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一日目:生贄投票⑥

「あ゛? 何でだよ?」

 低いドスの利いた声でけん制しながら、取り乱す様子を見せずに端的に理由を聞いたりんちゃんは、ちゃんと冷静だ。


「あのね、俺は誰かさんと違って賢いから、感情的に動かないの」

 屑山は筆川の手を振り払い、さらに挑発した。




「今この場で一番危険なのは、き・み。イキリ太郎くん」

「あ゛ンだテメェ! 女衒未満のうんこカスが!! ぶん殴っぞ!!」


 それ、殴ったあとに言っても……。




 りんちゃんの顔面パンチを喰らった自称ホストの屑山は、地面に膝をついて項垂れる。ぽたぽたと、鮮やかな鮮血が、殺風景なコンクリート打ちっぱなしの床に彩りを添えた。




「弱ぇなァ? 自称ナンバーワンホストくんよォ」

「ちょっと待って待って! ストップスト~~ップ!」

「暴力はいけないと思います!」


 りんちゃんと屑山の間に、宇佐霧と二階堂が仲裁に割って入った。二人ともまだ学生だぞ。いい大人が何やってんだよ……。







 しかし、なんか妙だな。


「もしかして、暴力ってペナルティないんか?」

 筆川が疑問を口にしたとき



『そうだよ』

 一瞬ブラウン管テレビの画面がついて、それだけ言うとすぐに砂嵐に戻った。




「そォかよ。んじゃ、もう一発殴っとくか」

 腕まくりするりんちゃんを、さすがに僕が体を張って止めた。真正面から抱きつくという形で。





 う、うわぁ……! 久しぶりのりんちゃんの体臭だぁ……ていうか、香水変えた? 胸板も、四年前よりちょっと分厚くなってるぅ……!!


「ひでぶ!!」

 殴られた。


「触んじゃねェ」


 ひどい……一応、元カレなのに。





 じんじんと痛む頬をさすりながら、ある疑惑が頭の中に浮かび上がった。



 もしかして、りんちゃん彼氏できた……?







 って、こんなこと考えてる場合じゃないだろ! 今はデスゲームの最中! 負ければケツ穴を凌辱されて死ッ!!


 ええい! 考えるな考えるな集中しろ!! 浸透滅却煩悩退散煩悩退散!!




 それに、もしりんちゃんに新しく彼氏が出来ていたとしても、それをとがめる権利なんて、僕にはどこにもないのだから……。

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