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第138話 ダンジョンの壁から現れる敵

 深層に入ると、そこには何もいなかった。

「……どういうことだ?」

 警戒しながらもギルド女神の息吹の面々は奥に進んで行った。


 すると突如としてダンジョンの壁が、裏から何かに押されたように、前に突き出てこようと動き始める。


「隊列を組め!何か来るぞ!」

 井村の言葉に、ギルド女神の息吹の面々が定位置に並んで迎え撃つ準備を始めた。


 すると反対側の壁も同じように突き出し始め、どちらを警戒したものか、一瞬Bランクの面々が混乱したが、


「俺たちは左をやる!」

 井村が声をかけると、Aランクが3人ずつ二手に別れた。それを見たBランクの面々も、11名ずつが二手に別れる。


 突き出してきた壁は、2体のゴーレムへと変化した。ゴーレムは強さの程度に差があることが多いが、ここは深層でもおそらく今までの出現パターンからいくと、深淵クラスの魔物。それが1度に2体だ。


 ギルド女神の息吹の面々は、ゴクリとつばを飲み込んだ。Bランクの探索者は、パーティーであっても深淵に潜ることはない。


 初めての、おそらく深淵クラスの魔物。Bランクの大半は震える体を必死に誤魔化すことしか出来なかった。


 2体のゴーレムが、何かを掴むような仕草をしながら、こちらを見つめている。すると手と手の間に、何かうねりのようなものが生まれつつあった。


「なんだ……!?」

「気をつけろ……!」

 初めて見る攻撃方法に、警戒する面々。


 ゴーレムたちはそのうねりの塊のようなものを、女神の息吹の面々に投げつけてきた。

「うわああああああああ!」

「いやああああああ!」


 突然、ふわっと全身が軽くなり、空中高く浮かび上がる。そして、自分たちを包み込むうねりが消えた瞬間、天井高くから地面へと叩きつけられた。

「地面に魔法を放て!」


 井村の言葉で魔法を使える面々は、地面に向けて魔法を放ち、落下の速度を抑えることで、衝撃の度合いを多少殺したが、魔法を使えない人間たちはしたたかに地面に打ち付けられる。


「がっは……!」

 いくら防御力が高く、鍛えている探索者たちであっても、ビルの4階分の高さから叩き落されて、怪我をしないは無理だ。


 それでも即死を免れたのは、探索者だからこそ。井村たちは慌てて仲間にかけよると、中級ポーションをぶっかけた。


「この程度ならまだ中級ポーションでいける。……やれるぞ!」

 そう言って、仲間たちを鼓舞する井村。


 そんな井村たちを見て、顔を見合わせ、頷き合っているゴーレムたち。まるで意思の疎通をはかるかのような仕草に、その場にいた全員が違和感を覚える。


 ゴーレムは知能は高くないとされている。それがどんな強さであってもだ。他の魔物に使役されて出て来ることもある、そんな存在だ。


 それなのに、まるで知能があるかのような行動が不思議だった。1体のゴーレムが、一箇所に集まっている女神の息吹の面々に、再びうねりの塊を投げつけてくる。


 井村はサッと飛び退いたが、まだ地面に倒れ伏したままだったメンバーがそれに捕まった。そして、逃げ惑うメンバーたちを、うねりの塊が追いかけてくる。


 次々に捉えられ、うねりの中へと飲み込まれていく。

「早く脱出するんだ!」


 井村がそう叫んだが、うねりは女神の息吹の面々を巻き込んだまま、上空高く舞い上がると、井村が手出し出来ない高さで、中に電撃を放ち始めた。


「うわああああああああああ!」

 風魔法を放ってみるも、まるて届かない。

 井村は振り返り、うねりを操っているゴーレムたちに風魔法を放った。


 攻撃はなんなくゴーレムに当たったが、なんの傷も追わせられなかった。

「なんなんだ、こいつらは……!」


:ダンジョンの壁から出来てるから、魔法耐性が強いのか!?

:Aランクがかすり傷も追わせられないって

:これ……やばいんじゃね?


 もう1体のゴーレムが、うねりを作り出すと、井村に向かって投げつけた。風魔法を放つも、まるで吸収されるかのように、なんの影響も与えられなかった。


「くっ……!」

 井村はただ逃げ回るしか出来なくなった。

 だが執拗にうねりが追いかけてくる。

 そしてついに、うねりに捉えられた。


 高々と空中に舞い上がるうねり。そのまま同じように電撃を食らわされるかと思ったが、うねりはどんどんと天井へと近付いていく。そして、井村ごと天井にぶち当たった。


「がはっ……!」

 うねりはなんのクッションにもならず、まるでそこに存在しないかのように、井村の体だけがダンジョンの天井に激突する。


 そしてそのまま、井村を包みこんだまま、地面へと落下してく。井村は風魔法を地面に向けて放ったが、それはうねりを貫通することはなかった。


 地面にうねりごとしたたかに叩きつけられた。そしてそれはそこで終わりではなかった。再び天井に上昇し、天井にぶち当たったかと思うと、地面に落下して地面に叩きつけられる。


「い、井村さん……。」

 別のうねりの中で電撃をくらいながら疲弊していた女神の息吹の面々も、弄ぶように天井と地面に叩きつけられる井村を、ゾッとしながら眺めていた。


「見てられませんから、いいですよね?」

 そんな声が聞こえたかと思うと、美織が飛び出して、ゴーレムに切りつけた。


 井村を包んでいたうねりが消える。かじろうて生きてはいたものの、もう虫の息だった。美織は祈りの指輪を高々とかざして、聖魔法を放った。井村の体が瞬時に回復していく。


「そうね。私たちが相手よ。」

 阿平が美織の横に立ち並んだ。

「体を温めたかったですし、ちょうどいいですね!」

 美織はそう言って笑った。


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