「琉夏さん……。」
美織は狸穴琉夏のお見舞いに来ていた。狸穴琉夏はベッドの上で元気そうだった。
「美織!お見舞いありがと!」
「元気そうですね……?」
「うん、体はね、ポーションのおかげで。」
そう言って、狸穴琉夏は窓の外を寂しそうに眺めた。
「ダンジョン協会に正式に鑑定してもらったの。私のスキル、なくなってた……。だから引退することにしたの。」
「スキルが、なくなった……?」
「最初は火魔法が出ないだけだと思ったんだあ。魔法を封印する魔道具なんてものもあるしさ?それをダンジョンに潜んでる誰かが、イタズラか何かで使ったんだと思ったの。」
そう言って目線を落とす。
「だけど移動速度強化まで突然使えなくなってて。明らかにおかしかった。それで鑑定してもらったの。私のスキル、あのダンジョンの戦闘で、なぜか消えちゃったみたい……。」
「琉夏さん……。」
「だからダンチューバーはもう引退!配信は楽しいからね〜。また別の形で続けるかも知れないけど、アイドルダンチューバーでやって来た私に、どこまでリスナーが残ってくれるかな……。」
「私が身隠しの衣を渡せていたら……。」
「関係ないよ!それがなくとも、ミノタウロスからは逃げられたんだしさ!気にしないで。良かったら、またコラボしてよね!」
「はい、ぜひ。」
美織が病室から出ていくと、狸穴琉夏が声を殺して、それでも殺しきれずに、ふっ、ううっ……!と泣く声が聞こえた。
美織は病室の壁に背中をもたれて、もう一度声をかけるべきか思案してから、やはり声をかけずにその場をあとにした。
「……どうにかならないんでしょうか、琉夏さん。スキルが消えるだなんて、そんなこと……。探索者はスキルだけで戦っているわけではありませんから、戦い方がないわけじゃないと思います……。けど、今の琉夏さんは心が折れてしまっています。」
美織は肩に乗っているビビッドに話しかける。
「スキルが手に入ればよいのですかな?」
「手には入ったほうがいいと思いますけど、それで元気になるかはわからないですね。
……でも私がしてあげられることがあるとすれば、やっぱりそれでしょうか。」
「スキル定着スクロールは、すべての魔物からドロップする可能性のあるものとされていますが、やはり出やすい出にくいは正直ありますな。」
「そうなんですか?ビビッド、なにが出やすい魔物かわかりますか?」
「アンデッド系がよいでしょうな。それもランクの高い魔物です。たとえばリッチ、ヴァンパイア、ネクロマンサーのような。それか神獣系ですな。」
「リッチ、ヴァンパイア、ネクロマンサー、それか神獣……。」
美織は何事か考え込んでいた。
「──美織!よく来たわね!」
シャーリーが空港で出迎えてくれる。
「いらっしゃい。」
メイソン・オーシャンもカタコトの日本語で出迎えてくれる。
「英語でいいですよ?通じますので。」
美織は配信の時にやったような、意識を共有化させるやり方で、言語関係なく話が通じるようにしていた。
配信で全員にわかるようにすることも可能だが、さすがに疲れるのであまりやらない。今は狭い範囲だけ発動しているので、ほぼパッシブ状態に近い。
「そうか。わかった。リッチを大量に狩りたいんだって?」
「はい、ちょっと狙っているものがあって。すみません、アメリカがよくわからなかったので、案内をお願いしてしまって……。」
メイソン・オーシャンをアメリカのすごい人、という認識をしている為、恐縮しつつ美織が言う。シャーリーに、もしわかるなら色々教えて欲しいと伝えたところ、なぜか父親のメイソン・オーシャンが案内を引き受けてくれることになったのだ。
美織は今、シャーリーとメイソン・オーシャンとともにグアムにいた。日本との時差は1時間。パスポートは修学旅行に向けて取得済みだった為、リッチが大量にわくというダンジョンに行くことにしたのだった。
日本には、アンデッドの上位種ばかりがわくダンジョンというのは、今のところ確認されていない。調べた結果、グアムのセント・ジョゼフ墓地地下ダンジョンが最も適していたのだ。
「車を用意してあるよ。アメリカじゃ、車がなくてもだいじょうぶな場所は、ニューヨークくらいだからね。」
とメイソン・オーシャンが言う。
メイソン・オーシャンが、真っ赤なオープンカーをレンタルしてくれていたらしく、美織はまたしても恐縮した。
「すみません、何から何まで……。」
「君は命の恩人だ。むしろこのくらいさせて欲しい。いつでも君の役に立つよ。」
そう言ってメイソン・オーシャンは爽やかに笑った。
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7時前に目が覚めて、二度寝したんねん。と二度寝したところ、起きたら16:30だった話する?
……そんなわけで更新遅れました、すみません。書きたてのホヤホヤです。
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