生涯で一番の褒め言葉だ、と思ったことがある。今はもう別れた、五人目の彼ピッピでもある男の子がかつて言ってくれた言葉だ☆
『女の子と一緒に居て、こんなに楽しかったことはない』
というのがそれ。ウチはこの先何十年生きるとしても、これ以上の褒め言葉は無いと思う。
ウチの生涯で一番の褒め言葉だと誇れるように、今日も明るく生きるんだ☆
「別次元の空間からこんちは~☆ウチの名前は小坂六花☆」
「僕ブロッコリー。ブロッコリーの妖精さ」
「ブロッコリーが喋ってる……☆後でシチューにして食べよっと」
黒髪に青いメッシュをしてるポニーテール。年は17。高二だよ☆
今回は冬休みに行われている大学のオープンキャンパスにやってきたんだよ☆
「デカパイ先生は今日もデカパイでござるなあ~。羨ましいでござる」
侍語を話すこの人は鈴木さん。今日の案内係をお兄ちゃんから任されている人だ。
そう、今回ウチが来た大学はお兄ちゃんが通う所なのだ☆
◇
「将来のサークル加入者ようこそ! ここが僕らの創作サークルっす! あっ、どうぞどうぞ先生はこちらの席へ」
カップルクラッシャー鈴木さんと寝取り魔田中さんはお兄ちゃんが所属している創作サークルへ案内してくれた。
「ピュラピョンジャンケン番犬ポン!」
「負けたでござる~!
「よし、勝ったぞ!」
「一樹殿にはしたない命令されるでござる~!」
「鈴木、焼きそばパン買ってこい」
鈴木さんは『なんででござるー!』と叫びながら部室を出て行った。
ていうか話変わるけど田中さん。なんか顔が怪しいなぁ。悪い顔をしてるって言うか、なんか企んでいるような? よし、盗聴してみよう☆!
(はあ、偉大な『デカパイ撲滅委員会会長先生』とはいえ、陽キャのオーラバチクソあるっす。よし、この子に彼氏が居たら寝取ろう。だって陽キャだったらすぐに彼氏作ってくるはずっすから。彼氏作ってきた瞬間から寝取る。先生が彼氏を作りまた僕が寝取る。永久機関の完成っすね! ノーベル賞取れるかもっす!)
うわぁ、この田中って人、危険人物だぁ。ウチが憧れている『NTR大好き星人先生』がその人なんだけど。これからは必要以上に関わらんとこ☆
そう、今のようにウチは物心ついた頃から人の心が読める能力を持っている。
きっかけは幼い頃、恋愛導き師とかいう胡散臭いおっさんにとある暗示をかけられたこと。
あれ以来便利な盗聴能力を行使出来るようになったわけ。ただ、能力を使うにはすんごく集中しなくちゃいけないんだ。だから多用してるとすんごく疲れちゃう。
この能力が常時発動じゃなくてよかった。嫌な思考をしてる人がいたら集中するのをやめればいいわけだし。
「てかあれ、愛斗さんは居ないの?」
「愛斗? 二俣のことか? 競馬に行ってる。多分、全財産使い果たすんじゃないか?」
「そっか、残念」
「残念?」
お兄ちゃんは一瞬怪訝な表情を見せた。すぐにクールな表情に戻ったけど。
ついでに今のお兄ちゃんは何を考えてるのかな☆? 盗聴開始~☆
(残念? まあ、いっか。それより、喋るバターVSアラポロ水軍が戦ったらどっちが勝つのか考察再開しよう。ハンデとして喋るバターに1tの錘を乗せてから戦う場合)
そんな事を考えていながら、お兄ちゃんは蕎麦に納豆をかけて昼食を取っている。おかしいな、心境と行動が何一つ一致してない。
(それにしてもさっきから、いゆかんちんちお。いゆかんちんちお)
ダメだ☆お兄ちゃん思考からアホすぎて盗聴能力が意味なしてない☆
能力の弱点、盗聴相手の脳内がアホだったら能力が意味をなさなくなる。現に、お兄ちゃんの考えてる事は能力を使ったとしてもよく分からない☆
(いゆかんちんちお。いゆかんちんちお)
さっきからお兄ちゃん、何考えてんだろ? なにその単語、分からなすぎてマジアッチョンブリケなんだけど☆?
◇小坂六花は小坂一樹の考えている事がわからない事が多い。なぜなら、小坂一樹の思考回路が常軌を逸しているから。これでも彼はこの作品の主人公である。