「タイムアップだ――〈
俺達の時の流れが通常に戻る。
同時に全身を覆っていた
そして眩かった装甲も
直後。
「痛ゥッ……ぐぅっ! か、身体中の筋肉がヤバいことになっている……」
突如、全身に激痛が襲う。俺はその場で蹲った。
特に両足が酷い。おそらく筋肉が断裂したのかもしれない。
その反動が一気に身体を襲ったようだ。
やはり俺に
こうしてリスクを冒さなければ、どんなに足掻こうと
一方、そのローグは倒れたまま微動だにしない。
手に持つ二刀の剣はどちらも砕かれ、身に纏う鎧や衣類も斬り刻まれボロボロだ。
よく見ると片腕と片足が明後日の方向を向いている。
ぱっと見は息もしておらず、キルされたかのように見えるが……。
「アルフ! 大丈夫ぅ!?」
隅っこで身を隠していた、ピコが俺に近づいてくる。
「あ、ああ……自業自得の満身創痍だが勝ったよ。ピコとみんなのおかげだ……」
「そう、良かったぁ。それでクソローグはどうなったの? 死んじゃった?」
クソローグって……お前も原作じゃヒロインの一人だぞ。
しかも決まってシズクと取り合いしてたってのに……まぁ奪った俺が言う資格はないけどな。
「い、いや生きている筈だ。何せ直接斬ったわけじゃないからな……|音速を超えた
今は奴の生死を確認している場合じゃない。
俺は聖剣を床に突き刺し、痛みを堪えなんとか立ち上がる。
「ガ、ガイゼン、終わったぞ! 〈
ありったけの声で叫ぶと俺達を囲んでいた巨大化した盾の壁が縮小されていく。
元の大楯サイズとなり、そのうちの八枚が浮遊して一枚の大楯の中に収納された。
その先にガイゼンが立っている。
「アルフ! おおっ、ついに決着をつけたのか!? てか、その身体どうした!? ローグにやられたのか!?」
「戦闘で負ったダメージじゃない……後遺症のようなものだ。それより、シズクとカナデはどうした?」
「ついさっき戦ったところだ。特にピンチってわけじゃねぇ。だが〈
「いや、どんなに気を失わせ重症を負わせても、ローグが没収しない限り〈
まだ〈
もしシズクとカナデが苦戦するようなら、ローグの息の根を止める選択も視野に入れなければならない。
「ガイゼン、見ての通り俺は戦える状態じゃない……ラダの塔で
何せ休む間もなくオルセア神聖国から呼び戻されたからな。
肝心のルミリオ王国もこんな状態だし道具屋に寄ることもできなかった。
「わかったぜ。ピコ、お前さんはシャノンを呼んでくれ。彼女じゃなきゃ、アルフの回復はできねぇ」
「仕方ないわね。基本、アタシはアルフの言うことしか聞かないけど、彼氏の負傷を治すためだから従ってあげるわ」
「サンキュ、ピコ……(彼氏じゃねーけど)。ついでにスラ吉も呼んでくれ」
ガイゼンとピコが行動に移し離れて行く。
だが気づけば
そういや彼女の存在を忘れていた。
どうやらガイゼンの背後に隠れていたようだ。
神秘的で綺麗な顔立ちなのに、相変わらず病んだ瞳を俺に向けて「うひひひ」と不気味に笑っている。
「……推しの団長くんと二人っきり。激ヤバ」
なんだろう、やたらと身の危険を感じてきたぞ。
「それよりソーリア、キミのデバフ魔法でもう少し敵を弱体化させることはできるか?」
「あれ以上の〈
「例えば?」
「今すぐ効果を与えられるやつなら……体臭をキツくしたり、視界を狭くさせたり、足場を滑りやすくしたり……ちょっとした嫌がらせ程度かな」
体臭をキツくしてもな。戦闘中じゃ大したダメージを与えられそうにない。
「勿論、闇魔法での支援攻撃や防御も可能だよ。けどそうすると、ボクのスキル〈
「せっかく敵全体を弱体化させたのに、それは不味いな……わかった。嫌がらせ程度で加勢してくれ」
「了解。あと頼みがあるんだけど」
「なんだい?」
「団長くんの髪の毛一本でいいからボクにくれない?」
「え? なんで?」
「……乙女の事情だよ、うひひひ」
ぶっちゃけ嫌な予感しかない。
絶対に呪術とかに使われそうだ。
「ごめん、それは無理。食事くらいは奢ってやるから……」
「推しとの密会デート。悪くないね、うひひひ」
なんでいちいち密会すんだよ? 堂々と飯食いに行こ―ぜ。
ソーリアは「約束だよ、アルフ団長」と呟き仲間達の加勢に向かう。
「……やべぇのと約束しちまったな。いざって時は従兄のラルフに相談しよう」
身体の激痛を忘れるくらい、めちゃ疲れる子なんだけど。
俺が見守る中、仲間達の戦いが始まる。
ガイゼンは
ソーリアがデバフ魔法を放ち、フォーガスとラリサの視界を抑制させ、尚且つ足元を滑りやすくする。
そうすることで攻撃力と防御力と移動力の低下へと誘う。
「クソッ、ガイゼンが邪魔すんじゃねぇ!」
「ちょ、ちょっと! 急に動きづらくなったんだけどぉ! あと体臭なんかキツいわよん!」
フォーガスとラリサが戦いながら悲鳴を上げる。
地味にソーリアの奴、体臭をキツくするデバフまで施したようだ。
少なくてもラリサへの嫌がらせは成立している。
「二人共、もうじき〈
「ありがとうございます、ガイゼンさん!」
「ガイゼン殿、かたじけない! 伍ノ刃――〈淡月〉!」
先に仕掛けたのはカナデだった。
刀身から眩い閃光を放ち、対峙するフォーガスの視界を奪う。
「うげぇ、眩しい!?」
「参ノ刃――《雨月》!」
カナデは踏み込み、最速の連続突きを浴びせた。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
フォーガスの大剣と装備はあっさりと削られ、肉体に無数の穴が刻まれていく。
流石は聖武器の聖刀剣だけあり威力が抜群だ。
ちなみに『無幻刀』と名付けたらしい。
「急所を外し辛うじてだが生かしてある! そう指示したアルフ団長に感謝しろ!」
膝から崩れ落ちるフォーガスに向けて、カナデは凛とした口調で言い切った。