今夜の夕食は、鯖の味噌煮と煮物、サラダ、それに味噌汁だ。
想真は七時位に帰ると連絡が来た。
普段よりちょっと早い帰りは嬉しい。
俺はワッフルの準備もして、想真が帰ってくるのを待った。
夕食の準備が終わる頃、廊下を歩く音が響く。
「ただいま、俐月」
「お帰り、想真」
答えながら、俺は料理を盛り付けて食卓へと運ぶ。
「今日のおかず……これ、鯖の味噌煮?」
「そうそう。色々作れそうなもの調べててそれで」
「へえ、すごいね俐月。おいしそう」
想真に笑って言われ、俺も嬉しくなってくる。
「このあと、ワッフルもあるからちょっと控えめにしてあるよ」
「あぁ、ワッフル! すっごい楽しみにしていたんだ」
無邪気に笑う想真は、椅子に腰かけた。
「食べようか、俐月」
「うん」
答えて俺は、椅子に腰かけて手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
俺は箸を手にし、鯖の味噌煮に手を付ける。
自分で作っておいてあれだけど、うまくできてるかも。
「マジおいしいよ、俐月。味噌煮も、かぼちゃの煮物も」
すっげー笑顔で言われ、俺はほっとする。
よかった、美味しいって言ってもらえて。
「なあ想真ってなんか好きな食べ物ってないの?」
前、アルトさんに聞いたら肉を喰わせておけばいいって言われたけど。
あと想真は甘いものが好きだ。でも他にこれといって好きなものを聞いたことがない。
すると想真はちょっと考える様なそぶりを見せた後、微笑み言った。
「俐月が作るものは美味しいからね。甘いものは大好きだけど、それ以外は決めにくいな」
って言い出す。
そんなこと言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
「え、あ……でもなんかあるだろ? 好きなもの。クリスマス、お前忙しいだろうけどどっかでごちそう作れたらなって思ってさ」
「そんなこと考えてくれてるの?」
嬉しそうに笑う想真に、俺は頷き答えた。
「当たり前だろ。だって……クリスマス、だし」
世の中、クリスマスってなにすんのかな。実家にいたときはお母さんがケン○ッキーを買ってきて、ピザ焼いてくれていたっけ。
すると想真は箸を止め、考え込みだす。
「どうしよう。クリスマス……日にち……ケーキは二十四日に頼んでるし。でも仕事で……早く帰るようにはするけど……料理……」
なんて呟いている。
ケーキ、二個頼んでることを思うと、そんなにごちそういらねえかも。
「……ピザ、作ってみようか?」
そう俺が言うと、想真がばっと顔を上げる。
「いいね、それ。ピザ!」
「でもそれだとホームベーカリーあったほうが楽、なのかも」
うちの親はそれで生地を作ってた。その方が楽だからって。
すると想真ははっとした顔をして、
「ホームベーカリーね。わかった。買おう。後でネット見てみようよ」
なんて言い出す。
「まじかよ」
今日見てきたけど、ホームベーカリー、けっこう高いぞ?
「三万は超えてたぞ」
「それくらいならいいよ別に。俐月に必要なら俺、全然お金出すよ」
まじかよ。
なんか申し訳ないような嬉しいような。
そんな複雑な想いを抱えながら俺は想真の申し出に頷き、
「ありがと、想真。じゃあピザ、作るよ」
と答えた。
夕食の後、テーブルの上を片付けてワッフルメーカーを用意する。
それにお皿やホイップにチョコレートソース、メイプルシロップを用意して、俺はワッフルメーカーの電源を入れた。
「家でワッフル作るなんて初めてだよ」
「俺もだよ」
言いながら俺はワッフルメーカーが温まったのを確認して、そこに生地を流し込む。
そして焼くこと数分。
開けると、ふわっとしたワッフルが姿を現した。
「うわぁ、すごい。超おいしそうじゃん」
弾んだ声で言う想真。
俺はお皿にワッフルをのせて、二枚載せて、想真に差し出す。
すると想真は、
「俐月のは?」
と言った。
「俺は後でいいよ」
答えつつ、俺は次の生地を焼く。
「一緒に食べようよ」
言いながら、想真はもう一枚の皿に、ワッフルを一枚のせた。
別にすぐ焼けるからいいのに。
そう思ったけど、俺はボウルをテーブルに置き、
「わかった」
と答えて、皿を受け取った。
ホイップにメープルシロップをたっぷりかけて。俺たちはワッフルを食べる。
ふわふわした生地で超うまい。
「うわぁ、おいしいね」
「うん。家なら好きなのかけ放題だしいいな」
見れば想真はたっぷりのホイップをのせて、チョコレートソースもたくさんかけている。
「お前、かけすぎじゃね?」
「これくらいやりたいじゃん? あぁー幸せ。これ、定期的にやろうよ」
目を輝かせて言われ、俺は頷いた。
「そうだな。月イチくらいでやろうか」
「それいいね。俐月のお陰で楽しみが増えて嬉しいよ」
そんな想真の笑顔に俺も嬉しくなる。
季節によってはフルーツ載せたり、色んなアレンジできるよな。考えてるだけで楽しくなってくる。
俺は焼けたワッフルを皿にのせ、次の生地をセットした。