目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第101話 異質な変化

【確定ドロップアンケート。

 1.身隠しの衣(26.3%)

 2.ダイダラボッチの天秤(73.7%)


 ダイダラボッチの天秤が選択されました。】


 空中が光って、ダイダラボッチの天秤が現れる。それは天秤というよりも……。


「なんか肩に担ぐ道具?みたいですね?」

 と美織はそれを見て言った。


:運搬具であってるぞ。山よりも重たくない物を軽々持ち運べるってアイテムだな。建築現場とかで使われるから企業の需要はあるぞ。

:え?女神の天秤みたいなやつかと思った

:審判アイテムな。そういうのじゃない。

ルカルカ:えー、身隠しの衣が選ばれたら譲って欲しかったのになー

:ルカルカだw

:潜んでたw


「そうなんですか?なんで欲しかったんですか?」

 そんなレアなアイテムとして、探索者が欲しがっている物の中では、あまり聞いた名前ではなかった美織は首を傾げた。


ルカルカ:どんな相手からも隠れて逃げおおせるってアイテムなのね〜それ。今度下層に潜る予定だったから、安全策の為にね〜。あ、ちなみにストーカー対策にも使えるよん。


 とルカルカがが教えてくれる。


「そうなんですね、アイドル配信をしている方は、狙われることも多いと聞きますし、必要だったでしょうね。すみません。」


ルカルカ:ダイダラボッチが出たのが急だったしね〜。頼むヒマなかったし仕方ないね!今回はそれなしで行くよ〜。


「はい、また手に入ることがあれば、お譲りしますね。」

 そう、配信上でやり取りをしたのが、美織が狸穴琉夏をルカルカとして認識出来る最後となった。


「ルッカルッカ、フィーバー!今日は約束どおり、下層に潜っていくよお〜!」


:ルカルカー、無理すんなー

:別に俺らいつも通りの配信でじゅうぶん楽しんでんだからさ

:ルカルカはアイドル探索者なんだから、無理に難しいとこ行かなくても、配信者としては結果出せてるじゃん?


 初の単独下層に、挑むルカルカは、先日単独で中層のボスモンスターを倒せたことで自信をつけていた。


 狸穴琉夏は、確かにアイドル探索者、ルカルカとして、100万人を超えるチャンネル数を誇るが、ルカルカだって探索者として、より難易度の高いダンジョンや階層に挑む気持ちをなくしたわけではない。


 同年代の剣呑寺いおりや獄寺ちょこが、次々と高難易度のダンジョンを、あっけなく攻略していく姿に。


 また同接数では負ける他の人気探索者に水をあけられて、何も思っていなかったわけではない。同接数もチャンネル登録者数の増減も、緩やかだが下降していっている。


 人間は常に同じ刺激には飽きる生き物だ。ここらで探索者としての実力が上がっていることを示しておきたかった。


 狙うは下層のミノタウロス。力押しで足はそれほど早くないが、群れで襲ってくる為、1体1体引き離して戦わなければ、今のルカルカには難しい。


 だがルカルカには獄寺ちょこと同じ移動速度強化がある。追いつかれることはけしてない。あとは囲まれないようにしながら、火魔法を打ち込む。それを繰り返すだけだ。


 勝利の方程式を強くイメージして、ルカルカはミノタウロスの群れへと挑んで行った。

 移動速度強化で群れを撹乱し、バラバラに引き離して、1体ずつ倒していく。


 ルカルカの作戦はミノタウロスの群れにうまいことはまり、1体、また1体とミノタウロスを倒していく。


 最初は心配していたコメント欄も、強くなったルカルカに興奮するコメントで溢れた。

 それを腕に備え付けたスマホの配信画面を横目でちらりと確認しながら、ルカルカは満足げに微笑んだ。


 その時、何かが体に触れた気がした。バッと振り返り、周囲を確認するも、ミノタウロスらしき姿も、なんらかのダンジョン内にいる生き物の気配も姿も感じ取れなかった。


 気の所為だったかと思い直し、ギリギリまで引きつけたミノタウロスに、

熱狂する灼熱バーニングフィーバー!」

 火魔法を放った。──筈だった。


「──!?」

 火魔法は出なかった。何度放ってもそれは同じだった。焦ったルカルカに、ミノタウロスの棍棒が容赦なく薙ぎ払われる。


「はあっ!はあっ!」

 移動速度強化でなんとかかわしたものの、腹部に強烈な一撃をもらって、ルカルカはその場から逃げ出した。


 木の陰に隠れて、用意しておいた上級ポーションを飲み込む。おそらくあの一撃で潰されていたであろう内臓が、回復したらしく、すぐに焼けるような痛みは消えた。


 試しにファイアーボールを放ってみたが、それすら現れなかった。

 通常スキルである移動速度強化は、滅多なことでは封印出来るスキルも、魔道具も存在しないが、魔法は別だ。


 封印出来る魔道具というものが存在し、政府や一部の大企業では使われているという。

 それを誰かがこの場で使った……?

 そんなことを考える。


 次の瞬間、誰かが剥き出しの腕に触れた。今度は気の所為ではなかった。自分よりもほんの少し高い体温。そう、人間のような。


 移動速度強化ですぐさま飛び退こうとしたが、今度は体が重たかった。再び移動速度強化を発動させようとうするも、やはり人並みの速度でしか動けない。


 何かが起こっている。まずい。今すぐ逃げなくては。ルカルカは出口に向かって一目散に駆け出した。そこにルカルカに気付いたミノタウロスが、巨大な斧を振り上げていた。


 その日、巨大な検索エンジンのニューストピックに、人気ダンチューバー、ルカルカこと狸穴琉夏さん、重体により引退、の文字が踊った。


────────────────────


ちなみに身隠しの衣だった場合、ルカルカは引退しなかった。


アンケート結果はカクヨムとアルファポリスの合計です。

ネオページからもコメント欄で参加可能ですのでふるってご参加下さい。


この作品は読者参加型です。

アンケートが出たらコメントお願いします!

見てみたい配信内容も募集しています。


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?