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第45話 ホットサンド

 翌日。一二月二日月曜日。

 俺は朝食でさっそくホットサンドメーカーを使うことにした。

 八枚切りのパンを用意して、そこにハムやチーズをのせる。

 それをホットサンドメーカーにセットして焼いている間に、俺はおかずの用意だ。

 卵を焼いて、厚切りのベーコンに小さなハンバーグ。カットキャベツを添えて。

 準備が終わるころ、想真が起きてきて食卓を見つめて言った。


「へえ、ホットサンドつくったんだ! チーズ溢れてておいしそう」


 すっごい笑顔で言われて俺も嬉しくなってくる。


「なー、おいしそうだろ。早く食べようぜ」


「うん、いただきます」


 向かい合って座り、俺たちは朝食を食べる。

 ホットサンド、チーズがとろとろですっげーおいしい。


「今夜のワッフルも楽しみなんだよねー」


 と、想真は声を弾ませる。


「とりあえずチョコレートソースとメイプルシロップ、ホイップを買ってあるけどそれで大丈夫か?」


 俺の問に、想真は目を輝かせて、うんうん、と頷く。


「充分、じゅうぶん! でもいろいろ試したいから、他にも買ってこようよ。きなこと黒蜜もおいしそうだよね。アイスクリーム載せたりさ」


「あー、確かに」


 ワッフルっていろいろアレンジできるもんな。


「あとでメッセージ送っておくから買ってきておいてもらえるとうれしいな」


 その想真の提案に俺は頷き答えた。


「今日はバイト、休みでしょ、俐月」


「あぁ、うん。毎週月曜日と、第一、と第三火曜日が定休日だから」


 だから俺、今日明日は休みだ。

 今週も水、木、土に仕事ってなっている。


「もうひとりバイトがいるんだけど、大学生なんだけどぐいぐい来る感じで驚いたよ」


「へえ、そうなんだ。大学生かぁ。ってことは二十歳前後?」


「うん。いきなり連絡先きかれたから驚いたよ」


 そう俺が笑いながら言うと、想真の手が一瞬止まったような気がした。

 でもすぐに彼は笑顔になって俺を見つめ、


「あはは、そんなことあったんだ」


 と言い、ホットサンドをかじった。


「そうそう。まあ教えなかったけど。さすがに会って一日じゃあちょっとって思って」


「あぁ、そうなんだ。確かにそうだよね。ねえ、俐月。他にバイトって何人いるの?」


「え? えーと……ひとりなのかな。正直わかんない。ロッカーはいくつかあったけど。夜はバーをやってるから、その時間に入ってるやついるかもしんないし」


 正確なところは聞いてないんだよな。

 夜だけのバイトがいるかも知らないし。

 俺の説明を聞いた想真は、


「そうなんだ」


 と言い、ホットサンドを置いてカフェオレが入ったマグカップを手にした。

 朝食を食べ終わった頃、アルトさんが迎えに来る。


「ほら、想真。頼まれていたやつ」


 と言い、アルトさんは想真に紙袋を差し出す。


「あぁ、ありがとう、アルトさん」


 そして想真は紙袋の中から封筒を取り出し、俺の方を向いてそれを差し出してくる。


「はい、今月の食費。足りなかったら遠慮なく言ってね」


 と、笑顔でつげた。


「あ、うん、ありがとう。でも足りないとかねえから」


 きっと、その封筒の中には十万が入っているんだろう。

 先月、多すぎるから減らしてもいいって言っても減らさなかったもんな。


「でも服とかいろいろ買いたいものあったら足りなくならない?」


「服はこの間お前と買ったし、それ以外は自分の買ってるよ」


 すると想真は驚いた顔になる。でもすぐに笑顔になって、


「自由に使っていいのに。でも、俐月っぽい」


 と言い、俺の頬に手を触れる。

 そして顔を近づけると、


「だから俺、俐月といっしょだと安心できるんだよね」


 と、呟きすぐに離れていく。

 そして笑顔で手を振り、


「行ってくるね」


 と告げてくるり、と背を向けた。

 ほんのささいな行動なのに、俺、ちょっとドキドキしてるんだけど?

 思わず想真が触れた頬に触れ、俺はしばらく呆然と立ち尽くしてしまった。 

 そのあと、想真からワッフルといっしょに食べたいものリストが送られてきた。

 さっき言っていた、黒蜜やきなこ、バニラのアイスクリーム、スプレーと書いてある。

 スプレーって細かくって色がついてるチョコレートみたいなやつのことだよな。


『すぐじゃなくって、今度かってきておいてくれると嬉しいな』


『わかった、今度買ってくる』


 そう返信し、俺は午前の家事へと取り掛かった。

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