美織と阿平が飛び上がって、ゴーレムに近付いた。ゴーレムがうねりを2人に投げつける。阿平がうねりに手を伸ばした。
「ちょっと試してみたいわ。まかせて。」
「わかりました。」
「──腐食。」
阿平がうねりに手を触れる。
うねりはグネグネと、逃げようとするかのようにもがいたが、ドロドロと溶けてその姿をうしなった。
「どうやら効果があるようね。これ自体は魔法ではなく、ゴーレムの体の一部だということよ。取り込まれなければ、魔法は放たれないわ。取り込まれないよう気を付けて。」
阿平のスキルの1つ、<腐食>は、ありとあらゆるものを溶かすスキルだ。ただし魔法には効果がない。
触れる必要がある為、溶岩タイプなどの、触れるだけでダメージのある魔物には、そのダメージ耐性がないと耐えられない。
ただしSランクにまで上がっている阿平には、大抵の耐性スキルが備わっている。現状では物理攻撃タイプ相手であれば、ほぼ無敵といえるスキルだ。
ただし相手に腐食耐性があれば、当然ききにくいし、水属性タイプには、効くには効くが、弱らせることは出来るものの、体を崩せるようになるまでには時間がかかる。
スキルの為、MPでなくスタミナを使用する。スタミナを使い切っても倒せなかった場合、当然スタミナ回復薬を飲む必要がある。
だが、かけるだけでも効果のあるポーション類と違って、飲む必要があることと、数を飲むと体調が悪くなることを考慮しなくてはならない。
MPポーションさえあれば、回復しまくってバンバン魔法が撃てる魔法使いと違い、スキルで戦う探索者にはそうしたデメリットがある。それをおいてなお、阿平のスキルは強力なものだった。
スキルそのものを使って戦わないタイプの美織の場合、その手の問題とは無縁な為、今まで回復アイテムなどのドロップ品がなくても、戦ってこれたというわけだ。
うねりを溶かされたゴーレムは、おののいたような仕草を見せた。もう1体のゴーレムが、うねりに閉じ込めてある女神の息吹の面々を、阿平と美織の前へと移動すると、中に向けた雷攻撃の威力を上げた。
「あああああっ!!」
「ぐっ……があああ……!」
それを見たゴーレムが、まるで笑っているかのような表情で阿平を見た。
「──人質のつもり?」
阿平がゴーレムを睨む。
「魔物が人質を取るだなんて、聞いたことがありません……。」
「あら、いなくはないわよ。ゴブリンタイプとかオークタイプとかね。ランクが上がって知能をつけると、人質を取ることがあるわ。知能があるタイプは厄介よ。」
「そうなんですね、ソロ狩りばかりだから知りませんでした……。パーティーメンバーがいたら、そういうこともあったんですね。」
ソロ狩りばかりして人質を取られるような状況になったことがない為、美織はそういうこともあるということを知らなかったのだ。
:ダンジョンの最短ルートや、RTAのやり方は詳しいのになw
:ちょこタンと出会うまでは、ずっとソロ狩りだったみたいだしな、無理もない
:妙なことには詳しいのに、バターの作り方を知らないパ●リロみたいなもんかw
「あのゴーレムにも知能があるということでしょうか?」
「操っている魔物の魔力は感じないから、おそらくそうでしょうね。」
:人質を取れるほど知能の高いゴーレム!?
:ほんとに誰も操っていないのか?
:ゴーレムタイプは勝手に動く時は単純攻撃で、使役者がいる時だけが面倒な筈なのに、これが深淵相当のゴーレムか……
「私たちにはそんなもの無駄だってこと、教えてあげるわ。本体を倒してしまえばそれまでよ!」
阿平が目にも止まらぬ動きで、ゴーレムとの距離を詰め、ゴーレムの体に手を触れた。
ゴーレムの体がドロドロと溶けていく。内側から現れた魔核を、美織が一刀両断した。
うねりに囚われて空中にいた、女神の息吹の面々が地上に落下する。
既に回復していた井村が、落下の衝撃で怪我をした全員に、上級ポーションをかけてまわった。
雷魔法の攻撃を受けているので、中級では足らないという判断だ。
「なんの攻撃も通らなかったのに、あんな一瞬で……。」
「あれがギルマスの力……。」
初めて阿平の力を目の当たりにしたBランク探索者の面々は、驚愕しながらその威力の凄まじさを眺めていた。
「たああああ!!」
美織がゴーレムを一刀両断する。魔核ごと切り裂かれたゴーレムは、驚愕した表情を浮かべながら、ふっと姿を消した。
その時配信画面には、
【確定ドロップアンケート。
1.使役タイプゴーレム(0.07%)
2.ダンジョンゴーレムの核(0.11%)】
と表示されていたのだった。
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アルファポリスで大賞に応募する為、旧作品を改変して投稿を始めました。
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最後の勇者のレゾンデートル〜スキルなし判定された俺が隠しユニークスキル「ゲノムコントロール」で闇社会の覇王となるまで〜
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