

 1.スキル定着スクロール(0.36%)

 2.リッチの指環(2.7%)】


 と表示される。


「皆さん!アンケート回答、よろしくお願いします!」

 美織は力強く画面に向けて叫んだ。


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